ライヤ
タクヤ、お前さ、もう少し仕事本気でやれないの?
タクヤ
どういうことですか?
ライヤ
どういうこと、って...そのままの意味だろ
ライヤ
今週、新規のお客さんで、タクヤがビリだぞ?
ライヤ
っていうか、先週もその前も、タクヤが取ってきたお客さんの人数少なかったんじゃね?
タクヤ
俺も、まだ至らないところがあったんだと思います
タクヤ
もう少し積極的に営業して、新規顧客取れるように頑張ります
ライヤ
俺みたいにさ、インスタグラム使って毎日の登校とか、頑張ってみたら?
ライヤ
ほら!これ俺のインスタ!
ライヤ
ストーリーでジムのトレーニングしてるところあげたりさ、
ライヤ
プロテインの紹介したりさ
ライヤ
こういうの、お客さんに紹介したりしてる?
タクヤ
いや、特にしてないですけど
ライヤ
何でしないんだよ?
ライヤ
どうせ、アカウント持ってるんだろ?
タクヤ
いや、インスタは辞めました
ライヤ
は?なんで?
ライヤ
今はネットに時代だぞ!
ライヤ
俺らみたいに個人で勝負するやつは、いかに信頼が取れるかで決まるんだよ
ライヤ
その信頼のためにSNSをを使わなきゃ、どうやって集客するつもりだよ?
ライヤ
使えるもんは全部使っていくんだよ
タクヤ
いや、実はインスタがらみで前にあんまり良いことがなかったんですよ
タクヤ
なので、少しの間はそこからちょっと離れたい、って言うか...
ライヤ
そんな適当な理由つけて...本当は自分にあんまり筋肉がついてなくて、
ライヤ
お客さんに見られるのが恥ずかしいんだろ?
ライヤ
お手本にされるほどの筋肉じゃない、って思ってるんじゃねーの?
タクヤ
別に、そういう理由で使いたいわけじゃないですけど...
タクヤ
でも、とにかく嫌なんです
ライヤ
あのな、集客に力入れないと、顧客獲得なんてできないと思った方がいいからな
ライヤ
それともなんだ?
ライヤ
お客さんに俺と比較されて、悔しいのか?
タクヤ
別に、ライヤさんと張り合うつもりは一切ないので...そこの心配はしなくて大丈夫です
ライヤ
俺だって、お前となんか張り合うつもり、一切ねーよ
ライヤ
でもさ、まずはお客さんから信頼してもらうためにもさ、
ライヤ
自分の食事管理と運動見直して、トレーニングも本格的に始めた方がいいぞ
タクヤ
アドバイス、ありがとうございます
タクヤ
でも、今はこれ以上は鍛えるつもりないんです
ライヤ
は?パーソナルトレーナーのクセしてそれ以上鍛えない、って...
ライヤ
お前さ、仕事舐めてんのか?
タクヤ
いや、仕事は頑張りたいと思っているんですが...
タクヤ
でも、これ以上筋肉はもう必要ないし、つけたくないんです
ライヤ
鍛えるのが面倒なだけだろ?
タクヤ
違います
ライヤ
お前、いい加減にしろよ...
ライヤ
この前、お前の女性のお客さんがトイレでこっそり話してるの聞いちゃったんだよな
ライヤ
「私のトレーナーさん、トレーナの中で一番筋肉ついてなさそうだし、
ライヤ
トレーナー変えようかなって」
ライヤ
お客さんからの信頼も失いかけてるのに、それでもまだ自分のやり方を貫くわけ?
タクヤ
ライヤさんの言うことは、すいませんけど聞くつもりないです
ライヤ
あのさ、じゃあはっきり言わせてもらうけど、
ライヤ
個人の才能で給料は左右されるけど、会社全体の利益が減ったらお前のせいなんだよ!
ライヤ
だから、お前だけが以上にお客さんが少なくなって売り上げが下がったら...
ライヤ
どうなるか分かってるよな?
タクヤ
会社の利益が下がります
ライヤ
分かってるんだったら、黙ってインスタ初めて集客も真剣にやれよ
ライヤ
あと、自分磨きな!
ライヤ
そしたら、明後日までにアカウント作って、10個投稿してこい!
タクヤ
えっ!そんないきなり...
ライヤ
これ、俺からの命令だから
ライヤ
できるよな?
タクヤ
いや、でもさすがに急すぎませんか?
タクヤ
ちょっと厳しいかな~と思うんですが...
ライヤ
できないんだったら、上司に報告するけど?
ライヤ
お前が最近、仕事にレイジ―すぎます、って...
タクヤ
いや、別にそこまでしなくても
ライヤ
報告されたくなかったら、できるよな?
ライヤ
それに、教育係の俺にもお前の売り上げ成績管理をアドバイスする責任があるんだよ
ライヤ
そのアドバイスだと思って、ありがたく受け取れよ
ライヤ
いいな!
タクヤ
分かりました...
ライヤ
そしたら、明後日な
ライヤ
俺が出勤する日に、インスタのアカウントと投稿見せるのが課題だから
ライヤ
しっかり作って来いよ
~2日後~
ライヤ
どう?インスタのアカウントは作れた?
タクヤ
はい、でも...どんな感じに写真とか取ったらいいのかよく分からなくて...
ライヤ
何だよこれ...
ライヤ
もっとさ~光と影の具合とか気にしたの?
ライヤ
こんなんじゃ、全然見栄えしないだろ
ライヤ
やっぱり、お前にはこういう仕事向いてねーよ
タクヤ
いや、でも、俺この仕事好きなんです
タクヤ
俺のこと信頼してくれるお客さんもいるし...
ライヤ
そんなの、ごく少数だろ
ライヤ
ほとんどのお客さんは俺のジムで一番筋肉質の俺に、トレーナー任せてくれてるし
ライヤ
男女両方から人気あるトレーナーだし、信頼性高いだろ?
タクヤ
それは、確かに尊敬しますけど...
タクヤ
でも、俺だって少数のお客さんでもやることはやってますよ!
ライヤ
そんな素人のアドバイス、聞いてくれる方が優しいと思うけどな
ライヤ
だって、俺は過去にボディービルの大会で優勝したことあるような奴だぞ?
ライヤ
そんなやつに、トレーナーとして勝てないんじゃないの?
タクヤ
俺は別に誰かと勝負する気は一切ありません
タクヤ
自分のお客さんを増やしたいとは思っていますが...
タクヤ
でも、俺はライヤさんみたいにそんなマウント取って優越つけたがる人の言うことなんて、
タクヤ
聞きたいと思わないです
ライヤ
お前、偉そうなこと言うようになったじゃん
ライヤ
じゃあ、来月の新規顧客のお客さんの人数で俺に勝ってみせろ
ライヤ
そしたら、お前のこといっぱしのパーソナルトレーナーとして認めてやるよ
タクヤ
ちょうど来月でここに入って1年が経ちますし、俺もそろそろバージョンアップする時ですかね
タクヤ
いいですよ
タクヤ
でも、俺は勝負するつもりは一切ないので
タクヤ
ただ、自分の目標として頑張るだけにします
ライヤ
じゃあ、もしお前が負けて俺が何言おうとも、何も言うなよ
ライヤ
勝負じゃないなら、別に気にしないよな?
タクヤ
はい、お好きにどうぞ
ライヤ
じゃあ、そういうことでね
~数日後~
マイ
タクヤ!
マイ
インスタやめたんじゃなかったの?
タクヤ
マイ...久しぶりだな...まあいろいろあって...仕事の関係でまた始めることになってさ...
マイ
もしかして、まだ私が言ったこと気にしてる?
マイ
私が「こんなムキムキの人と隣を歩くなんて恥ずかしすぎるって言ったから...?」
マイ
だから、今は少し筋肉おとしてパーソナルトレーナーしてるの?
タクヤ
マイに言われたことはもう気にしてないけど、
タクヤ
筋肉つけすぎて不便に思うことも色々あったからさ、俺の判断でこんなんで仕事してるんだ
タクヤ
だから、何にも気にしなくていいよ
マイ
ほんと、ごめんね
タクヤ
もういいって
タクヤ
それで、マイはどうしたの?
マイ
あのね、私たちよりを戻せないかな?って...
タクヤ
え?いきなりどうしたの!?
マイ
いや、いくら何でも私、タクヤに酷いこと言い過ぎたかもしれない、って思ったの
マイ
なんか、タクヤがいなくなってから、急に寂しく感じて...
マイ
好きなんだな、って気づいたからさ
タクヤ
俺も、マイのことまだ好きだよ
タクヤ
マイが良いなら、またやり直そう
マイ
本当!?
マイ
よかった!
マイ
それでね、もう1つタクヤにお願いがあるの
タクヤ
え?何?
マイ
あっ!今ちょっと仕事で呼ばれたから、またあとで電話するね!
マイ
じゃ!
~1週間~
ライヤ
タクヤ!
ライヤ
お前、今週ですでに15人も新規のお客さん取った、って聞いてけど、
ライヤ
本当なの!?
タクヤ
本当ですよ
タクヤ
俺、大手の健康食品会社が新発売すプロテインの、
タクヤ
アンバサダーをすることになったんですよね
ライヤ
は!?なんで、タクヤが大手の会社が販売するプロテインのアンバサダーが務めるわけ!?
ライヤ
しかも、このサイトの写真...お前実は腹筋結構割れてるじゃん!
タクヤ
仕事中はあんまり腹筋が目立たない服を着ていたので、分からなかったと思うんですが...
タクヤ
まあ、昔は結構鍛えてたんですよね
ライヤ
もしかして、さっき新規のお客さんから聞いたことも本当だっのか...?
タクヤ
はい?何か聞いたんですか?
ライヤ
「ボディービルの大会で優勝したことがあるらしいって...」
タクヤ
あーそんなことまで...
タクヤ
はい、本当ですよ
ライヤ
うそ!マジで!?そんなこと一切聞いてないんだけど?
タクヤ
言っていませんでしたっけ...実は、インスタをやめたのは前の彼女に、
タクヤ
ボディービルの大会に出るためにムキムキに鍛えすぎて、インスタに体の写真を上げまくってて
タクヤ
それで気持ち悪がられて、別れを切り出されたんですよね
ライヤ
なんだよ...その理由...
タクヤ
それで、よりを戻す彼女は健康食品会社で働いてて、
タクヤ
今ちょうど新発売のプロテインのアンバサダーを探してたところらしいんですよ
タクヤ
それで、ちょうど俺が頭に浮かんだみたいで...
タクヤ
引き受けることになったんですよ
ライヤ
そんなタイミングの良い話...お前から何か言ったんじゃないのか?
タクヤ
俺は、何も知りませんでしたよ
タクヤ
本当に突然で...びっくりですよね
タクヤ
それで、それを知ったお客さんが突然俺のところに来て「アンバサダーの人ですよね?」
タクヤ
って聞きに来たんですよ
ライヤ
お前、これは反則だろ!
タクヤ
反則、って...俺はこのことは何もインスタグラムに乗せてないですよ
タクヤ
多分、俺の彼女が勝手に広めたんですよ
タクヤ
情報が回るのも早いみたいで...ほんと、俺もびっくりしてます...
タクヤ
そういう先輩は、今週はどれくらいお客さん取れたんですか?
ライヤ
俺のことは...別に気にしなくていいだろ
タクヤ
え?人には聞いておいて、自分は教えないとか卑怯じゃないですか?
タクヤ
そんなの、俺は許さないですよ~
ライヤ
後輩のくせに、そんな偉そうな口ききやがって...
タクヤ
いえ、もう今日からは俺も先輩と同じランクになるので、
タクヤ
後輩って呼ぶのはもうやめてください
ライヤ
は?どういうことだよ?
タクヤ
店長が言ってくれたんです
タクヤ
「今日から昇進するから、みんなと対等な立ち位置で頑張ってくれって」
タクヤ
なので。俺も本気でこれからは営業しますね
タクヤ
覚悟、しておいてください
ライヤ
いきなり偉そうな口ききやがって...
タクヤ
俺、言ったじゃないですか
タクヤ
別に新規顧客の人数を数えるのは競争をしているわけじゃない、って
タクヤ
だいたい、先輩が仕掛ける勝負に付き合っているほど、俺は暇じゃないので...
タクヤ
今から新しいお客さんのトレーニングメニューも考えないといけないですし...
タクヤ
これで、失礼しますね
~後日談~
タクヤ
その月の新規顧客獲得の人数は、俺が一番になれました
タクヤ
また、自分の記録を更新するどころかライヤさんの新規顧客の獲得人数の最高記録も更新でき、
タクヤ
先輩を見返せた気がしてすごく気持ちがいいです
タクヤ
これからも、自分のお客さんと向き合って真摯に仕事に向き合っていきたいです






