それにしても、 二人は何を見たのだろうか?
香織
私も早く帰らなきゃ・・・
タッタッタッ
香織
え?
タッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッ
さっき二人が逃げてきた方向から、 足音が聞こえる。
タッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッ
香織
っ!!!!!!
思わずしゃがみ込んだ。 耳を塞いで、膝に顔を埋めた。
ジャリ...ジャリ...
耳を塞いでいても聞こえる。 目を閉じていても見える。
私の屈んでいる場所の すぐそばに、誰かが立っている。
ポキッ
骨の音がすぐ耳元で鳴った。
香織
だ、誰か....たっ...助けて...
その時、
香織
!!!
自分の周りが明かりで照らされた事に気が付き、恐る恐る目を開ける。
永
大丈夫か?
香織
っ、、、あ、、
永
立てるか?
手を差し出されて、一瞬躊躇する。
でもすぐに、この人は人間だ と 分かった。
何となく、そう感じたのだ。
震えて立ち上がれない私に気付いて、 彼は抱き上げるようにして 私の体を起こしてくれた。
香織
あ、す、すいません・・・
香織
ありがとうございます・・・
永
怪我は?
香織
大丈夫です...
永
他の二人は?
香織
えっ?
永
若い3人の女がここで騒いでると通報があった。丁度巡回中だったんでな。
香織
あ、えっと、警察の人...ですか?
永
ああ。で、他2人は?
香織
あ...帰りました、、
彼は、私のセリフに眉を顰めた。
香織
ほんとです!ほんとに、帰りました。
永
・・・一人で残ったのか?
香織
はい、随分怖がってたみたいで、置いていかれました...
私が「仲間はずれ」にされたと受け取ったようで、なんとも言えない表情のお巡りさん。
気を遣わせまいと笑顔で振る舞う。
香織
平気です、よくあることなので。
永
・・・そう。
永
ああ、さっき屈んでいたのは?何かあったのか?
香織
あ、何か怖い音がして...
永
音?落下物でも?
香織
あ、いや、足音みたいなやつなんですけど
永
足音?
香織
はい、こっちの、奥の方から....
さっきの音を思い出す。
背中がゾワッとして、すぐに視線を戻した。
永
他に人が居る可能性は?
香織
え?・・・この、中にですか?
永
音がしたんだろ?
香織
し、しましたけど・・・
永
ならまだ人が居る可能性がある。
お巡りさんは、持っていた懐中電灯で「そっち」を照らした。
香織
もしかして...
香織
行くんですか?..中に
永
ここは立ち入り禁止だ。追い出す。
香織
あっ、ちょ、ちょっと待って!
こんな恐ろしい所に行かせまい! と、腕を掴んだ。