雨歌の中学時代のバレー部の監督
近所のおばさん
バレーは私の存在意義そのものだった。
バレーをしている時は、何かの物語の主人公になった気分だった。
そんな時だった。
中1のとある夏の日。
その日は大事な試合があって、その帰り道だった。
青信号の横断歩道を渡っていただけだった。
キキーッ!
気付いたら、白いトラックが横に居て。
ドンッ!!
運転手は起きること無くアクセルを踏み続け私に衝突。
そのまま私は宙を舞って、コンクリートに強く打ち付けられた。
宙を舞っていた時に見えた夕焼けが今でも脳裏に焼き付いている。
それから直ぐに誰かが救急車を呼んでくれて、病院に運ばれた。
先生
”左膝前十字靭帯断裂”
先生
雨歌
雨歌の母
先生
雨歌
雨歌の母
先生
雨歌の母
先生
雨歌の母
先生
雨歌の母
先生
雨歌の母
雨歌
白い包帯がぐるぐる巻かれた私の”武器”と、傍に置かれた松葉杖。
足を動かそうとすれば痛みで涙が出そうだった。
近所のおばさん
煩い
近所のおばさん
煩い
近所のおばさん
煩い!!
黙れ、黙れ………
黙ってよ…!!
私は可哀想なんかじゃない。
私はまだ、バレーが出来る。
1日…1分1秒よりも早くコートに立つ為に、リハビリは毎日欠かさなかった。
雨歌
歩けるようにはなったが、前見たく高く飛べるようにはならなかった。
その度に私の心はへし折られ続けた。
雨歌
何で私がこんな目に遭わないといけないの?
チームメイトがお見舞いに来てくれた時も。
チームメイト
悔しくて毎日泣いて。
チームメイトの励ましも嫌味に聞こえて。
雨歌の中学時代のバレー部の監督
雨歌
1年間の地獄のリハビリを耐え続けて。
やっとの思いで立ったコートでも上手く飛ぶことが出来なかった。
飛べなくなったあの日。
私の武器を奪われた”あの日”。
足が失くなった時の感覚、あの恐怖が心に棲みついて。
私の武器に鎖がかかったかのように。
足が動かなかったから。
チームメイト
チームメイト
何か、もう
いいや。
”生きててくれてよかった”
そう言った豹馬の瞳は潤んでいるように見えて、今度は私が言葉を失った。
千切 豹馬
良かった、と心の底から嬉しそうに笑う豹馬。
雨歌
千切 豹馬
豹馬は宝物を扱うみたいに私の頭を優しく撫でた。
千切 豹馬
千切 豹馬
千切 豹馬
”正解にしてやれよ”
雨歌
豹馬のくれた言葉が、砂漠に唯一の水のオアシスのように心を潤わせてくれる。
未だにそれを考えて涙を流す夜もある。
あの事故さえなければ今もまだバレーをしていたはずだ。
だけど、起こってしまったものは仕方がない。
いくら悔やんでも過去は変わらない。
失くした夢に囚われて過去に縛られるより、今目の前にある物を大切にしないといけない。
自分を変えられるのは
”今を生きる”自分だけだ。
千切 豹馬
雨歌
きっとこれからも、夢があった未来の姿を想像する夜があるかもしれない。
それでも、私だけは私を悲観しては駄目だと思う。
過去ばかりじゃなくて、今を見るんだ。
顔を上げて目を潤ませた私に、豹馬は正面に膝をついて両腕を広げる。
千切 豹馬
雨歌
今日の2回目の涙は、彼の胸の中で静かに流した。
しあ
しあ
しあ
しあ
しあ
しあ
しあ
しあ
おつしあ~.ᐟ.ᐟ
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