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牛タンつくね
牛タンつくね
光
光
バッ
光
光
「……うん、上手だね光、 にぃにも好きだよ。」
光
家に来た日から数えて1年。 1年経って、〝妹〟は1歳になった。
煩い夜泣きも比較的少なくなり、 心なしか母も少し元気になったような気がした。
あれから母は度々夜中に出掛けるようになり、 朝方にどうもぐったりした様子で帰ってくるようになっていた。
『ごめんね』 何時からか、 それが母の口癖になっていた。 綺麗な顔は目に見えてやつれ、生気を失った廃人のようになっていった。
──光を家に置きに来て以来、 アイツが帰ってくることは一切無かった。
それが原因かは定かでは無いが、 身体は善くなっても、母の精神状態は悪くなる一方だった。
うわ言のように喚く母を見ていられず、俺は放置されたままの、埃をかぶった就学通知書を眺めているほかなかった。
正直もうどうでもいいと思った。
気が狂った母親でも、 糞みたいな父親でも、 血の繋がらない妹も、
どうにでもなれと思えた。 「人生なんかクソ喰らえだ」と、 簡単に受け入れられたはずだ。
ただ1つ、自分が生きてさえいればいい。 結局人間ってのはそういう利己的で自己中で醜悪な生き物だろ。
性悪説を唱えるつもりはない。 言い訳になるとも思っていない。 だって、たったそれだけで俺も、 いとも簡単で自然的に〝普通の幸福〟を諦められたんだから。
た、んだけどなあ。
「……………母ちゃん…… …………何してるの?」
母があんな清々しい、柔らかい笑顔を見せたのは本当に久しぶりの事だったんだよ。 妹を世話する時の、取り憑かれたような慈母の顔とは違ってだ。
無意識に俺は、すぐさま母の腕の中へ飛びこんでいたらしい。
ギュッ
暖かい。 暖かかった。 頭を撫でるその手は、 何よりも優しかった。
母の顔を見ればもう正常でないことは判りきっていた。 だがその刹那だけは、あれほど渇望した母の愛を一身に感じられたんだ。
ギギィイィ゙ッッッ
光
スラッ──────
「!!!!」
薫
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それからの記憶はあまりなくって。
我に返ったときには、 母ちゃんは血だらけで、
俺の手も血だらけで、 地面も血だらけで、 包丁も血だらけだった。
母ちゃんは息しないで、 澱んだ瞳でじっと一点を見つめてた。 時々思い出したかのように、打ち上げられた魚みたいに身体をピクピク跳ねらせて。
確か光は、同時に救世主と化け物を見るような目で、俺を見ていたんだと思う。
薫
光
薫
薫
光
薫
薫
光
シャワーを浴びて、 綺麗な服に着替えて、 大事なものをリュックに詰めて、 お家のカギを、閉めた。 そして、真夜中に一生懸命走った。
行く宛てがある訳がなかった。 とにかく走って歩いて休んでは歩いた。 誰かに見つけてもらうために。 …でも、見つからないように。
結局、足の限界はすぐに来たので、 光と付近の公衆便所内で1晩を過ごすことにした。
薫
光
薫
光
薫
薫
一番星みつけた。 あれあの森の 杉の木の上に。 二番星みつけた。 あれあのどての 柳の木のうえに。 三番星みつけた。 あれあの山の 松の木の上に。
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あの時、なぜ咄嗟に光を守ろうと思ったかは分からない。
血も繋がっていないのに。 ただでさえ半分しか残っていなかった親の愛を、さらに減らした元凶なんだというのに。
どうして身体は動いたのだろう。 どうしてこいつのためなら、母ちゃんを殺しても構わないと思えたのだろう。
……そして、どうして取り返しのつかない〝罪〟を犯してしまったのだろう。
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薫
光
"妹"の無邪気な目を見て、 俺は何かを悟ったらしい。
ああ。やっぱりか。
ただ1つ、自分が生きてさえいればいい。 結局〝俺〟ってのもそういう利己的で自己中で醜悪な生き物だった。
薫
光
薫
光
薫
薫
光
これで良かったんだと、思うようにしている。 でないと、あの時後ろを振り返らなかった自分をまた恨んでしまうから。
薫
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薫
薫
薫
ガシッ
薫
薫
薫
牛タンつくね
牛タンつくね
牛タンつくね