私
シュウサクさーん…

シュウサクさん
なんだい?

私
暇です。

シュウサクさん
暇って…

シュウサクさん
そんなに言うくらいなら、私の探偵事務所の片付けぐらいしてるくれないか助手よ…

私
片付けるものないじゃないですか、

私
シュウサクさん、綺麗好きだから、物がまとまりすぎています。

私
気持ち悪くなるくらい。

シュウサクさん
そうか

シュウサクさん
なら、特別にもっと気持ち悪くなる事件の、話をしてあげよう。

私
ほんとですか

私
聞きます、

私
その話

シュウサクさん
この部屋でシンデイタのは、ササキユウマさんであっていますか?

コマリさん
はい

コマリさん
間違いありません。

私
はい!質問

シュウサクさん
なんだ

シュウサクさん
始まったばっかりで

私
なんでコマリさんは、ユウマさんってわかったんですか?

シュウサクさん
なぜだと思う?

私
分からないからきいているんでしょうが。

シュウサクさん
そうか

シュウサクさん
それもそうだな。

私
はい

シュウサクさん
コマリさんは、ユウマさんの助手さ。

シュウサクさん
どっかの誰かさんとは違った、優秀な助手。

私
…私助手やめましょうか?

シュウサクさん
いや、君とは言っていない。

シュウサクさん
さ、さぁ。

シュウサクさん
話を2年前に戻そう。

シュウサクさん
この時、僕と君は

シュウサクさん
まだ会っていなかったからね。

私
そうですね。

シタイの状況は、手首の動脈を切っての自殺。 …いや。
シュウサクさん
じゃあコマリさん

シュウサクさん
ササキさんゴロしに関わっていそうな人を集めてくれませんか。

コマリさん
…はい。

私
はい質問!

シュウサクさん
なんだねちょくちょく。

シュウサクさん
一向に進まないじゃないか。

私
なんでシュウサクさんはコマリさんも犯人のうちの1人に加えたんですか?

シュウサクさん
僕の話は無視かい

シュウサクさん
まぁいいだろう。

シュウサクさん
コマリさんはさっきも言った通りササキさんの助手。彼女にも彼をコロせる時間があったのさ。

シュウサクさん
ここまで材料が不十分であれば

シュウサクさん
根本的に疑っていかなくては拉致があかない。

シュウサクさん
と、言う訳さ。

私
ふぅん。

私
今回シュウサクさんちょっと焦ってたんですね。

シュウサクさん
まぁね。

シュウサクさん
解決はしたけど。

シュウサクさん
それでは一人一人、犯行時刻であったとされる7時半から8時の間、何をしていたか教えてください。

シュウサクさん
これで前半戦は終わり

私
前半戦って

私
いつから対決映画のようになったんですか。

シュウサクさん
まぁいいだろう。

私
ちなみに

私
その人達の性別は?

シュウサクさん
コナニキさんは女性。

シュウサクさん
その他のナカハタさん、ナナマガさんは男性。

私
そうか…

私
なら、コナニキさんは犯行は不可能ですね。

シュウサクさん
何故そう言いきれる

私
だって、仮に犯人がコロしにかかったとしたら、ふたりの力の差は歴然です。

私
何か刃物を持って襲いかかった場合

私
余程のことが無い限り男性であるササキさんがそうやすやすとコロされる訳がありません。

シュウサクさん
…君は

シュウサクさん
何か忘れ物をしているようだ。

事件当時には戻らず、現在の視点から話をすすめよう。
私
忘れ物?

私
なにか、今日1日不便でしたか?

シュウサクさん
いや。

シュウサクさん
そういう物理的な忘れ物じゃなく、

シュウサクさん
君の考え方に、忘れ物

シュウサクさん
別の言い方をすれば《落とし穴》があったって訳さ。

私
落とし穴…

シュウサクさん
君のそれは、心理学的に言えば、「固定概念」である。

シュウサクさん
固定概念は、ある物に対し、強い印象を与えられればそれが覆るような事態が起きたとしても簡単には変わらない。

シュウサクさん
そういう現象。

シュウサクさん
君は「女性は弱い=強い男性を殺すのは無理」という固定概念に囚われて話を進めていたのだ。

私
…私の固定概念についてはわかりました。

私
けど、犯人がコナニキさんと決まったわけではないでしょ?

シュウサクさん
いや。、

シュウサクさん
彼女だったよ、

シュウサクさん
自首してきたんだ。

シュウサクさん
余程つらかったんだろうね…

私
そうだったんですね。

シュウサクさん
さぁ。

シュウサクさん
ここからは謎解き編だ。

私
この前に○○編とかありました?

シュウサクさん
…この事件は

私
(無視しやがった)

シュウサクさん
女性が犯人だった。

シュウサクさん
それから私は、犯人自ら犯行に及ぶのは無理に等しいと考え、もう1つの方、わざと手首の動脈を切るよう、「誘導」した方法については考えた。

シュウサクさん
この犯罪は、1つの心理効果、そしてある誘導効果が使われている。

シュウサクさん
順を追って話していこう。

シュウサクさん
この事件では、《プロバビリティの犯罪》が使われている。

シュウサクさん
《プロバビリティ》とは確率の事。起きるかもしれない、けれどもしかしたら起きないかもしれない。

シュウサクさん
そのような状況である。

シュウサクさん
もし成功すれば話は変わるが、失敗すれば確実に成功する、とは限らないため、「冗談だよ」と言ってごまかせる。

シュウサクさん
コナニキさんはササキさんにある話を持ちかけた。

シュウサクさん
それは、「私(コナニキ)は、手首に怪我をしていても、確実に仕事をやり切れる。」というような内容。

シュウサクさん
このままだと理解不能で、ただ流される確率のほうが高い。けれど

シュウサクさん
ここでさっき言った心理効果を使えば、相手を簡単に挑発、今回のようにコロせたのかもしれない、と考えた。

シュウサクさん
その心理効果とは、「ダニング=クルーガー効果」

シュウサクさん
これは学者であるダニングさんとクルーガーさんが発見した現象。

シュウサクさん
ダニング=クルーガー効果とは、例えば頭の悪い者が「私はなんでも出来る、この世界を創造した神だ!」と豪語していたとしよう。

シュウサクさん
これは、事実と異なっている。

シュウサクさん
そう。ダニング=クルーガー効果とは、「自分は偉い」などと自身に都合のいい解釈をしていたのが、実際頭の中で「本当に自分は偉く、この真実は揺るがない」と錯覚を起こす現象。つまり、簡単に言ってしまえば『自己陶酔(自分に過剰なまでに自惚れる)』の状態にあったわけさ。

シュウサクさん
これをコナニキさんは知ってか知らずか。

シュウサクさん
ダニング=クルーガー効果を、使い「私は、手首の怪我をしていても確実に仕事をやり切れる。頭の悪く、無知なあなたには出きっこない。」と、言ったのだ。

シュウサクさん
さっきも言った通り、ササキさんは近々助教授となる身。

シュウサクさん
自分の立場、プライド

シュウサクさん
今まで積み重ねてきたものを貶され頭に来て対抗したのであろう。

シュウサクさん
これは

シュウサクさん
この世にあってはいけない、最悪の事件である。

参考文献:YouTube「星森香は物語る」より、《水中で嗤う子供。 》