月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
注意!! ・地雷さんは今すぐUターン! ・あにき愛されでまろにきが付き合ってます ・あにきが少し病んでます ・nmmn ・ご本人様方とは何も関係のないフィクションです ・口調&キャラ崩壊あり ・通報❌
月見。
月見。
いつからだろうか、まるで泥の中を歩いているような。
伸び悩み。何かしら活動をしている者なら誰だって一度は経験があるだろう。
努力の量も、実践の数も不十分では無いのに、どうも結果に繋がらない。求めている結果に辿り着かない。
肩を並べて高め合っていた仲間が、ライバルが、そんな自分をどんどん追い越していく。
ひとりに、なっていく。
悠佑
カチカチと、マウスの音が静かな部屋の中に響く。
カタッとエンターキーを押し、小さく息を吐いて椅子の背もたれに背中を押し付けた。
歌ってみたの編集が終わった。いつ投稿しようか、プレミアにするかしないか、他にも撮り溜めはあるがどれから投稿するか、そんな考えが頭の中を巡る。
伸び悩み。まさに今、俺が直面していることだった。
YouTubeのチャンネル登録者。更には歌ってみたの視聴回数。高評価。
どれもこれも、自分が望む結果に至らない。
特に歌ってみたなんて、今回は良いと思った時に限って伸びなかったりするのだ。その時の落胆と言ったら、ぶっちゃけかなり辛い。
悠佑
腕を動かした時、机の上に置いてあった空になったレッドブルに腕が当たり、カランと床に落ちた。
悠佑
拾う動作すら億劫で、転がっているそれを横目で見て、すぐに目を逸らした。
最近、寝ていない。と言うか眠れない。
理由、と言えば。
圧倒的歌唱力ってどの辺が?
普通に他のメンバーの方が上手くねw
声嫌い
別に普通じゃん
どこがいいのか分からない
見たくなんてないはずなのに。見たら傷付くのは分かっているのに。スマホをスクロールする手が止まらない。
悠佑
いれいすで一番音楽活動の経験あるとか言ってる割にはそんなじゃねww
他のメンバーの方が人気じゃん
悠佑って人メンバー内でチャンネル登録者一番少ないの草
グッと、強く唇を噛む。
心の奥底で気にしていた。必死に目を逸らしていた事実が、目の前に広がっている。
いれいすの中で、個人チャンネルのチャンネル登録者数が一番少ないのは俺だ。
そんなの気にしないのが一番だ。人の好みはそれぞれだし、響く人響かない人、沢山いるだろう。
それでも、一度数を気にしてしまえば、もう気にしないなんて無理で。
他の5人との違いを、差を痛感しては、苦しくなっていく。
俺のことを好きだと言ってくれる人は多い。いつも配信に来てくれる子、DMをくれる子、リプやコメントを毎回してくれる子。沢山のファンがいてくれる。
俗に言うアンチコメントに比べ、ファンの子達のコメントの方が遥かに多い。・・・それなのに、どうしても目に入ってしまう。
その一つ一つが、俺の胸を刺す。
最近、怖くて仕方がなくなった。配信を取って、歌ってみたを投稿して、また何か書かれたら。結果が出なかったら。
また、比べられたら。
歌ってみたを撮る気にもなれなくて、最近は撮り溜めを使ってばかり。配信も定期の日しかしなくなった。Twitterへの呟きも少ない。
5人との差を気にして、それを恐れてしまう自分が嫌だ。
今の自分はもう、自信を持ってあの5人の隣に立てない。
まるで、泥の中歩いているようだ。進んでいる筈なのに進めない。足を取られて転んでしまった俺の横を、5人は通り過ぎてどんどん進んで行く。
俺は、今までどうやって進んでいたっけ。
後ろも前も見えない、暗闇の中に放り出されてしまった。
-hotoke-
初兎
りうら
-hotoke-
初兎
ないこ
りうら
初兎
ないこ
If
ないこ
If
ないこ
初兎
-hotoke-
ないこ
りうら
ないこ
連絡をしてみようかとスマホ取ると、何やら通知が届いていた。あにきからだ。
すまん、今日俺パスで。5人で話進めてくれ。
ないこ
If
ないこ
初兎
ないこ
りうら
ないこ
初兎
みんなの表情が段々と曇っていく。あにきはいつも活動に全力だし、多少の無茶振りにも呆れながら乗ってくれる頼り甲斐のある最年長だ。
そんな彼のドタキャン。更には理由もない報告に、俺も自分の表情が険しくなっているのを感じる。
-hotoke-
りうら
初兎
-hotoke-
ほとけっちの問いかけに、全員が黙り込む。俺もすぐに言葉が出てこなかった。
ないこ
りうら
初兎
ないこ
最後の砦と言わんばかりに、全員の視線がまろに注がれる。まろは険しい顔をしていた。
If
ないこ
If
りうら
If
初兎
あにきのことを良く知る2人が口を揃えてそう言うということは、これは気のせいなんかじゃなくてきっと紛れも無い事実だ。
りうら
-hotoke-
If
ないこ
電話をかけ、耳に当てる。全員が黙り込んだ静かな家の中に、プルルル、と無機質な音が小さく響く。
あにきが出るのを待っている時間が、まるで永遠のように感じられた。
ガチャッ
ないこ
ないこ
ないこ
悠佑
電話の向こうから聞こえてくるのは無音だった。返事が無いことに戸惑う俺を、4人がどうしたと言いたげに見つめてくる。
ないこ
その時、電話の向こうから微かに息が漏れる音が聞こえた。ただその呼吸が、なんだか焦りを含んでいるような。
悠佑
揺れる呼吸が微かに耳に届く。只事では無いと思った。今、電話の向こうで何かが起こっている。
ないこ
依然返事は無い。
If
ゴンッ
ないこ
突然の衝撃音に、思わず耳からスマホを離した。
ないこ
慌てて耳にスマホを当て直し、俺は言葉を失った。いつの間にか電話が切れていた。
If
りうら
初兎
-hotoke-
ないこ
ずっと無言の向こう側。明らかにいつもとは違う息の音。床に落ちたらしきスマホの音。
通話が終わった画面を見つめ、様々な思考が頭の中を駆け巡る。
ないこ
りうら
ないこ
初兎
4人も慌てて俺の後を追って走り出す。まともな説明もしないままで申し訳ないなと思いつつも、早まる鼓動にじっとしてはいられなかった。
不穏を知らせるかのような曇り空を睨み、俺はあにきの家へと走った。
大して凄くないじゃん
歌下手じゃねww
他のメンバーの方が絶対上手い
言わないで。
どっちかと言うといれいすの足引っ張ってね?w
絶対一番人気ないじゃん
迷惑
聞きたくない。
りうら
-hotoke-
初兎
ないこ
違う。あいつらはそんなこと言わない。違う、違う違う違う。
いらない
嫌い
邪魔
なんでいるの?
違うって、言ってくれ。お願いだから。
悠佑
If
嫌だ、待って、置いていかないで。
足は動かない。泥の中に沈んだ脚じゃ、その背中を追えない。
嫌だ。ひとりにしないで、待って、
待って!!!
悠佑
ガバッと体を起こすと、荒くなった息が部屋の中に響く。
悠佑
作業中に寝てしまったようで、椅子に座ったままだった。
背中は汗がびっしょりで、肌に張り付くシャツが気持ち悪かった。
さっきまでの夢の内容を思い出しては、呼吸が震える。
悠佑
時計を見て、ふと思い出す。今日はいれいすの話し合いがあったんだ。
机の上のスマホを手に取る。6人のグループで、数十分前に5人が何か話していたらしく、通知が溜まっていた。
悠佑
こんなことを思うのは初めてだった。けれど今、行きたいという気持ちは一ミリも湧いて来なかった。
しかもきっと、今自分は酷い顔をしている。こんな顔は見せられない。
俺は行かないことを選び、連絡を入れるべくないことのトーク画面を開いた。
文字を打ち始め、自分の手がカタカタと震えていることに気が付いた。
悠佑
何がいれいす最年長。みんなの頼れるあにき。
こんなにも弱くて、情けなくて、みっともない俺が?
は、と小さく嘲笑の息を吐き出した。もう何もかも、嫌だな。
連絡を入れ、スマホを机の上に投げ出した。何をする気も起きずまた背もたれに背中を預けたが、汗で濡れたシャツが気持ち悪くてすぐに背中を離した。
渋々腰を上げ、着替えることにした。体が嫌に重たかったが、いつまでもこの服を着ていたくない。また、あんな夢を見てしまいそうだった。
普段の数倍遅いスピードで着替えを進め、漸くそれが終わった時、部屋に響き渡った着信音にびくりと体が揺れた。
ないこからだった。急にパスなんて言ったから怒ったんだろうか。いや、あいつらのことだから、きっと心配してくれているんだ。
そんな優しいあいつらに心配をかけていることが申し訳なくて、また自分が嫌になる。
流石に電話にまで出ないのはと思い、俺は電話を取りスマホを耳に当てた。
ないこ
ないこ
やっぱり。どこまでも優しい奴らだ。
・・・俺のことなんて、放っておけばいいのに。
ないこ
また暗い考えに走っていた俺は、その声にハッと我に返る。
急なドタキャンの上に電話に出ても無言なんて流石に最低だと、口を開く。話すことなんて謝罪の言葉以外思いつかなかった。
悠佑
ごめん。その言葉が音にならなかったことに気付くまで、少し時間がかかった。
悠佑
口を動かす。言葉は、聞こえない。
まさか。自分の体に何が起こっているのか、頭は理解している。けれど心は認めたくなくて、はくはくと口だけが動く。漏れるのは声ではなく不安定な息だけだった。
声が、出ない。
その事実を嫌にも実感した時、スマホがゴトッと音を立てて手から床に滑り落ちた。
悠佑
何一つ、音を持った正確な言葉にならない。
着替えたばかりだと言うのに、嫌な汗が肌を伝った。
経験したことの無い、信じたくもない事実を目の当たりにして、焦る、焦る、焦る。
喉に手を当て、その場に崩れ落ちる様に膝を付いた。
声が出ない?
声が出なければ、話せない。名前を呼べない。
歌を、歌えない。
ヒュッと息が喉の奥に詰まる。きっと今、青ざめた酷い顔をしてるだろう。
歌を歌えない。それが何を意味するのかをすぐに理解してしまった俺は、震える体で脚に力を入れてなんとか立ち上がった。
机の上に使わないメモ帳を引っ張り出し、言葉を書き殴った。震える手じゃ、綺麗に字を書くなんて到底無理だった。
目から溢れ落ちた涙が染みを作り、字が滲む。
そうしてその場から少しでも早く逃げ出す様に、俺は部屋を飛び出した。
もう、ここにはいられない。
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