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夢の中のお話。
絵本の中の空想の物語のような
それでもやけにリアルで冷たいような
そんな夢の中のお話。
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ぼく
暖かい日が僕を照らす。
草木がサラサラと揺れて
やわらかい風が甘い花の匂いを運んでくる。
大きなキノコや小さな家が、
まるで当たり前みたいに並んでる。
どこかふんわりとした、優しい優しい世界の絵本の絵みたいな世界が
目の前に広がっている。
アリス
アリス
ふわりとした金髪に
空みたいに澄んだ青い目を持つ女の子。
頭の上には白いカチューシャ。
めと同じ青いドレスに
穢れひとつない真っ白なエプロン。
黒と白の長いソックスに
つま先がまあるいおでこ靴。
絵に描いた通りの“アリス”がそこにいた。
ぼく
アリス
アリス
ぼく
アリス
アリス
アリス
ぼく
アリス
アリス
アリス
ぼく
アリス
アリス
アリス
ぼく
なまえ。
なまえ?
僕の名前は…
ぼく
ぼく
アリス
アリス
ぼく
アリス
アリス
アリス
ぼく
アリス
アリス
アリス
ぼく
アリス
ぼく
アリス
ぼく
アリス
ぼく
アリス
ぼく
アリス
アリスは満足気にうなづくと、座り込んでいた僕の手を取った。
アリス
アリス
......................................................
最初に案内されたのは、アリスの家。
屋根はチョコレート、
壁はクッキー。
ドアの窓にはイチゴジャム。
アメでできた可愛いベルに
お菓子の花が咲くチョコレンガの花壇。
伽話のお菓子の家そのものの、可愛らしいお家。
ちょっと壁を食べてみたら、
アリスに少し怒られた。
次に案内されたのは、しゃぼんが好きなうさぎの家。
大きなシャボンの中に入って
ふわふわ、ふわふわ浮かんで遊ぶ。
虹色シャボンが儚く散った。
次にアリスと行ったのは、お山の上の、小さなおうち。
小鳥さんの小さなお家や
物書き猫さんの中くらいのお家。
どれもこれも可愛くて、
綺麗な飾りがしてあった。
お山の上でみんなと遊んで
アリスとふたりでお山を降りた。
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あれから一週間、僕とアリスはたくさん遊んだ。
この世界によるはない。
暗くなる時間が無いから、
時計を頼りにするしかない。
僕らの一日が終わる度、
彼女は寂しそうな顔をしていたけれど
その理由まではわからない。
時計が3時を回ればおやつの時間。
アリスがお茶を用意している間に、
僕は絵本を読むことにした。
『夢の国のアリス』
子供っぽい字で書かれた文字に目を通す。
『ある時、一人の少女が夢を見ました。』
『それは、素敵で優しい夢でした。』
『素敵な夢の世界を楽しんだ少女は、目を覚まして』
『夢から出ていってしまいました。』
『夢はそれを悲しみました。』
『少女の作りだした夢は、もう誰にも見られることはありません。』
『夢は一人ぼっちになってしまいました。』
『そこで夢は思いました。』
『ひとりぼっちは寂しくて嫌だ。』
『人は夢は作り出して、好きな夢を見ることが出来るけれど』
『夢は作り出されたら、結局最後には1人になってしまう。』
『それならいっそ、自分が人になってしまいたい。』
『自分を作りだした少女のように、自分も夢を見たい。』
『どうすれば夢は人になりかわることが出来るのだろう?』
『夢は一生懸命考えて』
『そして思いつきました。』
『誰かの夢の中に、"アリス"として入り込もう。』
『そして、』
アリス
ぼく
アリス
ぼく
アリス
アリス
ぼく
アリスはそう言って、近くにある時計を手に取った。
アリス
アリス
ぼく
時間を戻せば僕は忘れる。
今感じてる危機感も
嫌な予感も
全部全部
そんなのって
アリス
アリス
アリス
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アリス
うさぎ
アリス
ぞくりと寒気がする。
うさぎは今、"ぼく"のことを
うさぎ
アリス
うさぎ
うさぎ
うさぎ
......................................................
山崎 翔太
がばりと飛び起きて、辺りを見回す。
自分の姿を見て、ほっと息をついた。
山崎 翔太
ここにはない。
"お菓子でできた家の壁"も、
"チョコで作られた高い屋根"も。
あるのは知らない家具たちだけだ。
山崎 翔太
山崎 翔太
もとは"ぼく"の物だった体を使って、
かつての"アリス"は高らかに笑い、涙を流した。
あの狂った世界から、逃げ出すことが出来た。
これで、私は自由だ。
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のこされたゆめのおはなし。
ひとりぼっちをきらったゆめは
じぶんを"アリス"として、ほかのひとの夢の中に入り込んだ。
優しい夢の住民を演じて
可哀想な<餌食>の前で踊る。
夢の"主人公"
その夢を作りだした人間を殺して
次の"アリス"をその人間に託し
夢は見事に人へと成り代わった。
残されたアリスはまた<餌食>を待って
次の人間になりかわる瞬間を狙う。
これは狂った夢のお話。
絵本の中の空想の物語のような
それでもやけにリアルで冷たいような
そんな、狂った夢のお話。
次に踊るアリスは、
可哀想な<餌食>は、
もしかしたら、あなたかもしれない。
アリス