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だいふく
金もない。行く宛もない。スマホの電池も10%を切っていた。
──このままどこかで寝て、目が覚めなきゃそれでもいい
そんな思いさえよぎる
深夜0時過ぎ
俺はいつもの路地裏に煙草の煙を吐きながら、スマホで連絡待ちをしていた
零斗
ふと、視界の端に揺れる影
ガクガクの足取り。制服姿。
顔色も悪い。目元は真っ赤に腫れてる。
零斗
興味が湧いて、つい声をかけた。
男の子――麗央って名前だったか
ふらつく彼は俺の顔を見るなり、ピタリと動きを止めた
その顔に見覚えがある
零斗
零斗
綾野→麗央の母親
途端に麗央の顔が引きつる
震える声で、ようやく口を開く
麗央
俺は肩をすくめて笑う
零斗
零斗
静かに一歩、距離を詰める
零斗
零斗
逃げようとしたその瞬間、俺は壁際に手をついて進路を塞いだ
零斗
零斗
麗央の目が揺れる。俺は低く囁いた。
零斗
俺の声に、麗央の顔が強ばった。唇が震え、必死に言葉を探している。
追い打ちをかけるように、背後から男の声がした
龍牙
朔矢
チャラくて軽い声。けど足音は重い。
振り返れば、朔矢と龍牙が並んで立っていた
後ろには蓮もいる
零斗
蓮
蓮
蓮は鋭い目を細めて、麗央を見下ろした
麗央は固まったまま、何も言えずにいる
蓮
蓮
朔矢がヘラッと笑いながら、麗央の肩をぽんと叩く
朔矢
朔矢
朔矢
朔矢の軽薄な笑みとは対照的に、蓮は一歩前に出て、ぐっと麗央を睨みつける
蓮
沈黙。路地の空気が張り詰める。
麗央の顔が蒼白になりながらも、ギリギリで目をそらさずにいた
……チッ、なかなかの根性してんじゃねぇか
俺は無言でポケットの煙草を取り出し、火を点けた
紫煙越しに見たあいつの表情は、壊れる寸前のガラスみてぇだった
さあ、坊主。どう出る――?
麗央
麗央
ついに麗央が口を開いた
震える声とは裏腹に、その瞳は強い拒絶の色で俺らを睨んでいた
麗央
麗央
はぁ、と俺は煙を吐いて笑った
零斗
零斗
零斗
バッと反転した麗央が走り出す
全力ダッシュ。逃げ足は速い
けど、夜の街で俺らから逃げ切れると思ってんのか?
蓮
蓮の低い一言
俺と朔矢はほぼ同時に動いた
角を曲がり、逃げた先の裏路地――
がっ……!
朔矢
背後から朔矢が肩をつかんで壁に押しつける
麗央の身体がビクッと跳ねた
麗央
麗央
暴れる腕を、俺が横から掴んで固定した
零斗
耳元で低く言ってやると、麗央の顔色がさらに青くなる
爪立てるように俺の腕を引っ掻いたが、到底振りほどけない
これが現実だ。お前に“逃げる”選択肢なんて、最初からなかった
零斗
振り返ると、蓮が無表情でゆっくりと歩いてくる
蓮
その言葉とともに、麗央の視線に本物の恐怖が宿る
零斗
麗央の反抗的な視線が気に入らなかった俺は、一歩前に出て──
ドンッ
腹に蹴りを一発、深く入れた
スニーカーのつま先がちょうどみぞおちをとらえ、麗央の身体がくの字に折れる
麗央
その場に崩れ落ち、しゃがみこんだまま吐きそうな顔をしている
それでも、涙は見せなかった。なかなか骨のあるやつだ。
零斗
しゃがみこみ、顎をつかんで顔を上げさせる
近くで見ると、まだあどけなさが残る
けど、こいつは“逃げた”。だからその分、痛みで学ばせるしかない。
零斗
麗央
弱々しく言い放った言葉に、俺はわざと鼻で笑って見せた
零斗
その瞬間、左右から朔矢と龍牙が近づいて、麗央の両腕をつかんだ
朔矢
朔矢が笑いながら言うと、麗央はびくっと肩を跳ねさせたが、もう声は出なかった。完全に気力を奪われてる
龍牙
蓮
蓮が歩き出すと、俺たちは麗央を引きずるようにしてそのあとを追った
夜の街灯に照らされて、麗央の影が長く伸びていた
これから始まるのは、「借金回収」なんかじゃない
――こいつの人生そのものが、変わる第一歩だ。
だいふく
だいふく