この話は暴力的表現を含みます。 苦手な方は閲覧をおやめください。
あれは、そう。
太宰がまだ八歳だったあの日。
両親は仕事の都合で太宰に構ってやれなくなった。
だが、その代わり休みの日が被れば
めいっぱい太宰に構っていた。
幼少期 太宰治
太宰の父
太宰の父
太宰の母
太宰の母
太宰の母
太宰の母
幼少期 太宰治
太宰の父
太宰の父
太宰の母
幸せな家庭だった。
どこを切り取っても幸せに溢れた家族だった。
幼い頃の太宰もこの幸せが永遠に続くものだと
信じては疑わなかったはずなのだ。
だが、それは一瞬にして壊された。
せっかくの休日、家でのんびりしていた太宰家に
とある強盗が忍び込んだのだ。
家の人に見つかった強盗は太宰を人質にし、
金目のものはすべて出せ。さもなくばこの子供を殺す。と脅した。
両親は懸命に金目のものを差し出し、
息子を解放してくれと懇願した。
だが、強盗は顔を見られたと判断し、太宰の左の小指を折った。
幼少期 太宰治
燃え上がるように痛かった。
その熱さがだんだんと痛みに変わり、泣き叫ぶほか耐えようがなかった。
太宰の母
太宰の母
強盗
めちゃくちゃな言い分だった。
だが、強盗は本気だった。
太宰を、殺そうと包丁を振り上げる。
太宰の母
母親は泣きながら手を押さえて屈む太宰を抱きしめる。
そのまま、母親は太宰の目の前で首を刺され、死んでしまった。
刺された箇所が悪く、即死、だった。
幼少期 太宰治
母は答えてはくれなかった。
温かかったら母親の頬が、生ぬるくなっていく。
太宰の父
父親のよく通る声が太宰の耳に通る。
父親は強盗の腕を掴み、身動きが取れないようにしていた。
だが、包丁が父親の太ももに刺さっており、
長くはもたなさそうだった。
太宰の父
太宰の父
太宰の父
父親の魂のこもった声で太宰は震えながらリビングの方へ走る。
リビングの窓から助けを呼ぼうと鍵を必死に開ける。
だが、震えた手は上手く鍵を開けさせてくれない。
上に上げるだけ、それなのに上手く当たらない。
強盗
そんな怒鳴り声が聞こえ、奥からぐりゅ、という鈍い音がかすかに聞こえる。
……父親が殺された音だった。
幼少期 太宰治
幼少期 太宰治
ふと、リビングの扉に手をかける音がした。
だから、太宰はキッチンへ向かい、母親が使っていた包丁を手に取った。
殺されたくなかった。
だから、必死に抵抗しようとした。
そして、リビングの扉をゆっくりと開いた。
強盗自身もかなり疲れたようだった。
包丁を持つ手が震える。
強盗
幼少期 太宰治
強盗がこちらに迫って、包丁を振り上げた時だった。
ドコッ
鈍い音が、響いた。
強盗がその場に倒れ落ちる。
頭から大量の血が流れ、太宰の足の指先にその血がふれる。
何が起こったのか、恐る恐る上を見上げると、
そこには野球バッドを持った血まみれの父親の姿があった。
幼少期 太宰治
太宰は震えた包丁を持った手で父親に抱きつく。
ぐにゅ、という不快な音と共に、ベト、と手に熱い何かに触れた。
……父親の、血だった。
ひゅっ、と喉が鳴る。
幼少期 太宰治
父親の腹部を刺してしまったことに、気がついた。
父親は苦しそうな目に涙をため、太宰の頭を撫でた。
太宰の父
太宰の父
ずるり、と父親が倒れ込む。
幼少期 太宰治
太宰の父
父親の息が細くなっていく。
死に近づいていることを、悟った。
幼少期 太宰治
幼少期 太宰治
幼少期 太宰治
父親は精一杯の笑顔を見せ、太宰の溢れる涙を拭う。
太宰の父
太宰の父
太宰の父
太宰の父
太宰の父
幼少期 太宰治
幼少期 太宰治
涙が滝のように流れ落ちる。
その涙が父親の頬を伝って、床にしみこんでいく。
太宰の父
太宰の父
太宰の父
太宰の父
太宰の父
そして、父親の顔からぬくもりがだんだんと抜けていった。
目の前に広がる惨劇は、どこかの演劇みたいで、
滑稽で笑えてくる。
どうせまたケロリと起き上がって、
びっくりした? だなんて言うのだろう。
幼少期 太宰治
幼少期 太宰治
頭をめぐるのは、家族の思い出。
目の映るのは、最愛な家族の死。
自分の手にあるのは、最愛の父親の血がついた包丁。
あまりにもむごたらしく、あまりにも非道すぎる有様に、
太宰は正気を保てなかった。
そして葬式が終わり、
太宰は親戚の家へと預けられた。
そのまま太宰は大きくなるのだが、
両親の死と、自分の犯した罪がグルグルと回って、
苦しくて仕方がなかった。
そして、ある日、太宰が十五の誕生日を迎えた時、
太宰は狂ったように言ったのだ。
太宰治 十五
太宰治 十五
太宰は自身を守るため、妄想の中へと入っていったのだ。
コメント
8件
太宰さんが太宰さんしててなんか泣けてきます