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『可愛い』

9 - せめて君だけは

♥

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2023年09月17日

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桃赤 微モブ赤 ご本人様とは一切の関係がございません 苦手な方はここで閲覧をお控えください

こんなはずじゃなかったんだ

最初は、ただ俺好みの可愛い子だったから声をかけただけだったのに

すました顔して実は子供っぽいところも

快楽に弱くてすぐぐずぐずになっちゃう所も

可愛いって言うと顔真っ赤にして拗ねるところも

俺を好きにさせるのには十分だった

はぁ…

好きだなんて…迷惑かな

りうらは高校生で俺はいい大人だ

周りには結婚報告をしだすやつなんかもいて、きっと世間的にはこんな関係じゃなくてそういう幸せを望んでいるんだろう

思考を巡らせても結局『りうらが好き』

その結論にしか至らない

こんなに悶々とするくらいならいっその事、伝えてしまったらいいんじゃないか

自分の欲望のままにりうらと関係を持つんじゃなく、いっその事振られて潔く関係を絶ってしまおう

よし、そうだよね

俺もりうらも、前に踏み出さなきゃ行けないから

はぁ、緊張してきた…

いまはいつものようにりうらが来て、用意した服に着替えてくれているところだ

告白すると決めたは言いものの、全然落ち着かない

棚の中に閉まってあった小さな箱を取り出す

りうらに似合うと思って買ったネックレスだ

今までちゃんとした告白なんてしたことが無いが、直感でこれを渡したいと思った

…もうそろそろ、いいだろうか

ねぇもういいー?

待ちきれなくて扉の向こうにいるりうらに尋ねる

んー…もうちょっと

はやく終わって欲しいようでまだ来ないで欲しい時間

本当は女装なんてしなくてもりうらが1番可愛いんだけど

最近諦めたのか少し不服そうな顔をするだけですんなり着てくれるようになった、俺得すぎる

嫌がってるのも可愛かったけどなぁなんて考えていたその時、聞こえてきた声

ないくん、いいよ

俺はネックレスの入った箱をポケットにいれて素早く扉を開けた

…!可愛い〜!

りうらの可愛さに耐えきれずに扉を開けて直ぐに抱きつく

本当は今日くらいかっこよく登場したかったんだけどね

それに、もし今日で最後になるかもしれないなら抱きついておかなきゃ

…あれ?

りうら?どうしたの?

いつもみたいにやめてって言わなくてもいいの?

いつもりうらは抱きつくと嫌そうにして逃げようとするのに今日は一切抵抗してこない

もしかして具合でも悪いんだろうか

それとも…俺を受け入れてくれるようになったのかなんて、馬鹿げた考えをする

やめ…

りうらはそう小さな声を出すだけだった

すると俺の服をきゅっと握られる感覚

本当にどうしたんだろう、可愛すぎるんだけど

どうしたの?

今日は甘えたさんなのかな

そう言ってりうらの頭を撫でる

さらさらふわふわで綺麗な髪、抱きつくと香るこの匂いも、全部好き

ずっとこうしていられたらいいのに

しばらくの沈黙があったあと、りうらは口を開いた

…ないくん

ん?どうしたの?

話す気になってくれたと判断し手を離してりうらと向かい合う

りうらは下を向いていてどんな表情をしているのかわからなかった

…もう、やめようよ

え…?

今日で、お別れしよう

頭を鈍器で殴られたかのような痛み

いえ、なに?今なんて言った?

ちょっと待って、どういうこと…?

なんで急に…

上手くりうらの言葉を飲み込めない

別に、なんだっていいでしょ

でも…俺は…!

俺はまだ、好きだってことすら言えないままなんだよ

好きな人できたから、もうこんな関係続けたくないの

…え?

さっきよりも頭に強い衝撃が走って胸が苦しくなる

…そういうことだから

そう言ってりうらは俺の前から立ち去ろうとする

待って…ッ

考えるより先に体が動いてしまった

いや、引き止めちゃだめだろ

りうらにはまだたくさん未来があって、俺みたいな汚い人間がその未来を邪魔しちゃいけない

離してよ

嫌だ、離れたくない

そんな気持ちを押し殺す、せめて幸せになってね

溢れだしそうになる感情を必死に飲み込んでりうらに告げる

…今まで、ありがとう

…ッ

そのまま何もいわずにりうらは俺の家を飛び出した

…そうだ、これでよかったんだ

はは、馬鹿じゃん、俺

一人きりの部屋でそう呟いた俺の頬にはりうらへの想いの雫が伝っていた

ん、また俺……

目が覚めると濡れた瞳と重たい体

またりうらの夢をみて泣いていた

まだあの時から3年しか経っていないのか

りうらのいない時間は俺の人生のどの時間よりも退屈で長く感じた

俺はずっと前に進めないままでいる

りうらは、幸せにしているだろうか

今の俺にはりうらが別の人と幸せになってくれていることを願うことしか出来ない

ただ、そんな心の中に俺の元へ戻ってきてくれないかというほんの少しの馬鹿げた期待

告白することも出来ずに振られたくせに

滑稽なことを考える自分に苦笑する

その時視界に入ったりうらとのお揃いのキーホルダー

あの時プレゼントしたぬいぐるみ、りうらはまだ持っているだろうか

いや、前を向いて進んだりうらにはもう必要のないものだ

過去に囚われるのは、俺だけでいい

りうらとの思い出が詰まったあの部屋で過ごすことが苦痛で仕方なかったのでふらふらと家を出た

冷たい夜風に当たっていると空っぽな心が少しだけがマシになる気がする

その時、俺はある1点から目が離せなくなった

りう、ら……?

視線の先は大好きな赤髪の彼

と、その隣にいる若い青年

あれがりうらの、好きな人?

ここからでは会話は聞こえないがおそらく別れ際だろう

その時、りうらが鞄から何かを取り出して目の前の青年に渡した

なんだ、あれ…

青年が受け取ったのは茶封筒

それが3年前の記憶と重なる

りうらはあいつに、金を渡している?

すると青年は去り、りうらは悲しそうに手を振った

…ふざけんなよ

りうらは、幸せにしているって信じてたのに

実際は、男に金を渡してあんなに辛そうにしているなんて

俺は湧いてきた怒りのままにりうらに近づき手を掴んだ

……えッ?

すると驚いてこちらを向く3年ぶりの大好きな彼

そうだよ、そうやってずっと俺をみててよ

あんなやつより、俺にしてよ

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1,190

コメント

6

ユーザー

毎度毎度めっちゃいいところ!! 好きぃ!!

ユーザー

続きが気になりすぎるよ!!!!!

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