川沿いに歩く 一歩ずつ、確実に
悠佑
ただただ川に沿って歩いた。
悠佑
悠佑
歩いて、歩いて、歩いて。 その先の道なんて分からなくて、 ついには走った。
悠佑
石があってつまづいて、 かけてしまった。
悠佑
足を見る。まだ大丈夫。 反射的に出た声に、意味はないから。
悠佑
立って、また歩き始めた。 今度は先ほどのようにはならない。 走っていないから。
悠佑
歩いて歩き続けて、もう何年だろう。
悠佑
それでも歩を進めて、ひたすらに 川に沿って歩き続ける
悠佑
そんなことを考えてはならないよ
悠佑
誰かが声をかけた
歩け、止まるな
悠佑
また、別の誰かの声をかけた
悠佑
振り払うようにまた歩く。
悠佑
声はどんどん大きくなって、 ついには走り出してしまった。
悠佑
あの時と同じだ
石につまづいてこけた。
悠佑
ああ、また同じことの繰り返し。 それが今は痛い。いたい。
悠佑
立ち止まって、耳を塞いだ。 これできっと声は聞こえない。
悠佑
悠佑
声を出しても、ここでは一人 誰も聞いてはくれない。
悠佑
寝そべり、目を閉じる。 これでもう見ることもない。
アニキ!
悠佑
アニキ!!起きて!!
悠佑
アニキ!!!
悠佑
悠佑
目を開けると、そこは病院で
ほとけ
目の前には可愛い後輩が涙を流して 俺のことを呼んでいた。
ほとけ
悠佑
思わず、といった様子で俺に 飛びついてきたところを見るに、 俺はどうやら心配をかけたらしい
悠佑
声を出して呼ぶ、 目の前にいる、最愛の人の名を。
ほとけ
その時分かった。
悠佑
口も、目も、耳も、全部全部、 塞いじゃダメなんだって。
悠佑
ほとけ
ほとけ
鼻水をずるずる垂らして、 目もまだ雫が溜まっているのに、
大声で、太陽よりも眩しい笑顔で、 そんなことを言ってくれるほとけが
悠佑
大変愛らしくて、笑みが溢れた
ほとけ
俺をぎゅっと、強く抱きしめながら 顔が見えないように埋めたまま、 ほとけはそう話した。
悠佑
まだ泣きそうな顔のほとけの頬に 触れて、むにゃっとやって 唇を尖らせてやった
ほとけ
この期に及んでまだ泣き言を 言うつもりらしい。
悠佑
だから俺は、そのとんがった唇に 自分の唇を重ねてやった。
ほとけ
すぐ離したが随分と、顔が赤く なっているように見える。
悠佑
悠佑
頬から手を離して次はほとけの背中に 腕を回してそのまま抱きしめた。
ほとけ
そしたら、真っ赤な顔のまんま、 抱きしめ返してくるもんだから、 更に愛おしく感じて。
悠佑
心の奥に刻まれてる言葉に 音をのせて、口から出した。
ほとけ
小さなリップ音が響いた。
ほとけ
悠佑
俺はほとけのその瞳に、声に、全てに 惚れたんだなあって。
悠佑
結局愛してるが1番好くて、 伝わるんだって。
悠佑
触れて、触れて。 壊れてしまえたら楽なのだろうけど
それじゃあきっと
悠佑
ほとけ
コメント
4件
ふぇっ、?なんか..うん。はい。 えっと、...人生って人それぞれ道のりが険しかったり短かったりするけどそんな人生っていう長いようで短い“人生”をこんなに上手く表現できるなんて..やっぱり、尊敬しかないですっ..! 水黒提供ありがとうございました!(?)