放課後の騒がしい玄関口でいきなり周也から
周也
と声をかけられて、ドキッとした。
律
周也
上履きを脱ぎながら周也が言って、靴下にぽっかり空いた穴から、 やんちゃそうな親指をのぞかせた。
その指をスニカーにおさめても、なかなか歩きだそうとしない。
どうやら、一緒に帰る気のようだ。
小4から同じクラスの周也。
家も近いから、周也が野球チームに入るまでは、よく一緒に登下校をしていた。
なのに、今日の僕には、周也と2人きりの帰り道が、果てしなく遠く感じられる 。
モタモタと靴を履き替えて外へ出ると、5月の空はまだ明るく、グラウンドに舞う砂ぼこりを西日がこがね色に照らしていた。
周也
周也
周也
周也
周也
周也
周也の話があちこち飛ぶのは、いつものこと。
なのに、今日の僕にはついていけない。
まるでなんにもなかったみたいに、周也は、いつもと変わらない。
僕だけがあのことを引きずっているみたいで、1歩前を行く紺色のパーカーが、どんどんにくらしく見えてくる。
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