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第1話 - あ

2023年08月27日

#スカッと

田中俊樹

ケンタ

お疲れ！

マヤ

お疲れ様です！

ケンタ

今日、雨だったな～

ケンタ

ダンス部の練習ない日は自主練してて偉いよな

マヤ

体育館裏は音楽かけてもそこまで人に聞かれないし、

マヤ

屋根もあるから練習場所にちょうどいいんです！

ケンタ

そっかそっか！

ケンタ

俺は体育館裏で音楽が聞こえると、

ケンタ

「あ、マヤちゃんが練習してるな～」ってすぐわかるけどね

マヤ

すみません！練習中に邪魔しちゃって...

ケンタ

邪魔なんて、そんなことないよ！

ケンタ

むしろ、「俺も頑張らなきゃ」って奮い立たされるよ

ケンタ

本当に、いつも元気貰ってる

マヤ

私も、この前ケンタ先輩が練習試合しに行ったとき、

マヤ

試合見てすごい迫力だった、って思いました！

マヤ

シュート決めた時、めちゃくちゃカッコよかったです！

ケンタ

あ、練習試合見に来てくれたの！？

ケンタ

聞いてなかったよ～

マヤ

たまたま、部活が休みで、友達と見に行きました

マヤ

常に周り見て動いていたし、さすがキャプテンだな、って思いました

ケンタ

そんなに俺の子と見てくれてたの？

マヤ

え、えっと...すみません、なんか気持ち悪いですよね...

マヤ

ストーカーみたいで...

ケンタ

いや、むしろ嬉しいよ

ケンタ

「頑張れ～！」ってマヤちゃんっぽい声がスタンドから聞こえてきてさ

ケンタ

もしかしたら来てるのかな～って思ってたけど、気のせいじゃなかったみたいだね（笑）

マヤ

私、そんなに超え大きかったですか！？恥ずかしすぎます...

ケンタ

そんな恥ずかしがることないよ～

ケンタ

マヤちゃんは俺の中で一番の応援団だからね

ケンタ

これからも、応援よろしくね

マヤ

はい！もちろんです！

ケンタ

俺が体育館裏で部員に隠れて筋トレしてるのを知ってるのは、多分マヤちゃんだけだし

ケンタ

努力してるところを見てくれてる子に、良いところ見てもらえた方が嬉しいもん

マヤ

先輩は、本当に倍は筋トレやりますよね

マヤ

尊敬してます

ケンタ

俺さ、バスケのスポーツ推薦で高校に入学して、

ケンタ

１年生で最初の大会からレギュラーメンバーに選ばれてここまで来たんだ

ケンタ

だからよく「もともと才能あるんだろ」とか言われるけど、そんなことないから

ケンタ

中学の時も、人一倍練習してきたから今があるんだよ

マヤ

本当に、努力家ですよね...見習います！

ケンタ

努力しているところ、一番見てくれてるマヤちゃんに試合見てもらえるのが、

ケンタ

一番うれしいよ

マヤ

これからも、いっぱい応援します！

ケンタ

うん、ありがと

ケンタ

そういえば、今度の文化祭、ダンス部で出し物やるんだよね？

ケンタ

文化祭のオープニングで全校生徒、体育館に集まるじゃん？

ケンタ

その時のステージ発表で

マヤ

良く知ってますね！

マヤ

私もその発表のために、毎日練習してるとこです！

ケンタ

マヤちゃんが練習してるとこ、こっそり見に行こうかな～

マヤ

当日までのお楽しみなので！

マヤ

私も、あまり見られないように今は家で主に練習しています！

マヤ

今日は、少し見られちゃいましたが...

ケンタ

俺も、当日まで楽しみにしておきたいから、聞こえてくる音楽だけ聴いて、

ケンタ

マヤちゃんが頑張っているところ想像しておくよ

ケンタ

パフォーマンスやる、って教えてくれたサラに感謝だね！

ケンタ

今回、サラがセンターやるらしいじゃん？

ケンタ

あいつも、練習頑張ってる、って言ってたしね、楽しみだよ

マヤ

えっ？サラ先輩がですか？

ケンタ

うん？そうだけど？

マヤ

サラ先輩が、自分がセンターを踊る、ってそういったんですか？

ケンタ

そうだけど...あれ？俺の勘違いだったのかな？

マヤ

あ、いえ！何でもないです！

マヤ

今のは気にしないでください

ケンタ

そ？じゃあね、また明日～

マヤ

おやすみなさい

～数分後～

マヤ

こんばんは

マヤ

あの、少し聞きたいことがあるんです

サラ

どうしたの？

マヤ

あの、文化祭でのダンスパフォーマンスのことなんですが、

マヤ

センターは私がやる、っていうことで変わらないんですよね？

サラ

え？どうしたの？いきなり...

マヤ

あの、ケンタ先輩からサラ先輩がセンターを踊る、っていう風に本人から聞いた、って言われて...

マヤ

今回のセンターポジションは私のはずですが、私の知らないところで変更があったのかな～なんて...

サラ

明日のミーティング前にマヤに直接話そうと思ったけど、

サラ

今言うね

サラ

センターのポジション、変わってほしいの

マヤ

え？

マヤ

本番まであと5日ですよ？

マヤ

今更変更だなんて...

サラ

正確に言えば、私と交代せざるをえない、ってことにして

マヤ

どういうことですが...？

サラ

私ね、ケンタのことが好きなの

マヤ

え？

サラ

週末はダンス部の発表や大会があるけど、バスケ部で忙しいケンタにはなかなか見てもらえないし、

サラ

今回のパフォーマンスが私の踊っているところ、見てもらえるいいチャンスなの！

サラ

だから、この機会、私に譲って

サラ

マヤなら、分かってくれるよね？

マヤ

サラ先輩はいつも優しくて、頼れる先輩だと思っていました

マヤ

でも、そんな理由でセンターを譲ってくれなんて...

マヤ

信じられないです

マヤ

この際、私も言わせてもらいますが、センターは譲れません

サラ

なんで！？

マヤ

あと、私もケンタ先輩が好きなんです

サラ

ちょっと待って...

サラ

私がケンタのこと、好きなの知ってたよね？

マヤ

知ってました

マヤ

でも、ケンタ先輩に私が頑張っているとこと見てもらえて、

マヤ

「この人は私の中身を見てくれる人だ」って思ったんです

マヤ

それで気づいたらケンタ先輩しか見てなかったんです

サラ

何それ...

サラ

しかも、いつも間にケンタのLINE知ってんの！？

サラ

酷くない！？応援してくれると思ったのに！

マヤ

ごめんなさい...

サラ

大人しそうに見えて、意外と下心ある奴だったんだね

サラ

もう信用なくした

～翌日の部活後～

マヤ

サラ先輩！今日のミーティングで言っていたこと、どういうことですか？

マヤ

なんで、コーチや他の部員も私がケガしてセンターポジションを譲る、

マヤ

っていうことになったと思っているんですか！？

サラ

そっちが普通に引き下がってくれればいいの！

サラ

空気読んでよ！分かるでしょ？

マヤ

分かりません...

マヤ

私、この文化祭だけじゃなくて、常にダンスのスキル上げたくて、

マヤ

上を目指したくて練習を頑張ってきたんです

マヤ

それを...こんな形で奪われたくないんです

サラ

いいじゃん

サラ

マヤは経験者でダンス上手いんだし、

サラ

まだ1年生だしこれからもチャンスあるでしょ

マヤ

ダメなんです

サラ

は？

マヤ

ケンタ先輩に見てもらいたいんです、

マヤ

私のパフォーマンス

サラ

は～もう無理

サラ

今までケンタと仲良くしてるから私もあんたを助けてきたけど、

サラ

もう、そんな必要ないみたいだね

マヤ

え？なんですか？

サラ

あんたがケンタと仲良くなり始めたから、

サラ

私があんたに近づけばケンタと話せるチャンスが増えると思ったの

サラ

でも、もうあんたのこと、使う必要ないわ

サラ

私に協力してくれないなら、力づくでも自分からチャンスは奪いに行くから

～文化祭の発表後～

サラ

ねえ、ケンタに何か言ったの？

マヤ

え、何がですか？

サラ

発表が終わった後呼ばれて、

サラ

「後輩に仮病を装わせてセンターポジションを取るなんて最悪すぎだぞ」って言われたの

サラ

誤解を解こうと思ってメールしたら

サラ

「話す相手が違うだろ」ってきてそこから返信しても既読無視だし、

サラ

絶対、あんたが余計な事言ったんじゃないの！？

マヤ

私じゃないですが...誰が教えたのかは知っています

サラ

は？誰？

マヤ

部員の子、みんなです

マヤ

みんなが、コーチに話してくれました

マヤ

「サラ先輩が自分の好きな相手が舞台前で見るから、

マヤ

センターポジションでよく見れられるように、マヤちゃんに仮病を使わせて

マヤ

センターポジションを奪い取った」って...

サラ

何、その言い方！

マヤ

その言い方、って本当のことじゃないですか

サラ

あんたは、いつからそのこと知ってたの！？

マヤ

発表の後です

マヤ

場の雰囲気と発表を台無しにしたくなかったからこんな形になってごめん、って

マヤ

言われました

マヤ

部員の一部の子が、私が先輩から交代するようにLINEで頼まれた後、

マヤ

部室でもそのことを話している時に、一部の先輩が聞いていたみたいです

マヤ

それで、ケンタ先輩に伝わったみたいですよ

サラ

何それ...

サラ

意味わからない、今頃裏切るなんて

マヤ

私たち部員は、先輩が思っている以上にダンスに情熱持ってます

マヤ

みんな、一生懸命練習しているし、私も自主練してより良いパフォーマンスを見せたい、

マヤ

って思って文化祭の練習をしてきました

マヤ

無理やりセンターポジションを取ろうとするメンバー何で、ダンス部員じゃないです

サラ

あんた、ちょっと生意気すぎるんじゃないの！？

サラ

自分の見方が増えたからって、いい気にならないでよ！

マヤ

別に、味方が増えたとか思ってません

マヤ

みんな、もとからダンスに熱心な仲間ですよ

マヤ

今回のことで、先輩だけが不誠実なんだ、ということがはっきり分かりました

マヤ

あと、コーチからの伝言ですが...

サラ

何？まだ何かあるの？

マヤ

「しばらく部活には戻ってくるな」の一言です

サラ

え？

マヤ

「後輩を利用するような部員はうちの部にはいらない」だそうです

サラ

待ってよ！

サラ

2年生として最後の個人パフォーマンスの大会が近いの、知っているでしょ？

サラ

その大会でいい成績を残せたら、大学推薦の大きなポイントになるの！

サラ

私が行きたい大学の推薦枠は少ないし、部活での成績は貴重なポイントなの

サラ

だから...

マヤ

だから、どうしましたか？

サラ

お願い、

サラ

それには出してくれるように、私からコーチに話すときにサポートしてくれない？

マヤ

そんな、また私を利用するつもりですか？

サラ

利用とか、そんなんじゃなくて！

サラ

マヤに頼み事するのはもう、これで最後にする

サラ

もう、関わらないようにする...だから...

サラ

最後のお願い、聞いてほしいの

マヤ

お願いは、もう聞きたくないです

マヤ

それに、大学の推薦枠は取れなくても勉強の方で頑張ればいいですよね？

サラ

だって、私の成績知っているでしょ？

サラ

次の成績で合計であと150点くらいは上げないと難しいの

マヤ

その運命を引き寄せたのは、先輩自身です

マヤ

頑張れば、不可能な数字ではないんですよね？

サラ

でも、ほぼ不可能に近いの！

サラ

150点も上げるなんて、私寝れないじゃない

マヤ

もう、帰宅部ですし、今まで部活をしていた時間が空きますよ？

マヤ

不可能ではないですよね？

サラ

帰宅部にはなるけど、でも...

マヤ

とにかく、もう先輩の力にはなれません

マヤ

残念すぎます

サラ

待って！お願い！

マヤ

大学受験、頑張ってくださいね

～後日談～

マヤ

サラ先輩は一般推薦で死亡していた大学を受験したそうですが、成績が振るわず浪人しています

マヤ

3年生になった私はというと、志望している大学の推薦枠を狙って部活に邁進中です

マヤ

もともと、勉強は人波程度にできますがより可能性を広げるために、

マヤ

彼氏のケンタ先輩と図書館デートをしながら、勉強を教わっています

マヤ

ケンタ先輩が通っている大学に一緒に通えることを願って、

マヤ

今日もダンスと勉強の両立を頑張っています

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田中俊樹

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