玄関のドアには内鍵がかかっている。私は、ここから出られない。そう絶望して、そっと目を閉じた。
数時間後
中村倫也
貴方
中村倫也
この男が呼びに来る数時間前に、既に目が覚めていたが、私は彼からの応答が聴こえているにも関わらず目を開けられずにいた。というのも、この声の主の名前も、顔も知らないからだ。全くの他人である。仕事帰り、徒歩での帰宅中に何者かに背後からハンカチで口を塞がれて、そのまま車に乗せられ今に至る。多分ここは、彼の家だ。
中村倫也
中村倫也
寝ている私の頭をそっと撫でて、ゆっくり落ち着いたトーンで話している。
中村倫也
中村倫也
中村倫也
中村倫也
バッグの中に入っている携帯の通知が鳴る。恐らくこの音は、LINEだ。
由里香
不在着信
由里香
不在着信
由里香
不在着信
そういえば今日は、中学以来の友人である由里香とランチの約束をしている。きっともう予定の時間なのだろう。私が今いる部屋には時計もないし、窓も閉め切っているため今の時刻を全く把握出来てない。夜が明けているかも定かであった私は、通知音で何となく現在の時刻を察した。
中村倫也
中村倫也
貴方
友人のことで頭がいっぱいになっていた私の隙を見てか、彼が急に私の腰を触ってきた。寝ている体だったはずが咄嗟に腰を引いてしまい、挙げ句の果てに吐息まで漏らしてしまった。それでもなお目を瞑ったままの私に、彼の表情は分からない。
中村倫也
私の反応に気づいていないのか、彼は特に言葉を発しない。それなら好都合だし、そうであって欲しい。
換気扇の音が僅かに聞こえる無機質で静かな部屋に、再びLINEの通知音が鳴り響く。絶対由里香だ、ごめん。今日楽しみにしてたもんね、私も同じ気持ちだった。
貴方
由里香への罪悪感と、自責の念が込み上げる。
今の私の状況を知っている者は誰一人としていない。多少遠回りでも、明るい道を通って帰ればよかったのだろうかと、昨日の自分を悔やむ。
中村倫也
中村倫也
貴方
彼が私の近くに近づいてくるのが分かる。
中村倫也
中村倫也
私の耳元で、そう呟いた。
中村倫也
貴方
中村倫也
中村倫也
中村倫也
中村倫也
中村倫也
中村倫也
中村倫也
中村倫也
中村倫也
中村倫也
中村倫也
彼はおもむろに立ち上がり、ドアを開けて部屋から出ていった。
数分後
貴方
緊迫した空気と、見えない彼の威圧から解放された私は深呼吸をして目を開けた。
辺りを見渡すと、足元に私の通勤バッグが目に入った。ここに私の財布やらスマホが入っているはずだと、手を伸ばした。
貴方
長方形で薄型のバッグをガサゴソと漁るが、財布や鍵などの貴重品は見つかったものの肝心のスマホが見当たらない。
貴方
どうやら彼が部屋から出て行く時に、バッグからスマホを抜き取られたらしい。あれだけ通知音が鳴っていたら、盗られるのも当たり前かと思う反面、唯一の通信手段が途切れたことに先の不安を感じていた。
相変わらず玄関についている内鍵は閉まっているようだった。しかし、隣の部屋に通じているドアには鍵がついていない。ベランダのある部屋があれば、そこから外へと逃げられるかもしれない。
貴方
男が部屋から出て行ってから、数十分が経過している。
貴方
貴方
仕事帰りに一人ラーメン屋に寄ってから、一度も何も口にしていていないため空腹ゲージが最高潮に達していた。喉も渇いているし、トイレにも行きたい。
目の前に、キッチンとやや小さめの冷蔵庫がある。あの男のものと思われるコップと、皿が数枚シンクに置かれていた。
シンクの隣に既に洗い終わったもの思われる、コップをひとつ取り出して水道の水を汲もうと蛇口を捻ろうとしたその時であった。
中村倫也
しまった。
中村倫也
背後から先程の男の声が聞こえた。
貴方
貴方
身体が硬直し、血の気が引いていくのが分かる。
後ろにいるのは分かっているものの、振り返ることができずその場に立ちすくんでいた。
作者
作者
作者
作者
作者
作者
一言でもおkですし、曖昧な感じでも大丈夫です(こんな雰囲気になったらいいな〜的な)
作者
中村倫也
不在着信
中村倫也
応答なし
中村倫也
応答なし
中村倫也
応答なし
中村倫也
通話
21:39:52
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