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コツン…コツン

病院の廊下は静かでやけに響く 君の足音。

…ふふっ
いらっしゃい

スライドドアが開くと共に 私は空に向かって笑顔で言葉を放つ

あ、バレた…笑

窓のガラスに薄く、 君の笑顔が映る

足音でバレバレだよ?

マジっ!?

少し声のボリュームを上げ、 少し目を大きくする君。

馬鹿だなぁ

こういう時はね、
抜き足、差し足、忍び足…だよ?

あ、そっか笑

ニコリと優しく笑い 目尻にくしゃりと皺を作る

そんな笑顔を見ると 私は優しく笑って目を細める

ふと彼の荷物を見ると 花束のようなものが小さく見えた

ねぇ…

あれ、なに?

私は細くなった指を少し震わせながら 花束を指さす。

あ、バレた笑

頭を掻きながら 「参ったな」と小さく呟いている

君には、何でもバレてしまうね

ふふっ
私を舐めないでよ?

私は悪戯に笑い 腕を組んで、体を大きく見せる

はい、これどうぞ

明日…退院でしょ?

君から手渡されたのは 11本の真っ赤な綺麗な薔薇の花束

リボンは綺麗な紅でより引き立てている

ありがとう…

これまでよく頑張ったね。

君は優しく私の頭を撫でる

その手の温もりがとっても温かくてくすぐったい。

あ、もうこんな時間だ…

時計に目をやると 時刻は9時を過ぎている

時計の秒針の音が病室内に響き渡り どこか虚しく、儚い。

俺、そろそろ行かなきゃ…

君は少し眉を顰め、 苦笑いを見せる

うん、分かった

退院したら、またデートとかしような

じゃあ、俺行くね

持って来ていた荷物を素早くまとめ、 君は椅子から立つ

顔をこちらに向け、 手を小さく振り優しく笑いかける

うん…

私は手に持った薔薇の花束を ぎゅっと強く握り締め、 彼を見送った。

朝、小鳥のさえずりが 窓の外で響く

外は綺麗な青空で、 私の気持ちも高ぶる。

今日で退院だ…っ

やっと…っ

私は空に向かい満面の笑みを見せ、 小さく呟く

その途端

う、っ

うぅ…っ

意識が朦朧として 視界が揺らぐ

綺麗な青空も雨が降ったようだ。

たす…けて…っ

掠れた声で助けを呼ぶ

それでも、足音は聞こえなくて その場に踞る

苦しい胸を抑えて 必死に息を整える

っ、う…

だ…れっ…か

力尽きたのか 体に力が入らない

窓の奥で、鳥のさえずりが 遠く聞こえた

廊下には君の足音が聞こえた そんな気がした。

だ……です…

だい…じょう……ぶ

遠くの方で誰かの声が聞こえる

……うっ

大丈夫ですかー

あ、…っ

君の顔が映る。 泣いているのか目には雫が溜まっている

ね…ぇ、

泣か…な…いでっ

震えた手で、君の頬に優しく触れる

優しくて温かくて 自然と涙が溢れる

泣きながら…言われてもさ…っ

説得力ないよっ…

君は笑顔ではにかみながらそう言う

たし…かに…ねっ

私はふっと微笑み、 伸ばしていた手を静かに下ろす

君の軽快な足音と泣き声が 廊下に響いた。

この作品はいかがでしたか?

162

コメント

15

ユーザー

最後にタイトルの足音をさっと回収してるところ、足音の違いによって伝わる彼の気持ち…全てが素敵でした…✨

ユーザー

11本の薔薇とか凄い素敵です!! 今回も感動させられました!

ユーザー

ありがとう、こんなに泣いたの久しぶりだわ そして見るの遅くなったわ(( 11本の薔薇の意味…ググったよ☆← そして更に泣きましたありがとう

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