うたい
はーあ。眠いな〜。
コマイヌ
うたい様〜鍛錬の時間ですよ〜!
うたい
やべ、コマイヌ!隠れろ!!
コマイヌ
うたい様、隠れても無駄でございます…
うたい
うわあ!コマイヌ、鼻が利くんだった!!
コマイヌ
さ、鍛錬に行きますよ。
ここはウラノヨ。君たちの生きるウツシヨの裏側に位置する世界。
君たちの知ってる人も普通に生活してるけど、立場が違ったりするよ。
うたい
嫌だ!鍛錬!したくない!
コマイヌ
ダメ!貴方様は跡取りなのでございます!この由緒正しき神社、「土狗神社」の!
うたい
やーだー!
うたい
(僕はうたい!ただの17歳!なのに変な神社の巫女に生まれちゃったから大変なことになっちゃったんだよ。)
うたい
じゃ、コマイヌ!さよなら!
コマイヌ
待ってください〜!
うたいはコマイヌを上手く撒き、神社から離れたショッピングモールにきていた。
うたい
はあ…嫌だな…巫女修行なんて…
うたい
(僕の神社は栄えてる街から外れた辺境にある。そんなだからお賽銭もほとんどないんだ。)
うたい
何より、神様に仕える巫女たる僕も祀られてる神様のこと知らないんだ…
うたい
あ、美味しそうなシュークリーム!ひとつください!
店員
分かりました!どうぞ!
通りすがりの人
よこせ!
うたい
何?何?
通りすがりの人
ヨコセ…ヨコセ…
うたい
へ?この人が話してない声…これ…アヤカシ?
通りすがりの人
クウ!
うたい
やっぱアヤカシ!
「アヤカシ」 ウツシヨに伝承として残る妖怪たち。それに対する負の感情がウラノヨに受け皿として注がれ、
ウラノヨにて実在する存在として人々に取り憑いたもの。
通りすがりの人
クイモノ…クイモノ…ヨコセ!!
店員
へ?
通りすがりの人
ガルルガ!
アヤカシに取り憑かれた人が、店員に襲いかかる。
うたい
危ない!
うたいが店員とアヤカシに取り憑かれた人の間に入り、代わりに吹き飛ばされる。
店員
だ、大丈夫ですか?!
うたい
ああ、大丈夫ですよ。
店員
でも、血が!
うたい
大丈夫。とにかく離れてください。
うたい
これをやるのは、僕の仕事です。
土狗神社。 古来よりウラノヨに蔓延るアヤカシを祓うことを専門にする神社。
鍛錬を積んだ巫女が神と接続することによって、アヤカシを祓う力を得る。
通りすがりの人
ガルルル…ガア!
取り憑かれた人の体からアヤカシが分離し、怖いほどに痩せた鬼が現れた。
うたい
そのフォルム…餓鬼か!
餓鬼 常に飢えと渇きに苦しみ、常に食べ物を求める妖怪。
餓鬼
オマエモクウ!
うたい
…はあ。やだなあ。僕アヤカシと戦ったことないんだよな。
人がアヤカシを倒すには、霊力という力を用いる。
しかし、鍛錬を怠ったうたいでは、十分に霊力を使うことが出来ない。
うたい
喰らえ、霊力弾!
餓鬼
ガア?
うたいの攻撃は、餓鬼に届くことなく霧散する。
うたい
へ?鍛錬では…上手くいったはずなのになあ?
餓鬼
オマエ、クウ、クウ!
餓鬼がうたいに飛びかかる。
うたい
うわあ!
うたい
ぐう…動けない…
うたい
(このままじゃ…死ぬかな…)
うたい
(悔いの多い人生か…やだな。)
うたい
(まあ、いっか。別になにかやりたかったわけでもないし。)
餓鬼
イタダキマス!
餓鬼がうたいに噛み付こうとした瞬間、餓鬼が弾け飛ぶ。
うたい
へ?
ニグ
や、巫女さん。生きたい?