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……っ

俺の、嗚咽混じりの声が

静かな部屋に ぽつり、と零れ落ちた

涙は止まることなく ぽろぽろと、溢れてくる

その涙を 銀さんの母親は赤子を抱いたまま

ただ、静かに 見守ってくれていた

銀さんの父親も 隣で優しく背中をさすり

爽はそっと 隣に寄り添い

小さく微笑みながら 俺の肩に手を添えてくれた

赤子は、母親の腕の中で

俺の指先を小さく ぎゅっと、握りしめていた

その温もりが 胸にじんわりと染み渡っていく

────まるで 俺の涙を祝福するかのように

嬉しそうに 笑い声を上げていた

俺は、小さく息を吐いて

ようやく、声を絞り出した

 

……そろそろ、行かないと

それは 自分に線を引く為の言葉だった

これ以上居たら きっと、動けなくなる

────これで、終わりじゃない

これから訪れる “次”の為に、進まなければならない

 

────でも……やっと

やっと、ひとり救えた

嗚咽を堪えながら 何度も、胸の奥で繰り返した

────少しして

銀さんの父親がそっと立ち上がり どこかへ行ったと思うと

棚の奥から、ひとつの 小さな木箱を持って戻ってきた

それは、繊細な彫刻が施された 美しい木箱だった

銀さんの父親は それを膝の上に置き、開ける

中には、一振の短刀があった

鞘は漆黒に包まれ 鍔はごく簡素な造り

────でも

どこか凛とした 静かな気迫が宿っていた

……これはな
俺の家に代々伝わってきた
“守刀”だ

銀さんの父親は ゆっくりと木箱から短剣を取り出し

俺の前に、差し出した

アンタには
必要ないかもしれない

────それでも
何かの“支え”になれば……

…俺に出来ることは少ないが
少しでも、役に立てて欲しい

彼の声が、僅かに震える

────それでも

真っ直ぐに俺の目を見て 言葉を紡いだ

短剣が、俺の手に収まる

冷たく けれど不思議と、安心する重みだった

道具としての重みじゃない

────これは、願いだ

「守りたい」と願い続けた 先人たちの“祈りの結晶”だった

俺は目を伏せて それを胸元にそっとしまう

“決して忘れない”

この守刀が どれだけ、俺を奮い立たせてくれるかを

 

……大切に、します

やっと出た声は 酷く、掠れていたが────

銀さんの父親は 静かに頷いた

その日 俺はようやく、ひとつの過去と向き合い また “次”の未来へ歩き出す決意をした

………“過去”に戻って、8年と少し

数百年、数千年という時を超え ようやく辿り着いたこの場所で──── やっと、 一人目の教え子を救うことができた

その事実が、背中を押してくれる 安堵と共に、静かな決意が胸に芽吹く

────だが、これで終わりじゃない 救うべき者たちが 守るべき者たちが まだ、“未来”にいる

────────“次”まで、後4年

それまで俺たちは 厄災を狩り続ける旅に出る 誰かの“絶望”を“希望”へと 変えるために

胸元の“守刀”が、 静かに語りかけてきた気がした

「────迷うな、恐れるな」 「お前は、一人ではない」 ────と、

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