テラーノベル
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コップはついに、見たかった外の景色を見る事ができた。
けれど、絵本で見た青い空は無かった。
辺りは砂嵐で視界が悪く、地面はなんだかべちゃべちゃしてる。ぬかるんでる感じで足が取られて重く感じる。
しかも施設の中より、強烈に鼻腔に刺さる鈍い匂いが漂っている。
今まで匂った事のない匂いがする。なんか階段の手すりみたいな匂いがするなとコップは思った。
少し怖かったが、勇気を出して一歩踏み込んだ。 ざっ、ざっとコップは踏んだことない、施設の床とは違う柔らかさに驚いた。 そして、恐る恐る歩いていった。
外の事はなんにもわからないし、砂嵐があってよく前は見えないけど進んで行った。
歩いて少しすると、黒いもやが見えてきた。 (なんだろう?もしかして、おとなかな?) 砂嵐越しの黒い影は段々コップに近づいてきて、人影だと気付く。
でも、何か違う。
施設にいる人となんだか違う気がする。
見えなかったがなんとなくそう感じた。
コップは近くにあった見た事のない草むらに隠れて、人影をその隙間から覗いた。
とてもドキドキして、しかも見た事のない服を着ている。施設とは違う。
もっと見たくて、自然に四つん這いの体が前に出ていってしまう。
すると膝が草むらですべってバランスを崩してしまった。
ばさっと大きめの音が鳴ってしまったので、
(あ、まずい、ばれちゃう…!)
そう思ったコップ。
そして、コップの方向とは別の方向に向かっていたはずの人影がこっちに近付いてきた。
施設の人にバレそうなときに感じたドキドキよりももっと大きい。
怖い。
どうしよう。
焦りが出てきて、怖くて、動けないコップ。
それと対照にどんどん近づく影。
「おい、誰かいるのか」
怖いおじさんの声がズンと辺りに響く。
感じたことのない恐怖がコップを襲う。
ついに人影は草むらに入ってきたみたいで、ぱさぱさと音を立てている。
(あ…だれか…たすけて…!!)
そして、コップの上には施設の人じゃない大きな大人の顔が覗かれた。
(っ…!!!!)
コップは恐怖で声が出なかった。
「ガキだ!ガキがいるぞ!見た事ねえ顔だ、こいつはアフォルドーソのやつかもしんねえぞ!!」
大きく低い声で言っている。
コップはもう怖くて怖くて震えて、視界は霞んできて、息は荒くなっている。
そして、大人はコップの髪をぐしゃっと荒く掴んで、
「おい、お前どこのやつだ。さっさと言え」
「いたいっ…!え…あ…」
目の前には大きい顔。
恐怖で声帯が縮み、声が出せなかった。
「早く言えって、言ってるだろ!!!!!」
すると視界の端っこから素早く拳が飛んできた。
どっ!!!
頬を殴られた。
鈍い痛みが頬から目に伝わってくる。
痛い痛い痛い痛い痛い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
「あ…う…、うわあああああああ!!!!!!ああああああ!!!!!」
コップは激しく喚き泣いた。
「たすけてえええええ!!!!!!こわいいよおおおおお!!!!!」
コップの泣き声にイラついた知らない大人。 もう一回コップに拳を振り下ろそうとして━━