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一緒

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「一緒」のメインビジュアル

1

恋の狂犯者

♥

828

2022年11月29日

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確かあの時、空は青く澄んでいた

さくら

は、始めましていふ…さん
ですよね。

アニキが知らない奴を連れてきた。 俺の、知らない奴を。

いふ

アニキ、この人は…?

悠佑

なあ、いふ。俺な

いふ

…?

悠佑

この人と結婚するんや

その時、何を感じていたのかすら 今の俺には分からない。

初めて会ったのは10歳の夏。

悠佑母

お隣に引っ越してきました
これからよろしくお願いします

いふ母

これは、ご丁寧ににどうも
こちらこそ、よろしく
お願いします

悠佑

母さん……この人、誰?

挨拶に来た母親の裾を掴んだ、 杖をついた少年が目に映った

いふ母

あら、この子…

悠佑母

実は、目が見えないんです
なので、そちらのお子さんと
仲良くしてもらえればと…

いふ母

まあ、それはもちろん
仲良くさせてもらいますわ

いふ母

ほら、挨拶。

いふ

こんにちは、俺はいふ
仲良くしてね!

母親に促されるまま、 はじめましての挨拶をした。

悠佑

はじめまして、俺は悠佑
よろしくな、いふ!

そのはずんだ声に、笑った顔に 俺はきっと恋をしたんだと思う。

いふ

…うん!

この日から、俺らはずっと一緒だった

小学校では、俺がフォローした。

いふ

アニキ、大丈夫?

悠佑

うん、だいじょ、うわっ!

そう言った矢先、ドジッてしまうのは もう俺の中ではお約束だった。

いふ

っとと…もー、危ないやんか

いふ

ほら、手貸して。

悠佑

おう…悪いな!

俺が手を差し伸べれば、 アニキは笑ってその手を握る。

いふ

ぜーんぜん。
もう慣れっこやし!

その感触が俺は大好きだった。

中学校でも、俺はアニキと一緒にいた

いふ

本当に通常クラスで
良かったの?

悠佑

うん、やって出来ることは
ちゃんとやりたいもん!

何か支障がでるんじゃないかと ヒヤヒヤしていたのだが、 アニキの声を聞いて覚悟を決めている のだと気づいた。

いふ

そっか…やったらお互い
頑張らんとな!

悠佑

おう!負けへんで?

いふ

もちろん、俺だって!

そうやって勉強の教え合いも、 日常生活でも俺たちはずっと一緒で もちろん高校だって一緒だった

職場は違っても休みの日は、 いつも一緒にいた。

ずっと、一緒だと思っていた

実際そのはずだったのだ。

あの女が現れるまではーーーー

あの女が俺のアニキを奪った。

いふ

なんて…どうすればええんよ…

幸せになって欲しい。

いふ

俺と一緒にじゃ、
なかったんか……?

幸せになってほしい

いふ

なあ、なんで…なんでなんよ

幸せになって

いふ

なんで、なんで、俺がずっと
支えてきたのに

幸せに

いふ

あんな…あんな!!

ぽっとでの奴に全てを 奪われるなんて!!!

いふ

アニキ……どうして……

酒を煽る  そうでもしなきゃやってられなかった

いふ

アニキ……

テーブルに転がる酒瓶とビール缶の山 目を瞑る前に見えたのはそれだけだ

リンゴーン、リンゴーン 鐘の煩わしい音が耳に入る

いふ

……

今は拍手の音すらも煩わしい

悠佑

さくらさん

さくら

悠佑さん…

新郎新婦のステキなキスシーン

いふ

気持ち悪くて目を逸らす

いふ

…おめでとう

口から出た言葉の意味は はたして本来の意味なのだろうか。 もう、分からない

彼らが結婚してから次の休みの日

悠佑

じゃますんで〜

呑気な声が耳に入ってくる

いふ

いらっしゃーい

なるべく平静を保って返事をした いつも通りにしていよう

悠佑

いやー久しぶりやな〜

悠佑

結婚式の準備で
忙しかったから
なかなか来れんかったわ…

いふ

……今お茶だすわ

悠佑

おう!ありがとな!

結婚前と変わらない笑顔と、声。 何か悪い夢だったのではないかと 思いたくなってくる。

いふ

……なんでなんよ…

あの女さえいなければ……

悠佑

…いふ、どうかしたん?
手、止まっとるで

茶葉を入れる音が止まったのに 気づいたらしい。 耳と、記憶がずば抜けて良いから そんなことを言ってきたのだろう

いふ

いや、茶葉が少し…
足りんくって。

悠佑

そうなん?俺、
買ってこようか?

いふ

いや、ええよ、ちょっと
薄くなるくらいだから

悠佑

そっか、んなら俺は
ゆっくりまっとくわ〜

いふ

ん、そうしとって

アニキはどうしていつも通りに 俺に接してくれるのだろう

いふ

……

仲良しの、親友。

いふ

たった、それだけだったからなのか

いふ

俺は……

それでも、俺は…

その休みの日からも、 俺とアニキは会って話していた

悠佑

なあ、聞いていふ〜

いふ

なあに?アニキ

毎回、そんな風に始まる会話

悠佑

今日は雨の音が
綺麗に聞こえてな

だとか

悠佑

さくらさんがな

…だとか

いふ

そうなんやな〜

なんてことのない世間話が 俺は、聞くに耐えない時もあれば とても楽しい時もあった。

いふ

…なあアニキ、

悠佑

なんや?

いふ

今、楽しい?

ある時、そんな質問を投げかけた

悠佑

…おう!楽しい!!

その声を聞いて俺は決めた。

いふ

そっか、良かった。

あの女を殺すことを

夜、彼女だけを招いた。 いや、彼女から誘ってきたのだから 招かれたの方が正しいのかもしれない

さくら

それで、私彼のことが
本当に大好きで……

いふ

うん、わかるよ

いふ

で、君は学生時代の時の
彼を知りたいんだよね?

さくら

はい、どうしても
気になってしまって…

いふ

いや、良いんですよ!

いふ

俺としてもたくさん、
知って欲しいですし

さくら

本当ですか…?
良かった…

当たり障りのない人物を演じる そうして信用させるんだ。 一回なんだ、我慢すれば済むのだ。

いふ

…そうだ、お酒でも
飲んでいきます?

さくら

え、そんな…悪いですよ

いふ

でも好きなんでしょ?
彼から聞きましたよ。

我慢だ、我慢、我慢、我慢。 殺すのはコイツが抵抗しなくなって 記憶も朧げになるときだ。

いふ

実は俺もお酒が大好きで、
せっかくですし、ね?

さくら

…それなら、少しだけ…

彼女は押しに弱いタチだと、 アニキから聞いていた。 …一言一句忘れなんてしない。

さくら

…へえ、そうらったんれすね。

さくら

ん、ごめんなさい、ろれうが…

大分酔いも回ってきた。 彼女はもう無理だろう。

いふ

いえいえ、大丈夫ですよ

いふ

お酒、弱いんですね

さくら

はい……すきなんれすけお…

念の為、彼女には強い物を出したが その必要はなかったようだ

いふ

今、お水持ってきますね

睡眠薬入りのものだが、彼女は 酔いと信用が相まって、 スッと受け取った

さくら

ありあとうございます……

ゴクッ、ゴクッと水が喉を 通っていくのが目に見えた。

さくら

あれ……、あ、、

いふ

ごめんなさいさくらさん。
俺は貴方が大嫌いなんです

寝る寸前、彼女に言う

いふ

だから、死ねよ

"俺たち"の為に。

彼女の身体はもう冷えた

いふ

やった……くくっ、やったぞ!

いふ

いや…安心はしちゃダメだな

いふ

…次は解体だ。血抜きと、
ある程度のものは燃やして…

ガチャ。

いふ

!?

あり得るはずのない音がした。 鍵はかけていたはずだ。 なのに何故開いたのか。

いふ

アニキ……!?

合鍵を持っているアニキしか、 ありえなかった。

悠佑

いふ……?入るで…

まずいまずいどうしようどうしよう いや大丈夫アニキは目が見えないんだ 大丈夫、大丈夫、大丈夫、 分からないはずだわからない。

いふ

あ、にきどうしたの急に

悠佑

いや、帰りが遅いなって
思って……

悠佑

……いふ、さくらさんは?

いふ

…か、えったよ

少し声が上擦った。 絶対に不審に思われている。

悠佑

嘘やな。

いふ

コツ、コツと杖をついて俺のそばに やってくる。

悠佑

ほんまのことを
話してくれんか?

目が見えていないはずなのに、 なんでか全てを見通しているように 感じられた。

いふ

ヒュッ…

息が詰まる。

いふ

ち、ちがっ、俺は、俺は
コイツが、ぜんぶ、ぜんぶ…!

頭の中は複雑に絡まった紐のように 解けてはくれないのだろう

悠佑

……さくらさんを、
殺したんやな

いふ

…うん、

小さなアニキが大きく見える。 今は俺が子供みたいに小さい

悠佑

いふ、おいで。

アニキが両手を広げた。 そんなことされると思ってはなくて

いふ

あ、にき…っ!

だけど、温もりを感じたくて

悠佑

ん、いふ…

アニキを抱きしめた。

悠佑

俺な、ほんまはわかってたんや

いふ

アニキは俺を抱きしめ返すと、 そう話し始めた。

悠佑

お前が俺を愛してることも

悠佑

愛してるが故に、俺が
結婚した相手を殺しちゃうことも

いふ

え、、?

全部知ってた上で結婚した、のか?

悠佑

…俺はお前と
離れたくなかったから
こんなことしたんや

悠佑

俺とお前で絶対の約束が
できて仕舞えば、なあ、
ずっと一緒におれるもんな?

いふ

アニキ……

俺と同じことをアニキも……

悠佑

なあ、いふ、これで
俺らは共犯者や!

いつもよりも楽しそうな声と、 輝いた笑顔に俺はまた君に、恋する

いふ

…悠佑、今夜は月が綺麗だね

悠佑

ふふ、そうやなあいふ、
今夜が一番綺麗や!

狂気に染まった恋の共犯者

悠佑

愛してんで

全ては彼の望みのままに。

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コメント

2

ユーザー

……スゥッ、性癖過ぎるぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!! 青黒はこーゆう歪んだ恋も似合うのか………… 今回も神作でした!

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