僕はナイフを鶴崎さんの喉仏に突き立て、不敵の笑みを浮かべる。
鶴崎さん
鶴崎さん
鴨野
鴨野
僕はナイフを振りかざそうとしたが、
鶴崎さんの手がナイフを持つ手を掴み、僕の取る行動を制する。
鶴崎さん
鴨野
鴨野
鴨野
鶴崎さん
鶴崎さん
鴨野
鴨野
鴨野
鴨野
鴨野
鶴崎さん
しばらく互いに睨み合ってナイフの攻防戦を続けていたが、
ふと、
相手の力が薄れるのを感じた。
見ると、鶴崎さんは降参だとでも言うように両手を広げ、
僕から顔を逸らしている。
鴨野
顔を合わせた時、鶴崎さんの表情に 思わず息を呑む。
栗毛の中から覗く瞳は かすかに哀愁を漂っていて、
悲しそうな笑みを浮かべていた。
鶴崎さん
鶴崎さん
鶴崎さん
そして鶴崎さんは、 ろうそくに火を付けるように
自分の過去に火を灯し始める。
鶴崎さん
鶴崎さん
鶴崎さん
鶴崎さん
鶴崎さん
鶴崎さん
--約20年ほど前--
鶴崎恭(幼少期)
鶴崎恭(幼少期)
鶴崎母
鶴崎母
鶴崎母
鶴崎母
鶴崎母
鶴崎諒(幼少期)
鶴崎母
鶴崎母
鶴崎母
鶴崎諒(幼少期)
鶴崎諒(幼少期)
鶴崎母
鶴崎母
鶴崎母
鶴崎母
母は諒と会話を終える度ため息をついて、
部屋にはいつも諒の泣き声が響いていた。
鶴崎さん
鶴崎さん
鶴崎さん
鶴崎さん
鴨野
鶴崎さん
鶴崎さん
鶴崎さん
鶴崎さん
--12年ほど前--
鶴崎母
鶴崎母
鶴崎恭(学生時代)
鶴崎恭(学生時代)
鶴崎母
鶴崎恭(学生時代)
鶴崎母
鶴崎母
鶴崎恭(学生時代)
ガシャン!!
何か割れる音がして後ろを振り向くと、
そこには、割れた壺の前で青い顔をした諒が佇んでいた。
鶴崎母
母さんは大きな足取りで俺を追い越し、諒に向かう。
鶴崎母
鶴崎諒(学生時代)
鶴崎母
鶴崎母
怒る母としょぼくれる諒の会話を遠くから見つめる。
鶴崎恭(学生時代)
鶴崎恭(学生時代)
鶴崎恭(学生時代)
鶴崎恭(学生時代)
鶴崎母
先生
先生
鶴崎恭(学生時代)
先生
先生に腰を折り、学校を後にした。
鶴崎恭(学生時代)
鶴崎恭(学生時代)
鶴崎母
鶴崎恭(学生時代)
鶴崎母
鶴崎母
鶴崎母
鶴崎恭(学生時代)
母さんはそれ以上何も言わず、スタスタと歩いていった。
鶴崎恭(学生時代)
鶴崎恭(学生時代)
鶴崎恭(学生時代)
鶴崎恭(学生時代)
--ある日--
俺はおぼろげな足取りで、コンビニに立ち寄った。
出口に一番近い場所で立ち止まり、
欲しくもないマンガ本をジッと眺める。
鶴崎恭(学生時代)
ドクドクと波打つ心臓の速さが、自分の緊張を知らせる。
辺りに人がいないか確認し、そっとマンガ本を鞄に入れた。
駆け足でコンビニから出ようとすると、不意に肩を叩かれる。
鶴崎恭(学生時代)
コンビニ店員
驚いて振り向くと、そこには笑顔を貼り付けたコンビニ店員が立っていた。
店員は俺の鞄をジッと見つめて、次にかける言葉を探している。
鶴崎恭(学生時代)
店員の手を振り払い、慌ててコンビニから駆け出した。
コンビニ店員
駆け出したはいいものの 足は早くなかったため、 すぐに店員に取り押さえられた。
その後母親の電話番号を聞かれ、 いつの間にか来た警察と、青ざめた顔をしている母に囲まれた。
鶴崎母
母は学校の時と同じように 平謝りをしている。
ただ、学校の時とは少し異なり、 母はゴソゴソと鞄を漁り始めた。
取り出したものを警察に渡すと、 警察は面倒そうな表情を 満面の笑みに変える。
事情聴取をすぐに終わり、 母と帰路を歩いた。
家に着くなり、母は俺の肩を掴んでくる。
電気もつけず、ただぎりぎりと俺の肩を掴んでくる。
表情は分からない。
ただ、分かるのは諒に怒る時の雰囲気とよく似ていたことだけだ。
鶴崎母
鶴崎母
鶴崎母
鶴崎母
鶴崎母
鶴崎母
鶴崎母
母はまだ、何かを喚いている。
ただ俺は、コンビニで見た“ある光景”が脳裏に焼き付き、母の話などを少しも聞いていなかった。
あの時見た、母の手に握られたもの。
日本で一番愛されている男が刷られた、薄っぺらい数枚の紙。
警察の表情が、がらりと変わった理由。
俺が犯した罪を、金で揉み消した。
その事実をやっと理解できたのは、母の喚きが落ち着いた頃だった。
鶴崎母
鶴崎母
鶴崎母
鶴崎母
鶴崎恭(学生時代)
鶴崎恭(学生時代)
鶴崎母
反抗心とやるせなさがごっちゃになって、胸を痛く締め付ける。
鶴崎恭(学生時代)
やっと絞り出した肯定を、笑顔と一緒に顔に貼り付けた。
鶴崎さん
鶴崎さん
鶴崎さん
鴨野
鴨野
鶴崎さん
鴨野
鶴崎さん
鴨野
鶴崎さん
鴨野
鴨野
目頭がカッと熱くなる。
鶴崎の解像度が悪くなる。
ナイフを握る手が擦れて、ぎりぎりと悲鳴をあげている。
鶴崎さん
鶴崎さん
鶴崎さん
鶴崎さん
鶴崎さん
鶴崎さん
鶴崎さん
そこまで僕に喋り、自分の行いに嘲る鶴崎さんを見る。
僕は今、
持っているナイフの刃先をどこに向ければいいのか、分からなくなってしまった。
鴨野
鴨野
鴨野
鴨野
鴨野
鴨野
鴨野
鴨野
この背負ってきた悲しみを 理解できないほど、 僕は殺人ロボットになれなかった。
静かに、鶴崎さんに微笑む。
鴨野
鴨野
鶴崎さん
鶴崎さん
無意識に、ナイフを持つ手がゆるまる。
こうして
気を抜いてしまったのが、いけなかった。
ガシッ
鴨野
突然、ナイフを持つ腕に手が伸びたことに驚く。
視界がぐらりと揺れ、
気がつけば
僕は鶴崎さんの下敷きになっていた。
鴨野
鴨野
鶴崎さん
言葉を漏らした喉笛に、ナイフの刃先が 突き立てられる。
鶴崎さん
鶴崎さん
鶴崎さん
鶴崎さん
鶴崎さんは僕を見下ろし、 歪んだ笑顔を浮かべていた。
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