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第1話 - あ

2023年07月27日

#スカッと

田中俊樹

リコ

リク、今度の連休には私も香港に行くわね。

リク

え？来るの？

リコ

うん。だって今年に入ってから、全然帰国してくれないんだもの。

リク

いや、来なくていいよ。

リク

俺、仕事が忙しくて、来てもらっても何もかまってやれないし。

リコ

そんなの気にしないわ。

リコ

忙しいなら、家の事も色々と大変でしょう？

リコ

だから栄養のあるものでも作ってあげたいなぁって思ってね！

リク

いいって！そんなの。

リク

こっちはメシなんて外食が当たり前だし、栄養も足りてるよ。

リコ

じゃあ、お部屋の掃除なら必要でしょ。

リコ

私、掃除が得意なの知ってるでしょう。

リコ

それに洗濯も。毎日の事だと大変だから、せめて連休の間だけでも…。

リク

だから、いいって言ってるだろう！

リク

余計なお世話なんだよ。俺は忙しいんだ。

リク

いちいち、リコの連休の暇つぶしに付き合う暇なんてないんだっつーの！

リコ

そんな。私はただ、リクに喜んでもらいたいだけなのに。

リク

俺に喜んでもらいたい？必要ないよ。

リク

俺は、家に帰ったら一人でゆっくりしたいんだ。

リコ

そんな…。

リク

わかったら、しばらく連絡してこないでくれる？

リク

必要があったら、こっちからLINEするから。

リコ

分かった…。

リク

まぁ、気が向いたら日本に一時帰国するからさ。

リク

料理はその時に頼むよ。

リコ

うん。

リク

じゃあ、俺は忙しいからまたな。

リコ

お仕事頑張ってね。

～一か月後～

リク

リコ、来週日本に帰る事になったよ。

リコ

え？急にどうしたの。

リク

いやあ、突然異動命令があってさ。

リコ

ふうん。結局、全然香港に呼んでくれなかったわね。

リコ

たった1年だったけど寂しかったわ。

リコ

日本に帰ってきても、すぐ香港に戻っちゃうし。

リク

責めるなよ。だって超忙しかったんだから。

リク

俺、エリートだろ？俺が居ないと仕事が回らないんだよ。

リコ

そうね、あなたは確かに仕事は出来るから。

リコ

女性にもモテるから、香港で浮気でもしているのかと勘繰っちゃったわ。

リク

俺を信じていないのか。

リコ

そんな事は無いわ。

リク

それなら、疑うのはやめろよ。気分が悪いだろ。

リコ

ごめんなさい！寂しかったからつい、甘えたくなったのよ。

リク

ったく、俺がそういう鬱陶しい女は嫌いだって、知っていただろう。

リコ

ええ…。

リク

とにかく、来週には帰るから、色々荷物も送っておく。

リク

俺が帰るまでに、ちゃんと荷解きして準備しておけよな。

リコ

わかったわ。気を付けて帰ってきてね。

リク

ああ。じゃあな。

～5日後～

リク

リコ、ちょっと頼みがあるんだが。

リコ

ええ、なあに？

リコ

もしかしたら、明日帰国するから、空港へのお迎えとか？

リク

いや、そうじゃない。

リク

実は俺の友達も2日後、日本に行くんだ。

リコ

え？友達？

リク

そう。香港で出来た友達だよ。

リク

日本に来るのが初めてだっていうから、色々と案内してやってほしい。

リコ

それは良いけど、友達ならあなたが案内すればいいじゃない。

リク

いや、出来れば車で色々連れて行ってやって欲しいんだ。

リコ

リクも運転出来るでしょう。あなたも帰国したら案内してあげたら？

リク

飛行機の席が取れなくて、1日違いになったから無理だよ。

リク

リコなら仕事も暇だし、2～3日の休み位は取れるだろう？

リコ

別に暇って事はないわ。急にまとまった休みを取るのは難しいわよ。

リク

なんでだよ。俺の頼みだぞ？

リク

旦那様の友達をもてなそうとは思わないのか？

リコ

そりゃ、おもてなしは嫌じゃないけど、

リコ

知らない男性と車で移動するのは、嫌よ。

リク

男じゃないよ。女性だよ。

リコ

ええ？友達って女性なの？

リク

ああ、そうだよ。何か悪いか？

リコ

いや、友達を日本に連れてくるっていうから、てっきり男性かと…。

リク

相変わらずお前は頭が固いな。

リク

俺が友達が多い事も知っていただろう？

リコ

知っていたけど、女友達のおもてなしなんて…。

リク

なんだ、俺の友達に嫉妬かよ。器の狭い女だな。

リコ

そんな言い方しないで。

リコ

普通は旦那の女友達の観光案内なんて、しないと思うわ。

リク

普通ってなんだよ！お前だけの狭苦しい常識で、物事を推し量るんじゃねぇよ。

リク

俺にとっては大切な友達なんだ。

リク

俺の妻ならその程度の事は理解しろよ。

リコ

ごめんなさい。つい…。

リク

つい、って何だよ。

リク

お前がそんなに物分かりが悪い女だとは思わなかったよ。

リコ

物分かりが悪いなんて。ちょっと言い方がひど過ぎない？

リコ

私はただ、久しぶりにリクが帰国するから、二人でゆっくりしたかっただけなのに。

リク

二人でゆっくりしたいなら、いつでも出来るだろう。

リク

お前とは今後も一緒に暮らすんだから、少しくらい友達を優先させろよな。

リコ

ええ、でも…。

リク

まったく、グズグズと面倒な女だな。

リク

そんなに嫌なら、彼女は俺が案内するから良いよ。

リコ

え、待ってよ。リクが案内するの？二人で出かけるって事？

リク

そうだよ。お前が嫌がるから、俺が連れて行くしかないだろう。

リコ

それなら、私が案内する。

リク

なんだよ急に気が変わりやがって。

リコ

直感よ。私が案内したほうが良いような気がする。

リク

お、おう。

リク

やってくれるなら、頼むよ。

リコ

ええ、わかったわ。お友達の名前は？

リク

リリーっていうんだ。あとでLINEのIDも送るから、登録しておいて。

リコ

LINEを使えるのね。了解。

リク

俺は帰国したらすぐ仕事だから、彼女を車で空港に迎えに行ってくれ。

リコ

空港へ？どこのホテルに泊まるの？

リク

東京駅の近くらしい。詳しくは本人に聞いて。

リク

一応、日本語は話せる人だから。

リコ

そう。じゃあ、あとでその人の写真も送ってちょうだい。

リコ

写真が無いと、迎えに行っても誰なのか分からないから。

リク

わかった。じゃあよろしく。

リコ

はーい。

～翌日～

リリー

Hi！リコさん。初めまして～。

リコ

はい、初めまして。

リリー

明日日本に行きまーす。おむかえをお願い出来るってリクから聞きました。

リリー

リクはもう、日本にもどってますか？

リコ

リクは今日帰国します。日本語お上手ですね。

リリー

ええ、リクに大変親切におしえていただきました～。

リコ

はぁ、仲がよろしいんですね。

リリー

リク、とってもやさしいです。私にいろいろプレゼントもくれます。

リコ

そうですか。妻の私にはなにもくれませんけど。

リコ

なんなら、香港に行ってから一年間、私とは一度もあっていません。

リリー

あら、カワイソウなひとですね。夫婦なのに愛し合っていないんですね。

リコ

なんだかアナタ、日本語はお上手だけど

リコ

ちょっと鼻につく言い方をなさいますね。

リリー

鼻につくってナンデスカ？私、鼻になにもつけてません。

リコ

意味が分からないなら結構ですよ。

リリー

あ、そうですか。

リリー

ところで空港にはいつおむかえに来てくれますか？

リコ

お迎えが何時かという事なら、14時に成田空港にお迎えにいきますよ。

リコ

車でね。リクに頼まれましたので。

リリー

とっても助かります。リクからは、

リリー

あなたをタクシーとして使っていいと聞いていますので！

リコ

は？タクシーですって？

リコ

私は無料のタクシーじゃありません。リクの妻です。

リリー

いえいえ、リクからは、リコはオレのカセイフってきいてますよぉ。

リコ

なんですって。リクが本当にそんな事を言ったの？

リリー

私に怒ってもしかたないです。リクが言った事ですから。

リコ

単刀直入に聞くけど、貴女はリクの何？

リリー

え？私、漢字がニガテだからわからないんですけど。

リコ

つまり、あなたがリクのウワキ相手ってことでいい？

リリー

あ～、つまり私がリクの恋人なのかと聞いているんですね。

リコ

そうよ。

リリー

ええ、私とリクは愛し合っています。

リリー

もう半年も前から、いっしょに住んでます。

リコ

なんですって…。同棲していたってこと？

リコ

だから、私が香港に行くのをあんなに嫌がっていたのね。

リリー

私たちの甘い生活を、ジャマされたらいやだもの。

リリー

だから別れてくれないと困るのよ。

リコ

なんでよ…冗談じゃないわ。

リコ

いきなり私の前に現れて、夫と別れろですって？

リリー

あなた、リクにあいされてないです。

リリー

これ以上夫婦でいてもイミがないですよ。

リコ

あなたに言われる筋合いはないわ。泥〇猫。

リリー

私は猫ではありません。

リコ

そうね、猫ではないわね。失礼しました。

リコ

まあ、言わなくても分かると思うけど、

リコ

明日のお迎えはナシよ。日本観光はおひとりでどうぞ？

リリー

それはこまります。電車も良く分からないし、

リリー

ホテルにどうやって行ったらいいのかもわからないんですけど。

リコ

東京駅の近くのホテルでしょ？空港から直通のバスが出ているわよ。

リリー

え、そうなんですか。

リリー

バスで行けって事ですか？お金がかかります。

リコ

ふざけないで。こんな話をした後で、あなたに会いたい訳がないでしょ。

リコ

そんなに困ってるなら、リクにお迎え頼んだら？

リリー

あー、それもそうですねえ。

リリー

リクに迎えに来てもらって、一緒に移動します。

リコ

勝手にどうぞ。リクには自分で頼んでね。

リコ

もうすぐ飛行機が日本に着くはずだわ。

リリー

はーい。あとで連絡してみまーす。

リコ

そうするといいわ。

リリー

ええ、そうさせていただきます。

リコ

リクには私の車を貸すから。

リコ

お迎えは彼に頼むといいわ。

リリー

そうしまーす。アリガトゴザイマス。

リコ

さようなら。

～2日後～

リコ

リク？今どこにいるの？

リコ

お友達のお迎えに行ったきり、帰ってこないってどういう事？

リク

あ～、悪い悪い。ちょっと彼女、日本が初めてで勝手が分からないみたいで

リク

色々と困ってたから、助けてやってたんだ。

リコ

ふーん。泊りがけで？

リク

一緒には泊まっていないよ。俺は会社近くのビジネスホテルに泊まってたし。

リコ

帰国したばかりで、ご苦労様なことね。

リコ

ところでいつ帰ってくるの？

リク

別に、いつ帰ったっていいだろう。いちいちうるさいな。

リコ

またそうやって私につっかかる。

リコ

偉そうにしているけど、もう家にも会社にもあなたの居場所は無いからね。

リク

へ？

リコ

あなた、会社には出張だと嘘をついていたんだってね。

リコ

私の携帯に、あなたの上司から電話があったわ。

リコ

ずっとリクに電話しているけど、ちっとも出てくれないから心配していたのよ。

リク

マジか。それでお前、上司になんて答えたんだ？

リコ

香港の浮気相手とデートしてますよって伝えたわ。

リコ

ちゃんと画像も送ったの。

リク

なんだって？適当な事を上司に告げ口するなよ！

リコ

全て本当の事よ。あなた、私の車を使っているでしょう？

リク

あ、ああ。そうだけど…。

リコ

実は私の車のドライブレコーダーはね、ライブ映像がスマホに送れるのよ。

リコ

それも、スマホから操作可能だし。すごく便利でしょ。

リク

へ？ライブ映像だって…まさかお前…。

リコ

そう。ぜーんぶ見たわ。

リコ

車の中であなたとリリーさんが楽しそうに喋っている内容や

リコ

×××している所も…。

リコ

あなたの上司には、キスしている映像を送って差し上げたわよ。

リク

ええええええ。

リク

お前！プライバシーの侵害だぞ、それは！

リコ

何を言っているの？それは私の車よ。

リコ

プライバシーも何も、防犯や事故の検証の為にとりつけている

リコ

ドライブレコーダーが、違法な訳ないでしょ。

リコ

おかしなことをしているのは、あなたの方だからね。

リク

そんな…おれの会社の立場が。どうしてくれるんだよ…。

リコ

上司の方にも、あなたが会社をサボっている証拠があったほうが良いと思って。

リコ

とっても怒っていらしたわよ。早く謝ったほうが良いんじゃないの？

リク

そうだけど、どんな顔をして会社に行けば良いんだよ。

リコ

そんなの自分で考えなさいよ。

リコ

あ、でも車は私に返しなさいよ。あと、あなたの荷物は荷解きしていないから

リコ

そのままあなたの実家に、着払いで送ります。

リコ

もうあなたが帰る家は、ここには無いから。

リク

そんな。俺は離婚はしたくない。リコ、許してくれ。

リコ

無理無理。証拠がバッチリそろったし。

リコ

あとは離婚の話し合いをしましょうね。さようなら。

～後日談～

リコ

それから約一か月後、私とリクは離婚しました。

リコ

証拠を揃えて離婚届も一緒につきつけた所、あっさりと浮気を認め、

リコ

反省するそぶりで復縁を迫ってきましたが、もちろん拒否。

リコ

1年間もないがしろにされた挙句、

リコ

半年も浮気されていて、しかも同棲までしていたとなると

リコ

とても許す気にはなれませんでした。

リコ

子供がいなかったのが幸いです。

リコ

慰謝料もリクからしっかり貰い、彼の荷物も片付けて

リコ

気分もスッキリの再スタートとなりました。

リコ

リクは、単身赴任先で不倫していた事と、

リコ

帰国後も会社をサボって浮気相手とデートをしていた事が

リコ

会社でも問題となり、今度は国内の僻地へ左遷させられたそうです。

リコ

仕事にも家庭にも不誠実だった事が原因ですから、自業自得ですね。

リコ

私は、身軽になった分、仕事も恋もまた楽しもうと思います！

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田中俊樹

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