テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
突然だが、教室は水槽に似ている。
Mr.すまない
僕は自分の教室で静かに、教科書を読んでいた。
もう近日に迫った期末テスト。
このテストで赤点を取ると、居残りになるなど色々とめんどくさい。
そんな事を考えながらも、勉強に励む日常だった。
何も代わり映えしない日常に飽き飽きしてきていた僕だった。
僕の名前はすまない。
15歳。現在3年2組。
勉強中、僕は3年2組の後ろから2番目の席で、ぼんやりと水槽を眺めた。
朝の光が窓から差し込み、机の表面を白く反射させる。
生徒達はその光の中を、色とりどりの魚のように泳いでいる。
笑い声、椅子を引く音、紙の擦れる音。
それらは水の中で歪み、遠く、鈍く聞こえた。
ーー硝子は、ひび割れている。
誰も気づいていないだけで、この教室はとうに壊れている。
僕だけが、それ知っていた。
Mr.赤ちゃん
赤ちゃんが教室に飛び込んでくる。
勢いよく自分の席に鞄を投げた。
明るくて、無鉄砲で、いつも太陽の中心にいるような存在だ。
Mr.赤ちゃん
Mr.赤ちゃん
Mr.すまない
少々冷や汗をかきながら、僕は言った。
Mr.赤ちゃん
Mr.ブラック
隣の席のブラックが小さく注意する。
敬語を崩さないのは癖のようなもので、その声は不安で常に少し震えていた。
見てのとおりだが、彼は不安症なのだ。
Mr.銀さん
銀さんが間に入って笑う。
彼はいつも保安官みたいに皆に優しく微笑んでいる。
やんちゃな皆が上手くやれてきているのは銀さんのお陰と言っても過言ではない。
僕はそのやりとりを間近で見ながら、ノートを開いた。
ページは真っ白だった。
何を書こうとしていたのか思い出せない。
いや、最初から何も書く気などなかったのかもしれない。
Mr.ブルー
微かな、小さい声で呼ばれた。
隣の列、前の席に座るブルーが、こちらを振り返っていた。
Mr.ブルー
Mr.すまない
Mr.ブルー
ブルーの指が、机の上をなぞる。
一、二、三、と見えないものを数えるように。
僕は教室を見渡した。
三十人。いつも通りの人数。欠席者はいない。
Mr.すまない
そう答えると、ブルーは少しだけ安心したように息を吐いた。
Mr.ブルー
その表情を見て、僕の胸の奥は、わずかに痛んだ。
理由はわからない。ただ、嫌な感じがした。
朝のホームルームが始まり、僕らのクラスの委員長、カスミさんが前に立つ。
カスミ
明るくて、通る声。
学級委員長らしい、堂々とした姿。
カスミ
カスミ
ざわ、と教室が揺れた。
「えー、あそこ近道なのに」
「夜とかちょっと怖いよね」
「幽霊出るって噂、まだあるの?」
誰かが笑い、誰かが冗談で流す。
僕の背中に冷たいものが走った。
ーー旧校舎。
一年前の記憶が、潤った水の底から浮かび上がる。
雨の音。湿った空気。割れた窓。
そして、誰もいなくなった教室。
思い出は刃物に似ている。 見ないようにしていても、 ふとした拍子に、皮膚を裂く。
そんな言葉が頭をよぎった。
コメント
4件
すげぇ!新作!! 初手から語彙力高ッ…
待ってました新連載だ⋯!!⸜(*ˊ꒳ˋ*)⸝ なんかわくゝとはらゝ混じってワァァァァァァァァァァァァってなってます!!!(???)