雨の日は、薬の回りが悪い
別に深い意味があるわけじゃない 梅雨は文字通り雨が多い
単純に気分が上がらなくて、それが体の調子と連動してるだけだ
「朝起きて雨が降っていたら、何となくテンションが下がる」
それと同じようなことだろう
それに加え、自由奔放な部下や同僚に振り回され、ストレスが溜まる
そんな時、俺は人通りの少ない公園へ行き、ベンチで煙草を吸う
雨は降っているが、どうでもいい
濡れたベンチに腰掛け、咥えた煙草に火をつける
春千夜
春千夜
正直帰りたくはなかったが、自身のボスのためを想い
雨降る空を見上げながら、煙を吐いた
春千夜
しかし次の瞬間、雨が透明な何かに遮られた
どうやらそれはビニール傘のようで、誰かが俺に傘をさしたらしい
春千夜
???
そこに居たのは、茶色のブレザーにスクールバッグを持った女子高校生。
そいつは俺を見ながら、何やら心配しているようだった
「ようだった」というのは、あくまでそういう雰囲気があったというだけ
そいつは目元がよく見えなかった 霧がかっているみたいで、前髪も被さっていて尚更だった
辛うじて口元は見えていた その口元が心配するように、口角が下がっていたのだ
春千夜
春千夜
???
そいつはずっと黙っている ただ俺を傘の中に入れ、雨に濡れないようにしてくれている
春千夜
話さないそいつに痺れを切らし、俺は分かりやすく舌打ちをする
あいつは去っていく俺を呼び止めもせず、追いかけることもない
春千夜
一つの疑問を抱えながら、俺は会社へ戻ろうと足を進めた
オフィスへ戻ると、そこはいつも通り騒がしい
大の大人しか居ないはずなのに、そこはまるで男子校の昼休み時間のようだった
蘭
竜胆
俺の最大のストレス源が、機嫌など見る気もなく話しかける
いつも通り無視して自分のデスクに向かうが、その態度が気に食わないのか、兄の方が絡んでくる
蘭
蘭
春千夜
春千夜
蘭
春千夜
そう言って俺は奴の拘束から逃れる いつものだる絡みも、今日ばかりは勘弁して欲しい
竜胆
春千夜
竜胆
子供のようにいじける弟の方 年齢にそぐわない見た目と態度も、正直慣れつつある
ココ
ココ
蘭
蘭
ココ
春千夜
蘭
蘭
図星をつかれて思わず黙り込んだ それに気がついたのか、兄の方が話を続ける
蘭
春千夜
春千夜
竜胆
春千夜
ココ
すると作業をしていたはずの九井が、おもむろにそう聞いてきた。 無視する理由もなく、俺は話し始める
春千夜
春千夜
春千夜
春千夜
蘭
すると様子も伺うことも無く、兄の方が間髪入れずにそう言った
「どういう意味だ」と言いたくなる気持ちを抑えつつ、俺は睨みつけた
竜胆
春千夜
春千夜
春千夜
ココ
蘭
春千夜
春千夜
竜胆
春千夜
蘭
春千夜
分かりやすく悪態をつく 結局いつものパターンで、自分でも分かっているのに、どうしてもムカついてしまう
次の日 俺は昨日と同じように、公園に足を運んだ
今日は珍しく晴天で、昨日よりも人の往来が激しかった
昨日座ったベンチに座り、あいつが来ないかしばらく待った
だが、どれだけ待ってもあいつは来ない
試しに煙草も吹かせてみた だが一本吸い終わっても、来ることは無かった
春千夜
「昨日のは単なる偶然」
そう思うと、自分の行動が馬鹿らしく思えた
昨日の俺は、偶然お人好しな女に傘をさされただけ
昨日のあいつも、偶然ずぶ濡れの男を見つけて傘をさしただけ
お互い、そんなもんだろう
春千夜
ベンチ横にある灰皿に煙草を捨て、立ち上がろうと身体を伸ばす
しかし次の瞬間、手に冷たいものが落ちた
春千夜
咄嗟に見上げると、いつの間にか空が暗くなっていた
それに気づいた途端、雨が強くなり身体が冷え始めた
春千夜
そう思い会社へ戻ろうと、ベンチから立ち上がろうとしたその時
雨が何かに遮られた
まさかと思い、顔を上げる
春千夜
???
そこには、あの女がいた
相変わらず目元は霧がかったままで、顔が見えなかった
春千夜
春千夜
???
春千夜
春千夜
春千夜
どうすればいいか分からず、心の中で頭を抱える
???
春千夜
春千夜
春千夜
???
春千夜
不思議だった
普通に喋っているはずなのに、全くと言っていいほど声が聞こえない
意図的に口パクしているようには見えなかった
春千夜
???
春千夜
春千夜
春千夜
春千夜
???
春千夜
春千夜
???
春千夜
居心地の悪さを感じ、俺は差し出された傘から出ると、女に背を向ける
相変わらず俺が帰ることに、あいつは何の反応もなかった
傘をかぶり、帰っていく俺をずっと見ている
春千夜
昨日と同様、薬の回り切らない不完全な体 調子の悪さに思わずため息が出た
春千夜
春千夜
春千夜
???
状況が呑み込めなかった
会社に帰っていたはずの自分は、気がついたらファミレスの席に座っていて
目の前には、あの女がいた
春千夜
春千夜
???
春千夜
分かっていながらも、聞こえないことに若干のイラつきを覚える
春千夜
春千夜
春千夜
口元の黒マスクに触れた瞬間 俺は自分の目を疑った
今になって気づいた 着ていた服が、いつもの紫のベストと白いシャツではなく
金の刺繍の入った、黒いトップクだったことに
春千夜
春千夜
春千夜
咄嗟に髪の毛に触れた それは見慣れたピンク色ではなく、金色であった
春千夜
春千夜
春千夜
コトンッ…
俺が困惑していると、突然テーブルに皿に乗ったパスタが置かれた
横を見ると店員がおり、持っていたもう一品をあの女の前に置くと
既視感のある口パクと共に軽く会釈をし、そそくさと去って行った
春千夜
???
春千夜
相変わらず聞こえない声 だが、こいつや店員だけじゃなかった
周りの客も、話しているはずなのに声が聞こえない
俺の耳に入ってくるのは スプーンやフォークの擦れる音や皿を置く音だけ
春千夜
春千夜
俺がそんな状態なのにも関わらず、目の前の女は気にせず料理を食べている
春千夜
春千夜
春千夜
春千夜
フォークを掴んでいた自分の手が、突然止まった
春千夜
春千夜
春千夜
突然生まれた疑問に、頭がバグった
故意的じゃなかった 普段から考えていたような、自然に出てきた思考だった
春千夜
春千夜
春千夜
春千夜
春千夜
???
春千夜
ず…
んず…
マイキー
春千夜
マイキー
気がつくと、俺は会議室にいた 周りにはいつものメンバーがいて、全員が俺を見ていた
春千夜
春千夜
マイキー
マイキー
そう言い俺から視線を外し、 話へ戻るマイキー
しかし、俺は気づいていた いつも生気がなく、ピクリとも動かないマイキーの顔が
見たこともないほどに、憂わしかったことを
春千夜
そんな彼の様子に驚き、俺はただ乾いた返事を返すことしか出来なかった
春千夜
春千夜
春千夜
春千夜
春千夜
マイキー
マイキー
春千夜
マイキー
春千夜
マイキー
春千夜
マイキー
マイキー
春千夜
マイキーの言葉に、俺は思わず声を漏らした
初めてだった マイキーが俺にそんなことを言ったのは
そんなに酷かっただろうか? いや、そんなわけは無い
最近はむしろ効きが悪い ラリったりせず、スクラップを終えることも増えた
心配されるようなことなんか何も…
春千夜
To be Continued…
コメント
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こんにちは!初コメです! いつもテックトックで見させてもらってます! 毎度毎度最高な作品で続きが出るのを楽しみに待っています! これからも頑張ってください!