テラーノベル
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君の好きなところ 変な癖があるところ。
私は今、 名前も知らない人に恋をしている。
夢
フードを深く被った男が レジカウンターに商品を置く。 ジュースとスナックと菓子パン。 私はそれを手に取り バーコードを読み込む。
夢
弔
夢
弔
夢
最近よく来るお兄さん。 真夏なのにフードを深く被っていて 顔は見えないけれど 甘くて冷たい声が綺麗な人。 毎度、氷砂糖みたいな声だなあと 聞き惚れていると スマホを指先で摘んで QRコードを向けてくれる。
夢
PiyPiy─
夢
弔
そしてこの人は 絶対に商品を握らない。 いつも指で摘んでから腕に抱えて 気怠そうに店を出る。
潔癖症? それともただの癖? そんなことを考えるうちに 彼が気になって仕方なくなった。
夢
夢
でも今日も会えた
それだけで嬉しくて好きが増す。
どうか明日も会えますように。
バイト終わり。
非常事態です。 スマホの充電は切れるし お店の時計はぶっ壊れているし 終電は目の前で遠ざかっていくし…
夢
夢
人気の無い駅のホームは寂しさが増す。
弔
甘くて冷たい氷砂糖みたいな声。 すぐに誰かわかって 勢いよく髪を翻して振り向いた。
弔
夢
夢
弔
フードを被っていないから 一瞬お兄さんか疑ったけど 口許の黒子と傷ですぐに分かった。
夢
心臓がうるさくて言葉が詰まる。
弔
夢
夢
弔
夢
笑ってる顔、初めて見た。
弔
夢
弔
弔
夢
弔
夢
夢
夢
弔
弔
ポケットに手を突っ込んで 改札を出る背中を追いかける。
こんな場所で会えたこと 声をかけてくれたこと お兄さんの隣を歩くこと 全てがうれしくてうれしくて 口許がゆるゆるだ。
夢
弔
私はずっと気になっていたことを 聞いてみることにした。 癖のこと。
夢
弔
夢
夢
夢
少しの間があって お兄さんは口を開いた。
弔
弔
夢
さらさらと夏の夜風が 二人の髪を気紛れに撫でて靡かせる。
弔
夢
弔
夢
役立たずな個性が恥ずかしくて えへへ、と笑って誤魔化す。
弔
夢
弔
心臓がどくんと跳ねて 体中に熱が巡る感覚がした。 そんな質問をされて 想像するなと言われても困る。
年上の余裕ってとってもずるい
夢
弔
チリンチリン─
弁明のために お兄さんの方を見上げていると 前から走行してくる自転車に気付かず 身体がよろけた。
夢
弔
お兄さんと肩がぶつかり 微かに指先が触れ合う。 私の中の私が 手を握ってしまえと言ってくる。 好きなんでしょう?と。
でも突然手を握る勇気なんて 少しも持ち合わせていなくて 人差し指だけを 彼の中指に引っ掛けてみる。
弔
そう言って 触れた瞬間解かれる指先。
弔
弔
夢
弔
お兄さんは 何言ってんだと言いたげな 怪訝な表情で小首を傾けた。
夢
そしてまた指先を絡める。
拒絶されることが怖いから 少し迷ったけれど 一度触れたら好きが溢れて止まらない。
弔
弔
絡めた指先はほどかれることなく 二人を繋げたまま。
最初は遠いと思っていた3駅は あっという間だった。 きっとお兄さんのおかげだ。 もうすぐ家に着いてしまう。
夢
夢
弔
口角を上げて見詰める視線に 私の感情は暴かれている。
やっぱりずるい。
私達はコンビニでアイスを買って 公園のベンチに並んで座った。 ひとつのアイスを二人で分けて 夏夜の熱を冷やしていく。
温いけど優しい夜風が さらさらと草木を揺らす。
弔
夢
夢
弔
僅かな間を溶かす 甘くて冷たい氷砂糖みたいな声。 彼は何処か儚げで一度見失ったら もう二度と会えない気がしてしまう。
夢
弔
弔
弔
弔
弔
弔
弔
弔
食べかけのアイスの容器を ベンチの脇に置いて 言葉を紡ぐ彼の横顔を見る。 不器用に真っ直ぐにぎこちなく 伝えてくれる心と 微かに赤らむ頬。
夢
夢
弔
彼は口に咥えたアイスの容器を ゴミ箱へ投げながら笑ってる。
表情や感情や思考を 知れば知るほど愛しさが増していく。
夢
弔
弔
何故今そんなことを聞くのかと 不思議そうに首を傾げる姿に 意を介さず隙を見て唇を重ねた。
ちゅ─
甘いものを食べたとき 必ず私を思い出すように。 次にキスをするときまで 私の味を覚えていてくれるように。 もちろん個性を使って。
弔
夢
弔
夢
弔
子供みたいに笑う彼が 私に顔を寄せる。
君と私の世界が 確かに縮まった瞬間だった。
八月の夜
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