テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
蘭side
雨乃こさめ
目頭が熱くなった瞬間を狙ったかの ように背後から名前を呼ばれた。
聞こえなかったふりをして 逃げてしまおう。
そう思うのにまるで地面に足が 縫い付けられたように動かない。
雨乃こさめ
雨乃こさめ
苦しそうに息を整えながらも 恋醒の声は明るかった。
桃瀬らん
叫びそうになるのを必死で堪え 私はいつもの調子で答える。
桃瀬らん
雨乃こさめ
桃瀬らん
雨乃こさめ
たった一言ではあったけれど 急に恋醒の声が沈んだ気がした。
不思議に思った矢先艶やかな 銀髪が視界の端に映り込む。
恋醒が髪を靡かせ 私の前に回り込んできた。
絵になるなぁとぼんやり眺めていると 綺麗な水色の瞳がこちらを振り返る。
雨乃こさめ
何を言われたのか咄嗟には 分からなかった。
ぽかんと口を開けた私を見て 恋醒は小首を傾げる。
雨乃こさめ
さらに予想外の質問をぶつけられ 今度こそ開いた口が塞がらない。
次第に怒りが込み上げてきて 感情のまま爆発しそうになる。
桃瀬らん
叫び出したいのを堪え私は出来るだけ 落ち着いた調子で問いかけた。
これまで散々相談に 乗ってもらっておきながら 最低な言い草だとは思っていた。
だがそれでも触れてほしくない 部分だった。
恋醒は悲しそうな目を伏せ いつになく萎れた様子で言う。
雨乃こさめ
雨乃こさめ
リミッターは呆気なく吹き飛び 私は反射的に叫んでいた。
桃瀬らん
雨乃こさめ
桃瀬らん
目を背けてきた事実を突きつけられ カッと視界が赤く染まった。
おまけに美琴の名前まで 持ち出されたことで渇きかけた 目尻がじわっと滲んでくる。
桃瀬らん
意識すればするほど涙腺は締まらず せめてもの策で恋醒から顔を背けた。
桃瀬らん
雨乃こさめ
雨乃こさめ
言い訳めいた私の言葉は恋醒の 震える声に遮られた。
桃瀬らん
戸惑いながら視線を向けるとそこには 見たことのない親友の姿があった。
恋醒はいつも笑っていて怒った顔も 泣いた顔も記憶にない。
能天気などと揶揄する女子も いたけれど私と美琴は知っている。
恋醒は優しすぎるから誰かを 困らせたり悲しませたくなくて 笑っているのだ。
桃瀬らん
私も他の女子達と同じように 思っていた時もある。
いつもにこにこして 点数稼ぎしているのかと 疑った時期もあったくらいだ。
だが付き合っていくうちに只々 優しいだけなのだと気付かされた。
桃瀬らん
今だって恋醒は「正論」しか 言っていない。
不思議に思ったから理解したいと 思っているからこうして 質問をぶつけてくるのだ。
桃瀬らん
私はぐっと拳を握り目元を 赤くした恋醒に語りかける。
桃瀬らん
細い指で目元の涙を拭いながら 恋醒が呟く。
雨乃こさめ
桃瀬らん
好きという単語に頭を 殴られたような衝撃が走った。
桃瀬らん
咄嗟に誤解だと言いかけ すんでのところで思い止まる。
どうやってあれが予行練習だと 証明すればいいのか。
その手立てがまるで分からない。
澄絺本人から言われた私はともかく 第三者を説得するだけの 材料がないからだ。
桃瀬らん
桃瀬らん
私が言い訳をしようと していると思ったのか恋醒は 聞きたくないと首を横に振る。
雨乃こさめ
雨乃こさめ
桃瀬らん
間抜けな声が出てしまい 私は慌てて口を塞ぐ。
恋醒はむっとしたように 眉を寄せ自分の思いを熱弁する。
雨乃こさめ
雨乃こさめ
雨乃こさめ
桃瀬らん
混乱する頭で必死に考え 私はとある仮説を導き出した。
桃瀬らん
雨乃こさめ
桃瀬らん
一気に脱力して私はへなへなと その場にしゃがみ込む。
雨乃こさめ
腰を屈めて私の顔を覗き込む 恋醒の瞳は悪戯っぽく光っている。
桃瀬らん
確かめてみようかと口を開いたが 実際は全く違う言葉が零れた。
桃瀬らん
雨乃こさめ
答えてから恋醒は 「あれっ!?」と目を瞬く。
即答してくれたことにくすぐったさを 覚えながら私はにこっと笑いかける。
桃瀬らん
桃瀬らん
桃瀬らん
桃瀬らん
だんだんと気恥ずかしくなり 後半は早口になっていた。
しかし相手にはちゃんと届いたらしく 恋醒は表情を輝かせる。
雨乃こさめ
桃瀬らん
しゃがんだままの私の首に 恋醒の華奢な腕が伸びてきた。
桃瀬らん
雨乃こさめ
耳元で震えた声の恋醒が囁く。
肩が濡れるのを感じながら 私は黙って首を横に振る。
桃瀬らん
桃の香りに包まれながら 私はそっと目を閉じた。
桃瀬らん
メーカーを聞いて今度一緒に 買いに行くのもいいかもしれない。
もちろんその時は美琴も誘って3人で