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蘭side

桃瀬らん

っ、はぁ ... はぁ ... ッ、、

学校から駅まではマラソンの 授業にはもってこいの長道が 続いている。

体育の授業か遅刻寸前でもなければ 誰も走ろうとは思わない。

実際私もそれ以外で全力疾走するのは 高校3年間で初めてのことだった。

桃瀬らん

(だ、誰も、追いかけてきてない、よね ... ?)

恐る恐る首を回すと目の届く範囲には 誰も見つけられなかった。

下校する生徒達の混雑が一段落した 今は前方にも人影はない。

ほっとしたのも束の間 ガクンッと膝に衝撃が走った。

桃瀬らん

わっ、んゎ ... 、!?

足がもつれ私は急停止 するしかなかった。

桃瀬らん

あっぶな ... 、、

桃瀬らん

... 誰も見てなくて、良かった、 ...

いくらなんでもダサすぎる。

地味な精神攻撃に見舞われながら なんとか体勢を戻す。

一息つくと共に首筋に 一通の汗が流れて私は思わず カーディガンの袖で拭った。

桃瀬らん

うぅ ... 暑い ... 、、

汗をかいてる感覚が気持ち悪くて 私はカーディガンを脱ぎワイシャツの 第二ボタンを外す。

肩に下げていた鞄にカーディガンを しまいながら秋晴れの空を見上げた。

桃瀬らん

... 空、高いなぁ

夏とは違う空気に吸い込んだ肺が ちくりと痛む。

次第に鼻の奥もつんとしてきて 慌てて両手で頬を叩いた。

桃瀬らん

(泣くほど悔しいなら、もっと頑張れば良かったんだ ... )

ぐっと唇を噛み締めて 自分を叱りつける。

後悔は先に立たずという 格言が今日ほど身に 染みた日はなかった。

思い出すのは先ほどまでいた 部室でのやり取りだ。

美術室に入ってきた瞬間から 顧問の大神先生は満面の笑みを 浮かべていた。

これはと思った矢先 先生の嬉しそうな声が 部室中に響いた。

大神先生

雨乃さん、桜黄さん、おめでとう!

続きは聞くまでもなく2人が コンクールで賞を獲った という報告だった。

最優秀賞に恋醒、佳作に美琴の作品が 選ばれたのだという。

結果が記された通知書が掲げられ 私は半ば無意識に自分の 名前を探していた。

もう一往復しようとしたところで 往生際の悪さに気がついて 苦笑が零れた。

桃瀬らん

(何度見たって、私の名前はそこにないのに ... )

ちりっと、唇に痛みが走る。

気付かないうちに噛んでいたらしく 鉄の錆びた味が口の中に 広がっていく。

桃瀬らん

(ぇ、何、どうしたの?こんなの慣れっこじゃん、)

自分で自分の反応に驚き私は咄嗟に 通知書を囲む輪から後ずさった。

まさかここまで落胆するとは。

落選したのは今回が 初めてではなかったしそもそも 受賞したことがないのに。

m o b .

先輩、おめでとうございます!
私、絶対選ばれると思ってましたっ!

m o b .

これでまた連勝記録伸びましたね ~ !

m o b .

そういえば、部長と副部長で
1、2フィニッシュした賞もありましたよね?

後輩達が恋醒と美琴を祝福する声が なんだか遠くから聞こえて来る。

私もその輪に加わろうとして 凍ったように顔の表情が 動かないことに気が付いた。

表情が剥がれ落ち口角が上がらない。

このままではおめでとうを 言うどころか逆に2人に 気を遣わせてしまうだけだ。

桃瀬らん

(ここから離れなきゃ ... 今日はもう帰ろ、、)

咄嗟にそう判断した私は鞄を掴んで 一目散にドアを目指した。

けれど足音に気が付いたのか背中に 恋醒と美琴の声が投げかけられる。

雨乃こさめ

らんちゃん?どこ行くの?

きょとんとした声の恋醒に私は 出来るだけ慌てて聞こえるように 意識しながら言う。

桃瀬らん

美容院の予約!日にち変えてもらってたの忘れてたんだっ、笑

恋醒と美琴がまだ何か 言っていたけれど聞こえない ふりをして叫ぶ。

桃瀬らん

ごめん、もう行くねっ!

雨乃こさめ

ぁ、らんちゃんっ!

桜黄みこと

らんらん ... 、、?

とにかくその場を離れたい一心で 私は無我夢中で走った。

誰も追ってきていないと 分かっているのに怖くて 下しか向けなかった。

桃瀬らん

( ... 私、何がしたかったんだろう、、)

コンクールに入賞したら 威榴真に告白する。

澄絺の前でそう宣言したけれど あれは別に願掛けでも なんでもなかった。

もっと単純に告白する勇気が ほしかっただけだ。

少しでも自信がつけば卑屈に なることなく胸を張って 伝えられるだろうとそう思っていた。

桃瀬らん

(でも、もうそれも叶わない ... )

きみ宛ての2文字 __ 。

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