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史上最大最悪の絶望的事件迄、もう間も無い。
窓にこびり付いた紅が取れなかった。 最近はずっと。
空すら本当の色を忘れかけているという。
数週間前、何があったのかは僕には分かりゃしない。 ただ、”絶望” この2文字で表すのに相応しい状況だったことは確かだ。 あれから一歩も外に出ていない。
まぁ、当然のように情報は入ってこない訳だ。
別に知らなくても支障をきたす訳でもない。ここで安全に暮らしていればいいものだから。
そう言いつつも僕の手はそう設定された機械のように動き、そこにあったTVの画面を点ける。
点くのにかなり時間がかかるようで、僕はその間に渋々朝食の用意を始めた。
やっと点いた、と思うのも束の間。
そこに映し出されたものは、綺麗な金色の髪をした1人の成人男性。
ニュースキャスター
ニュースキャスター
ニュースキャスター
僕はその文字の羅列と映像を見た瞬間全てを理解した。
理解、したくなかった。
桂
驚愕で茶碗が手から滑り落ちていくのが分かる。
不自然に割れたソレは鼓膜を貫通して脳を直接破壊しに来るような、そんな”絶望”の音が僕の耳を貫く。
蒼色旗の反乱者。 僕と違ったベクトルの爆弾魔であり、理想に燃える一人の人だったと言う。
でも、映し出されたヒトは《蒼王》じゃない。 死者が蘇るはずなんてないから。
彼らの時間は既に止まっている、とどこかで国木田さんが言ってたっけ。
透き通り翠を帯びたその瞳は濁り切り深淵を見つめていた。
あの人の理想は誰にも折れない。 それは確かにそうだった。
桂
気付かぬうちに出ていたその言葉は僕の喉を傷付け、通り抜けていく。
違う。
僕は現実を受け入れられないまま。
違う、ただその2文字が僕の脳内を駆け巡っている。
あの人の持つ『理想』は、もう僕の愛した『理想』ではなくなっていた。
僕の、最愛のヒト。
それはあの人の掲げる ”理想”そのものだったのだろうか?
国木田さんがいない、ただひとつの部屋で。
僕はただこれが現実だと言うことに”絶望”するしかなかった。
END
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