シャーク
息が苦しくて目頭が熱くて頭がガンガンして心がずきずきしてめまいがしてはきそうだ。 くるしい、いたい、つらい、もういやだ。 どうして俺がこんな目に遭ってんだよ。 そもそも、俺はシャークじゃない。ただの高校生だったのに 轢かれて死んだ挙句転生先で傷付けられるとか…
シャーク
理解したと思っていた。 もし何かあってしまえば、さっきのような仕打ちを受けることになると。 でもなんにもわかってなかった。 人から嫌われることがこんなにも苦しいなんて、痛いなんて。 人から誤解されるのが、こんなに悔しいなんて、辛いなんて。
シャーク
暗くて広い空間の隅でしゃがみ込む。 これからもこんなことが続くのか?こんな恐怖と戦いながら生きていかなきゃいけないのか?死ぬのがほぼ確のこの世界で、元の世界に戻れるかもわからないここで? そんなの、そんなのもういつ死んだって___
?
シャーク
少し遠くから、人の声がした。 コツコツという足音がこっちに近付いてきている。 まずい、誰か来る。
?
すぐに立ち上がって逃げたいのに、足は震えるばかりで機能しない。 どうにか壁を使って立ち上がった瞬間 パチン!
軽快な指鳴らしの音と共に一気に周りが明るくなる。 眩しさに目を瞑って次開けた時には
きりやん
シャーク
金髪に金色の目を持った攻略対象キャラ_きりやんが立っていた。 今日はことごとく運が悪いらしい。 まずい、
シャーク
きりやん
逃げようと俺が足を踏み出すよりも早く、さっき俺がアイツらにしたみたいに腕をがっしり掴まれる。 力はそこまで入っていないけど、離さないという意思がひしひしと伝わってくる。
きりやん
シャーク
俺がシャークだと気付いた瞬間に冷たくなっていく声色。 きりやん。 お前は五人の中で唯一、俺が主犯だって最初から気付いてたんだよな。Nakamuみたいに情報収集したんじゃなくて、いたずらのつもりで仕掛けた映像記録魔術に俺が主人公をいじめてるのが映っていたんだ。
『俺がちょっときっかけ作っただけでこの仕打ちとか、お前、めっちゃ嫌われてんじゃんw』
脳裏に自分のセリフが浮かぶ。 でもきりやんは優しいから。なんかの間違いかもって人を疑いきれてなくて、Nakamuみたいに態度にはあまり出ていなかった。 それなのにここまで態度に違いが出るなんて。 もしかしたらNakamuから聞いてしまったのかもしれない。 聞いてしまった?ちがう、想い人がいじめられてたなら情報を共有するのは当たり前で悪い事じゃなくて、あれ、でも俺って主人公をいじめたんだっけ。 ちがう、よな。おれはただあいつらから主人公を救っただけで、今はいじめをしてなくてでもむかしはしていてだから
きりやん
また、まただよ。 そうやって皆俺を疑うんだ。 俺はやってないのに。俺じゃないのに。
お前は何も知らないくせに…!
シャーク
きりやん
シャーク
神様は意地悪だ。シャーク以上に性格が終わってる。 一回車で轢いて殺してからこんな場所に転生させるなんて。 もし転生するならもっと平和なところに生まれたかった。 そんな運命にも、シャークにも、弁解できない自分自身にもイラついて情けなくて、その声色がやっぱり怖くて、ゲームで温かい一面を知っているからこそ、余計に苦しくてまた涙が止まらなくなる。 そんな俺を黙って見つめているきりやん。 なんだよ、なんか言えよ。
きりやん
シャークかと言われれば、違う。……と言いたいけど、実際俺はシャークとして生きてるわけだし、そうなのかもしれない。
シャーク
未だ止まらない涙と荒い呼吸を抑えながら、そう聞き返す。
きりやん
シャーク
きりやん
想い人をいじめていた張本人で全ての元凶。 そんな凶悪な男が目の前で泣き崩れている。 きりやんからしたらものすごく異様な光景だろう。 言っても、いいかもしれない。 むやみやたらに話すのは気が引けるが、きりやんは攻略キャラ…ゲームに直接関係するキーキャラだ。 何かしら現状が変わる可能性が高い。
シャーク
記憶喪失になったこと、先ほど主人公を助けたらNakamuに誤解されて酷い態度を取られたこと、過去の自分がやったことは知っているが、それでも辛くて仕方なくてここへ逃げてきたこと。 話している途中にまた呼吸が荒くなって倒れそうになったから、きりやんの手を借りて近くのソファへと移った。 どんなことがあったっていじめていた過去は変わらないのに、背中をさすって静かに話を聞いてくれるきりやんは、本当にどこまで優しいんだと思い、じわりと目がにじむ。
きりやん
シャーク
ずる賢く16年間もクズでゴミな人間として生きてきた奴の言葉だ。 無条件で信じるのはそれこそ主人公のレイぐらいだろう。
きりやん
シャーク
きりやん
シャーク
あんまり俺にばっか構ってると、新しいフラグが建ってしまうかもしれない。 そんな危機感に交じって浮かぶ、優しい彼への特別な思い。 手が大きくて暖かい、安心する。薬草と消毒液の匂いが混ざった、”きりやん”の匂い。
ちょっと優しくされただけなのにな。 分かっているけどどうしようもない。
きりやん
さっきまでとは全く違う、優しい声にとても安心する。 もちろん完全に信じた訳ではないと思うけど、今は流石に危害を加えないと判断したんだろう。
シャーク
地獄にいきなり光が差し込んだんだ。 少しぐらい甘えたって罰は当たらない…よな?
?
遠くからきりやんを呼ぶ声がする。 その声は着実にこっちに近付いてきており、だんだんと大きくなっていく。
きりやん
その声に、ハッと現実へ引き戻された。
シャーク
きりやん
勢いよく立ち上がって声がする方とは反対の出口から部屋を出る。 その際風にあおられて釣り看板が揺れ、初めてここがカフェテリアだったと知った。
シャーク
きりやん
きりやん
シャークは何か誤解している気がする。 それにやっぱりどこかおかしかった。 記憶喪失ってのは多分本当だろうし、Nakamuの態度に本気で傷付いているように見えた。 もちろんだからって一気に気を緩めたりはしないけど、今までよりも少しだけ警戒を緩めてもいいのかもしれない。
?
きりやん
?
俺とシャークが座っていたソファを後ろから覗き込む形で見てくる背の高い男。 俺やレイと家柄が近い貴族の一人、Broooockだ。
きりやん
broooock
きりやん
broooock
嘘をついたってどうせバレるからと正直に話せば、あからさまに機嫌が悪くなる。 Brooookは恐らく、レイのいじめの発端がシャークだって知らない。 でも最近の態度やシャークの良くない噂から何となく察しているような気がする。
きりやん
疑い深いぶるーくが信じるなんて思ってない。 でも、もうあんな顔で泣く彼はあまり見たくなくて。心の隅でいいから知っておいて欲しくて、彼が記憶喪失になったということを伝えた。
broooock
きりやん
broooock
んじゃ、と手を振ってまたパーティー会場へと戻っていくぶるーく。 ……いや何しに来たんだよ。
broooock
コメント
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めっちゃ神作ですね✨ 続き待ってます!