ニグ
や、巫女さん。生きたい?

うたい
あんた…

あんた誰?と聞こうとした。
でも、直感がこれ以上ないほど強く教えてくれた。僕が仕えるべき存在。
ニグ
神様だよ。ちなみに犬神で、名はニグ。

うたい
じゃあ、あんたがうちの神様?

餓鬼
ガルルア!

ニグ
はい邪魔〜。

うたい
で、なんの用?

ニグ
なんの用?って酷いね。ついでに言うと神社は私の家だし。

ニグ
ま、短刀直入に言うか。

ニグ
えっと、アヤカシの王が復活して、犬の手も借りたい状況。各地に散らばる神様達を総動員してもなお人手が足りないから、君のような人に「神様代行」を頼みたい。

うたい
えー?やだなあ…面倒くさそう。

ニグ
じゃあひとつ聞く。なんで君は鍛錬もろくに積まないくせにこの餓鬼に立ち向かった?なぜ襲われそうになった人を助けた?

うたい
それは…

うたい
(なんでだろ。他人も自分もどうでもいいのに。)

うたい
…分かんない。

ニグ
正直でよろしい。じゃあ、あなたに神としてひとつ試練を与えます。「神様代行」としてアヤカシと戦い、あなたが人を助ける理由を見つけなさい。

うたい
…分かった。それしかないんでしょ?

ニグ
良かった…さ、早速試練ですよ!

餓鬼
ガルルル…

吹き飛ばされ動けなかった餓鬼が再び動き始め、ニグに襲いかかる。
うたい
でも、僕は鍛錬不足でダメージを与えられないよ?

ニグ
いいんですよ。霊力なんて簡単に増えます。

餓鬼
ガガガ…

ニグ
ちょっと大人しくしてて。

ニグ
あなたには、特殊な力が刻まれています。名を、「詠想祈術」。

うたい
何それ。

ニグ
歌の力で戦うのです。

うたい
急にアニメみたいになったな。
何?マイクでも持てばいいの?

ニグ
そんな近代的な歌じゃないですよ。短歌の方です。

うたい
五七五七七の?

ニグ
そう。

ニグ
歌には、想いが込められています。そして、歌は神も嗜む神聖なもの。その力を活かして、アヤカシを祓うのです。

うたい
へー。

ニグ
さ、やってみて!結界解きましたよ!

うたい
え?どうやって戦えばいいの?

ニグ
歌に霊力を乗せる!言霊の類ですよ!

うたい
ふう。じゃ、これでいいのかな。

「ちはやぶる 神代も聞かず たつたがは
からくれなゐに 水くくるとは」
うたい
ふう…なんか喉痛いな…

ニグ
まあ、声を媒介にするからどうしてもそう言った負担はありますよね…

ニグ
そこは対策を考えておきます。では、1度帰りましょう。

うたい
ちょっと待って。

うたい
大丈夫ですか?

うたいは、アヤカシに取り憑かれていた人の元に駆け寄り、言葉をかける。
通りすがりの人
あ、はい。なんか急にお腹がすいてたんですけど…今は大丈夫です。

うたい
なら良かった。良い一日を。

ニグ
もう大丈夫ですか?

うたい
ああ、うん。さ、行こっか。
