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テラーノベル

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テラーノベル(Teller Novel)

誰もいない夜の街を、一人の男が歩く

もう朝方に近いというのに、空は妙に暗いまま

冷たい夜風が吹き始め、男の髪を靡かせる

次第に、雨が降り始める

冷たい夜風と共に降る雨は、どんどん傷ついた身体を蝕む

しかし男が、その歩みを止めることはなかった

どこからか、声が聞こえる

愛しき人の声がする

その微かに響く声は、男の歩みをさらに速めさせる

建物へと入る、目の前に広がるは暗いエントランス

そしてかすかに動く無数の人影たち

ほんの数秒だけ、全ての音が消え去った

風の音も、心臓の鼓動も、何もかも

次に鳴ったのは、空間を切り裂くひとつの銃声

バァンッ!!

梵天社員A

ぐぁっ…!?

梵天社員B

テメェ…ッッ!!

………ッ……!

ドゴッ!!

梵天社員B

カハッ…?!?!

梵天社員C

行くぞ、お前らッッ…!!

梵天社員たち

うお”ぉ”ぉ”ーー!!!!

梵天社員Cの掛け声で、梵天社員たちは蘭に銃を向け襲いかかった。

…………うるせぇんだよ

ガゴンッ!!

蘭は壁側に置かれていた消化器を手に取り、梵天社員たちに投げつけた。

すると衝撃で中の粉が吹き出し、煙幕のように視界を塞ぎ白い煙が廊下を包んだ。

梵天社員C

くそっ…何も見えねぇ!

梵天社員D

おい、あいつはどこだ!?

ガッ…!!

梵天社員C

なんだ、何か当たって…?

梵天社員C

……ッ!?

ドカァァァァンッ!!!!

足に当たった何かを拾い上げた瞬間、けたたましい轟音と共に爆発が起こった。

………………

廊下の角からそれを見届けた蘭は、背を向け先に進んだ。

梵天社員D

止まれッッ…!!

梵天社員E

これ以上近づくならば撃つ!!

梵天社員二人の容赦のない発砲が蘭を襲う。

しかし蘭は幾度となく銃弾を交わし、二人の額目掛けて発砲した。

梵天社員F

隙あり…ッッ!!

バァンッ!!

すると突然背後から梵天社員Fが現れ、ひとつの銃弾が蘭の左肩を掠めた。

……チッ…

バァンッ!!

梵天社員F

ガハッ…!!

蘭の撃った銃弾が梵天社員Fの腹部を貫く。 それと同時に肩の傷口が痛み、じわじわと血が滲み始めた。

(敵が多くなってきたな…)

(早く夢ちゃんを助け出したいのに、全然奥に進めない…)

梵天社員1

見つけたぞ…!!

梵天社員2

殺せ―ッッ!!

…………虫みてぇに、ウジャウジャと湧いてきやがって…

蘭は銃をホルスターにしまい、左手に握っていた刀を抜く。

邪魔なんだよ、テメェらは…

ザシッ!!

迫り来る梵天社員たちにひるむことなく、蘭は一瞬にして全員を斬り捨てた。

梵天社員3

…ッう”………ゲホッ…

……………おい、

梵天社員3

ヒッ…!?ま、待ってくれ…!!

あいつはどこだ

梵天社員3

は…?あいつって……

グサッ…!!

梵天社員3

う”く”ッッ…!?

狼狽える梵天社員3の肩に、蘭は容赦なく刀を突き刺した。

聞いていることだけ答えろ、あいつはどこだ

梵天社員3

しッ…知らねぇよ!!どこにいるかなんて!!つか、あいつって誰だよ…!!

ギリギリッッ…!!

梵天社員3

い”き”ッッ?!?!

すると蘭は梵天社員3の肩を貫いていた刀を、少しずつ回転させ始めた。

刀は肉を抉り、徐々に骨を砕き始めた。 赤黒い鮮血が床を侵食し、目の前の人間の顔がいびつに歪んでいく。

…んなわけねぇだろうが

さっきまでテメェら社員はここにはいなかった

テメェらを集めた奴がいんだろ

さっさと吐け、じゃねぇとこの腕捻じ切るぞ

そう言って蘭はどんどん刀を回転させ、絶叫する梵天社員3を凝視した。

梵天社員3

あ”か”ッッ……く”ッ………や”め”…ッ…?!?!

呻いてねぇで答えろ…

バァンッ!!

突如廊下に銃声が鳴り響く。 身体が反応し表を上げた瞬間、蘭の頭に銃弾が当たった。

鏡蘭

あまりいじめないでやってくれよ

鏡蘭

一応そいつ、俺の部下だからさ

現れたのは鏡蘭だった。 彼はニヤッと不敵な笑みを浮かべながら、蘭に銃口を向けたまま歩いてきた。

……ッ…テメェ…!!

蘭は側頭部を深く抉られ、大量の血を流していた。

しかしそれでも、目の前に現れた男を睨まずにはいられなかった。

鏡蘭

死んでねーのか、しぶてぇなお前も

"も"ってのは、誰と比べてんだ…

鏡蘭

もう少ししたら、お前も分かると思うぜ?

鏡蘭

お前が来たすぐ後だ、あいつが正面玄関から入ってきたのは

鏡蘭

不完治の身体で、お前と同じように、雨の中歩いてやってくるようなバカだ

鏡蘭

たった一人、武器は銃のみ

鏡蘭

それにまだちゃんと"見えてねぇ"らしい

鏡蘭

へなちょこエイム、全然当たんねーの

鏡蘭

そのせいでほぼ肉弾戦、でもめちゃくちゃ強い

鏡蘭

マジバーサーカー過ぎて笑えてくるレベルw

そう言って鏡蘭は、口元を押さえ嘲笑した。

(見えてない…?)

それって…

バァンッ!!

蘭が何かを言いかけたその時、鏡蘭の目横をひとつの銃弾が横切った。

???

聞き捨てならないわね

???

誰がへなちょこエイムですって?

すると奥からヒールの音が響き渡り、それと同時に女性の声が聞こえた。

鏡蘭

本当のことだろ、現に今当たってなかったじゃねーか

鏡蘭

なぁ?花笠樹

鏡樹

…気安く名前を呼ばないでくれるかしら?

鏡樹

ハッキリ言って、すごく不快よ

バカにしたように鏡蘭がそう言うと、2人の前に鏡樹が現れた。

花笠…!?お前、なんで…

鏡樹

目的は同じよ、あの子を助けに来たの

バカッ…じゃねぇの、んな怪我で…

鏡樹

貴方まで和田みたいなこと言わないで

鏡樹

私はあの子を助けたいのよ

鏡樹

もちろん、貴方のこともね

…!

鏡樹の言葉に蘭は思わず目を見開く。 彼女の口から発せられた意外な言葉に、驚きと微かな喜びを感じた。

鏡樹

……さて、灰谷さんとのお話は終わり

鏡樹

今度は貴方とお話をするわ、"鏡の"灰谷さん

そう言うと鏡樹は視線を鏡蘭に移し、再び銃口を向けた。

鏡樹

さっきのは警告よ、少しでも妙な真似したら今度こそ貴方の頭を撃ち抜くわ

鏡蘭

随分偉そうに言うな、俺らに勝つ気でいるのか?

鏡樹

当たり前でしょ、だって…

鏡樹

命をかけてまで、負けに来るやつなんか居ないでしょう?

鏡樹

殺されたくなかったら、今から言う条件を飲みなさい

鏡蘭

条件?

鏡樹

①夢を解放すること

鏡樹

②金輪際、私たちと関わらないこと

鏡樹

たったこれだけ

鏡樹

従ってくれさえすれば、生かしておいてあげる

鏡蘭

…お前、それ本気で言ってんのか?

鏡蘭

だとしたら、お前は相当なバカだな

鏡樹

どういう意味かしら?

鏡蘭

親友と仲間を傷つけられて、その傷つけた相手にする仕打ちがそれだけとか

鏡蘭

相当な甘ちゃんだろw

鏡蘭はしきりに肩を震わせながら、嘲笑うようにそう言った。

鏡樹

人が慈悲の心をくれてやってるのに、貴方はそれを無下にするのね

鏡樹

貴方がひどい仕打ちをして欲しいと思ってるマゾだと言うのなら、喜んでやるけど…

鏡樹

今優先するのは貴方じゃなく夢よ

鏡樹

それに貴方を傷つけたら、私が夢に怒られるわ

鏡蘭

は?どういう意味だよ?

鏡樹

…あの子は、本当に優しい子よ

鏡樹

自分の信じたい人を信じて、自分の守りたいものを全力で守る

鏡樹

たとえその相手が、敵であってもね

鏡樹

貴方は…貴方たちは、自分や灰谷さんたち、私たちを傷つけてきたけど

鏡樹

それでもきっと、貴方たちのことが大好きだし、傷ついて欲しいなんて思っていない

鏡樹

だから、条件はこれだけ

鏡樹

これに従えないと言うのなら、夢には申し訳ないけど力ずくでいかせてもらうわ

鏡蘭

…残念だが、答えはノーだ

鏡蘭

そんな条件飲んだら、今までの努力が無駄になるんでね

鏡蘭

まあ別に条件を承諾して、今この場でお前らを殺せばなしにもなるけどな

鏡蘭

夢ちゃんは渡さない、お前らはここで死に腐れ

鏡蘭がそう言った瞬間、廊下の奥から何人もの梵天社員たちが歩いてきた。

(正面と後ろから同時に来てる、挟まれたか…)

鏡蘭

んじゃ、あと任せたぜ〜

梵天社員4

はい

そう言って梵天社員4の肩を叩くと、鏡蘭は人の波をすり抜け去って行った。

鏡樹

灰谷さん、立てるかしら?

ああ、何とかな

鏡樹

……勝率、あると思う?

99%死ぬだろうな

鏡樹

じゃあ、その1%に賭けてみない?

言うじゃん…w

じゃあ、勝つ方に10万

鏡樹

なら私は20万で

状況に噛み合わない会話をする自分たちに、若干の呆れを感じながらも

2人は背中を合わせ、梵天社員たちに銃口を向けた。

負けんじゃねぇぞ、お前と心中なんてごめんだからな

鏡樹

こっちのセリフよ

鏡樹

てか心中って言い方やめてくれないかしら

鏡樹

それじゃまるで、私たちが愛し合ってるみたいじゃない

悪ぃな、俺好きな人いるから

他探してくれ

鏡樹

"好きな人"ってことは、珍しく物にしてないのね

鏡樹

まあそれなら、尚更死ねないわね

鏡樹

背中任せたわよ

ああ

絶体絶命の状況の中、男女はただ静かに微笑む

見えぬ目など忘れ、痛む傷口など忘れ

目の前に映る者たちを利用し、僅少の金と自らの命を賭け

握った銃の引き金に、そっと指を置いた

To Be Continued…

ヲタ女と反社【君に捧ぐ想い】

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コメント

27

ユーザー

初コメ失礼します!!!! ほんと最高の固まりすぎますよ!?!何を食べてたらこの神作をかけるんですか!?続きが楽しみすぎて夜も寝れないかもです… というかこのペア絶対勝って欲しい…!!!最高×神×女神様ですほんとに!!!!!

ユーザー

待ってくださいよ?!見遅れましたが、神ですってば、、いーちゃん蘭ちゃんが夢ちゃんの事を大事にしてる事がよく分かりますね、、 ほんとに月銀澪さんの夢小説大好きです!!!!😖💗💗これからも頑張ってください!!!💪🔥🔥 もうほんとにほんとに続き楽しみすぎて寝れません🥲💕続き待ってます!!!🫣🤍

ユーザー

え?あぁなんだ神か。 ほんとにもうなんか言葉じゃ表せないくらい最高です! いーちゃんと蘭ちゃん絶対勝ってほしい、! なんかこう澪様ってほんとに語彙力高いですよね、ナレーション的なのでどんな状況なのか理解できます! 次も楽しみにしてます! めっちゃめっちゃ神越して神でした!(最高という言葉では足りない気がしたので)

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