私が消えるまで付き合って！【条野採菊】

待ち合わせ場所に立つ条野さんはいつもと違った服装で、 まあもともとの顔の良さもありきで、ナンパでもされそうな感じだった。 実際通る女子振り返ってるし。 本人気づいてるんだろうなー…… 内心満更でもなかったり？いやウザがってたり？ ……なんかムカつく。 ムカつくから新作を頬に押し付けた。 心音で気づいてたんだろーが、 いきなり冷え冷えのフラペチーノを押し付けられるとは思っていなかったらしく、 大袈裟な程条野さんの広い肩は上下に揺れた。

過去を思い出し自傷的に笑うと条野さんに頭を軽くはたかれ、大袈裟に痛がって見せた。

先程の白紙の文学書事件での事を思い出してそういうと、条野さんがうわっとでも言いたげな顔をした。 絵文字で表すならば、専らこれだろう。【😅】 微妙に腹立つヤツね。 まあ私中也さんとか太宰さん相手に多用するけど。

からかって見せると条野さんはスマホを取り出し始めた。 ……地図とか使ってんの見た事あるけど、メールもするけど…本人曰く見えてないらしい。

なるほどそのためのスマホか、と理解し、優しい人なんだなと思った。 世話焼きに慣れてる、とも言えるかな。 でも残念、私わりとしっかりしてるのよ。

たたたーと走って並木道を通り抜けていく。 隣にいると思った条野さんがいない。 振り返るとやはり、1人呆然としているのが見えた。 何やってるんだよ＿＿＿＿＿＿

1人ポツリと呟いた。 (名前)さんが行こうとしている笠のぎ稲荷神社は健康の神様だった気がする。 健康と言うか、長生き。 けど彼女はあと99日で死ぬ、いや、消えて無くなるらしい。 ……案外消えたくないんだな、死として捉えているのだなと 1人突っ走って行った彼女を悲観してしまった。 が、

しゃら、と鈴の音が聞こえた。 私のじゃない。彼女のアクセサリーだ。 彼女は底無しに明るく、悪く言えばバカっぽく振る舞う。 そう生きて、そう死にたいからだろう。 ならば私も彼女が余生を楽しく生きられるようにしてやろう。 ……直ぐに、私がこの手で殺した人達みたいには、