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きんきんさん

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きんきんさん

1 - きんきんさん

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2019年11月07日

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幼稚園のときの話です。 うちの幼稚園では『きんきんさん』と言う人がいるらしかったのです

というのも、必ず誰でも見えるわけではなく、クラスの半分くらいの子しか見れませんでした。私は見えない方だったので、その話題になる度にどんな人か聞きました

ですが、見える友人達は皆よく分からないという答えばかりで、詳しく聞いたことはありませんでした 最初は私に教えたくないんだと思っていましたが、どうやら本当に分からないようです

確かに見えるんだけど、それを言葉にしようとすると難しい。 これが見える友人達の意見でした

ある時、先生にそのことを話してみたんです。これだけクラスで話題になっているのだから、きっと知っているだろうと思っていました

先生

何その話?初めて聞いたなぁ

と言われました 先生にも聞かれましたが、私自身見たことがないので答えようがありません

仮に知っていたとしても、言葉に表すことはできなかったと思います。 なので、私もよくは分からないが、こういう人がいるらしいということだけ言いました

それから結構経った頃です。 夕方に数人の友達と残っていて、鬼ごっこをしようということになりました

幼稚園の裏には大きな石段や木があって、恰好の遊び場だったのですが、 昔事故があってからはそこで遊べなくなっていました。それでも鬼ごっこをするにはスリルのある場所だったので、バレないようにこっそりと裏へと行きました

最初は鬼ごっこを楽しんでいましたが、その途中に1人の子が

女の子

きんきんさん!!!きんきんさん!!!

と叫び出しました

女の子

本当だー!!きんきんさん!!

えーどこー?

どうやら皆見える子達だったらしく、私しか見えていないようです。 1人だけというのは少し恥ずかしい気持ちでした

女の子

見えないのー?

うーんまだかなー

いつものように曖昧に答えました

すると、皆一斉にこっちを真顔で振り向きました。皆同じような表情で、いつもとは違う気がしました。 私は怖くなって

やっぱり見えるよー

と?をついてしまいました

女の子

だよね

ニコッと笑いかけられ、すぐにまたいつものようになっていきました

しばらくはそのきんきんさんに手を振ったりしていました。 ですが、私達がいないことに気付いた先生がこっちにやって来ました。 叱られてちょっとシュンとしていました

先生

何してたの?

女の子

鬼ごっこしてたらきんきんさんが来たの

先生

へぇー!何それ?

先生は興味深そうに訊いていました。 普段なら、えっとねーと話してくれるのですが、なぜかその時だけは両目を両手で覆い

女の子

見えませんー知りませんー

と言うのです。 私は初めて見たのできょとんとしていると、指を少し開けてこちらを真顔で見つめていました。1人だけではなく全員がしていて、私も焦って同じことをしました

先生

えー!教えてよー

先生はますます気になったらしく、詳しく訊こうとしていました。 すると、いきなり1人の女の子が先生の目を親指で潰そうとしたのです

先生は尻餅をついて避けましたが、今度はその女の子が自分で親指を目に突っ込み出しました

先生

わ!やめてやめて!

先生も私もびっくりして止めさせようとしましたが止めません。 周りの子達はまた空に向かって

女の子

見えませんー知りません

女の子

痛い痛い!

1,2分すると、元に戻って涙目になっていました。 それでもやっぱり周りの子達は別段気にする様子もなく、ポーッとしていました。

先生が急いで救護室に連れて行くので私もついて行こうとすると

女の子

んーーーーーー

と、皆から携帯のバイブのように言われました

それから少し騒ぎになり、親も呼ばれたりしましたが、結局理由は分かりませんでした。ですが一週間程すると、彼女は転校になりました

朝急に言われてびっくりしましたが、あいさつだけしに行きました。彼女は両目を包帯で覆っていて、お母さんもついて来ていました

今までありがとう、違うところでもがんばってね

女の子

きんきんさんに?ついちゃダメだよ

ドキッとしました。 お母さんも何度か見たことありましたが、何だか違う人に見えました

元気でね

女の子

うん、ばいばい

私は最後に手を振って帰りました

女の子

死んじゃえば良かったのに

後ろの方から小声でそう聞こえたような気がします

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