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krnk アリスと薄月

♥

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2022年11月19日

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なかむ

ふぅ……

今日も無事に終わった。仕事も、撮影も。

部屋の明かりを消し、ベッドに横になる。

ベッドの端に放っておいた携帯を手探りで探し、画面を開いた。

なかむ

まぶし、

某呟くアプリでは、escape2期の考察が飛び交っている。

なかむ

ふふ、シャケは単純に頭いいだけなんだよなぁ

あ、これは惜しい。もう少し深掘りすれば答えに 辿り着いていたかもしれない。

下にスライドしていけば、俺やきりやんのサーカス衣装を描いてくれる人 が沢山いた。 絵が上手い人ばかりで少し自慢気になる。

なかむ

これからだし、頑張るか

そのまま携帯の電源を落とし、またベッドの端に追いやる。

今日の撮影も楽しかった。まぁ眠かったし、空元気だった気がするけど。

窓から涼しい夜風が吹かれてふと目を向ける。

うぉ…、と思わず感嘆の声をあげ、吸われるようにベランダに出た。

月が視界を支配する。触れられると錯覚する程に近い。そんな、圧巻する程の迫力から厳かで目を惹かれるものがある。

月はどれだけ威張って夜空を独占しても、それ相応の美しさや気品がある。

なかむ

羨ましいなぁ…

僕だってやるときゃやるけどさ

布団に戻り、携帯で時間を確認する。

なかむ

もう23時か、寝ないとな…

自分を見ろと言いたげな自信満々で元気な月もいいけど

俺はやっぱ優しく見守ってくれるような薄月の方が好きだ。

なかむ

おやすみ

おやすみ

月は今日も僕を明るく照らす。おやすみと優しく返す。

医者はこれを重度の病気だと言った。幻聴だ、幻覚だと。

でも、そんな訳ないだろう。こんなに優しい視線に、大きく頼もしい手。

寝る時にいつも感じている。この手は、この感覚は絶対に嘘じゃないでしょ。

きりやん

やっと、寝たか……

今日は症状が軽い方でよかった。

今日はどんな夢を見たんだろう。

せめて、夢の中ぐらいでは、nakamuには報われて欲しい。

なかむ

き、ぃやん……

きりやん

……ここにいるよ

nakamuの頭を撫でると、不安そうな表情は消え、嬉しそうに微笑む。

俺はnakamuのこの表情と、すぐにでも消えてしまいそうな儚さに 惚れてしまった。

でも、残念ながら、nakamuは夜になると俺の姿を認識しなくなる。

さらに、色んなものが大きく見えたり、小さく見えたり、幻聴すら 聴こえてしまうと、医者は言った。

その所為で平気で危ないことをしてしまう、

今日はベランダで何かに手を伸ばし、落ちそうになったし、 昨日はナイフを足に刺そうとしたり させない為に俺はいつも夜は寝ずに此処にいる。

きりやん

いつになったら治るんだよ……

nakamuを殺そうとするコレは、もう半年もnakamuの中にいる。

なかむ

ぅ、……

きりやん

……nakamuは、いつも何を見てるの…

きりやん

俺は、どうしたらいい……

返ってくるはずのない返事を待っていると、そよそよと 誘うように風が吹き、赴くままベランダに出た。

きりやん

……

今日は小さな薄月がビルの影から覗いていた。 慰めるように照らす月は、nakamuが好きと言っていた気がする。

きりやん

……今日は寝ようかな、もうずっと寝れてないし

今日はnakamuと一緒に寝よう。 明日には、nakamuのこの症状が治ってると信じて。

~fin~

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