校舎の窓がオレンジ色に染まるころ、忘れ物を取りに教室まで行くと、教室には心逢と錯綜だけが残っているのが見えた。 黒板消しの粉が、夕方の光に舞っている。 教室には入らず、少し中を眺めようと思った。
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そう心逢が不思議そうに聞くと、錯綜はノートを閉じて少し困ったように、口元だけで笑った。
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“なんとなく”が同じだったのか、心逢はそれ以上聞かなかった。 チャイムはもう鳴り終わっていて、私のいる廊下側からは誰かの笑い声が遠くに聞こえる。 二人が並ぶ教室がやけに遠い世界みたいで、この教室だけ時間が遅れているみたいだった。
錯綜が立ち上がって、窓を少し開ける。 風が入ってきて、カーテンが揺れた。
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急にそんなことを言われたからか、心逢は目を瞬いた。
ca
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見てた、の一言に心臓が跳ねる。 錯綜が見てたのは私でも黒板でもなくて、心逢だった。
二人が揃って教室を出ようとしたので、慌てて隠れる。 夕焼けが校舎を包んでいた。 靴箱の前で、錯綜は少しだけ立ち止まる。
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それは誘いというより、確認みたいな声だった。 心逢は一瞬迷って、それからうなずいた。 遠くから見る、2人が並んで歩く帰り道。 会話は途切れがちだったけど、沈黙は不思議と苦しくなさそうで。
信号待ちのとき、彼が小さく息を吸った。
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紙袋は夕焼けで赤くて、どこまでが光でどこからが本心かもわからない。 でも、胸の奥がじんわり苦しくなった。
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2人には、それだけで十分だった。 信号が青に変わって、二人が歩き出す。 恋はまだ名前を持たないまま、放課後の中に静かに始まっていた。 私を置いて。
1つだけ理解した。
私は部外者。
2人の間に入れるのはきっとあの人くらいだろう。
私が零した溜息は、光に溶けていった。






