僕の思ひ出 __

だが 、この悩みは決して 打ち明けてはならない

そう、皆で交わしたのだから 。

世は戦国乱世 。

その日は四五六年合同演習だった

任務は簡単なはずだった 。

とある殿の護衛 。

任務も終わりを告げる頃

ふいに殿が告げた

｢ 綾部喜八郎 ｣

｢ 妾の妃としてこの城に残れ ｣

どうやら殿は 喜八郎に恋心を奪われてしまわれた

我々は必死にそれを止めた 。

皆の気持ちは言わずともわかる 。

私もおなじだから

綾部喜八郎を愛していたから 。

｢ ...どうやらそれは無理なようだな ｣

｢ ならば最後に 、皆で 杯を交わそうではないか 。｣

皆で甘酒をのんだ 。

然し酒には薬が盛られており 次々と意識を失うものが続いた

次 、目が覚めると そこは四年長屋で____

気づいたら口に出していた

否定しようとしても口が動かない

どうもそれは 、 皆同じ様子だった

そんな甘い考えは壊された 。

二度も叩いた 。

目の前で行われる光景を ただ見ることしかできない

立花仙蔵先輩は涙を流し 、

我ら体育委員会委員長 、 七松小平太先輩は

強く 、唇を噛み締め その拳をまた振り上げた 。

そんな人為的な虐めを繰り返して ひと月が経った

私たちのしていることは 先生たちは気づいていない

だから、どれだけ拒絶しても 同室なのには変わり無かった

今日は月がよく映え

喜八郎は部屋の前で空を眺めていた

なんだか 、胸騒ぎがした

私の勘はよく当たるものだった

長屋の廊下に腰をかけて 月見をしているだけの見えていた

でも 、近くで見てみれば 彼はぐったりと瞼を閉じていた

ふと目線を下にする

すると 、空になった瓶を 強く握りしめていた

これがお前が望んだことなのだろう

この私に後悔をさせるなんて

流石は私の想い人 、同室だ 。

四年間 、これからも 握るはずだった踏鋤 。

最後にこれを見たのはいつだったか

｢ 滝の穴下手くそ〜 ｣

泣くな 、馬鹿野郎 。

喜八郎が泣いて縋っても 私たちは手をとめなかった

私達に泣く資格などないだろう

一番に伝えたかったこと

どんな誰よりも伝えたくて

反応が見たかったのに

がさっ

泣き崩れる人

自虐的になる人

受け入れられない人

それぞれ後悔してもしきれなかった

各々悲しんでいる中 、 ふと五年生に目がいった

皆さんその場に立ち尽くして 下を向いたり上を向いたり

そんなとき 、火薬委員会代理委員長

久々知兵助先輩が口を開いた 。

言い切る前に 、彼は 血を吐き地面に倒れ込んでしまった

もしも 、来世を信じるなら

またお前と一緒にいたい

あの夜 、私たちは死んだ 。

そしていま 、新しい性をもって またこの地で生きている

もちろん 、同輩や先輩方も 同じように生きている

そして記憶を持たずして 生まれ変わったのは喜八郎だけ

このまま 、この幸せな暮らしだけ

この幸せな時間だけを 彼奴に感じていて欲しい 。

思い出してしまえば

きっと私達から離れてしまうはず

その為に私たちは

この思ひも全てしまって

今日もお前に話しかけるのだ

ときどき 、ほんと時々だけ

滝や立花先輩 、みんなが 怖くなるときがある

そんな時は決まって変な声が聞こえる

難しい言葉を使って 、 何かを訴えようとしている声

よく分からないけど

声がどうしても僕達に似ているんだ