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お久しぶりです🙇🏻♀️ほんとは前投稿したストーリーの三日後にはほとんど完成していたのですが、修正に修正を重ね、気づけばこんなに経ってました…長くなってしまったのですが、最後まで読んでいただけると幸いです。 ちょっとした解説もこのコメントの返信に置いておきます。長くなりそうなので、読まなくても大丈夫ですが、伏線は回収していけると思います🙇🏻♀️
ああっ、もう、これ…読んでて胸が苦しくなったよ…。 蘇枋の「枯れた花は二度と元には戻らない」って言葉がずっと心に刺さってる。桜が総代になった後の屋上で「俺、決めてるんだ」って言うシーンは涙腺崩壊した…。あいつ、ほんと全部抱え込んで一人で消えちゃってさ…。でも桜が前に進んでて、ちゃんと蘇枋のこと想い続けてるのが救いだよ。花びらキャッチしたとこ、最高に切なくて綺麗だった。続きが気になるけど、この1話だけでしっかり沁みた。素敵な作品をありがとうございます。
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どっかの誰かさん。
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これは、誰かの後悔のおはなし。
いつもどうりの町の見回り。 活気づいた商店街、見回り中の風鈴生の話し声に、風鈴の優しげな音が商店街に響いていた。桜の足元には、枯れきった花びらが落ちていた。春になれば、新しく綺麗な花が咲くだろうか。
美味しそうな匂いに腹の音がなりそうになり腹を抑えた桜は、ちらりと横目に蘇枋を盗み見た。
蘇枋
楡井
蘇枋と楡井は、見回りしながら喧嘩のことについて話していた。勉強熱心な楡井に、その思いに精一杯答えようと蘇枋が答える。 桜にとってこの日常がいつもどうりの日常だと定着したのはもう少し前のはなしだ。
商店街の人達の手伝いをしながら、なんとか1日をやり過ごす。 あと少しで見回りの時間がおわる、という時に限って事件はおこるもので。
先程まで明るく賑やかだった商店街。 近くで悲鳴が聞こえたかと思えば、何か硬いものがどこかにぶつかる音がした。 瞬間、桜、楡井、蘇枋は一気に駆け出した。
桜が先陣を切って飛び出し、バットを持ってニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かびながら、店の看板や、スプレー缶を振りまき落書きをする輩に、力強く飛んだ後足蹴りを交わした。1人をのしたあと、呆気にとられた輩をまた2人殴り倒した。
突然の事で順応できていない輩を3人倒した後、こちらになオフを向け飛び出してきた奴が、突然吹っ飛んだ。
蘇枋
楡井
口角を上げた桜は、背中を任せ、リーダー格の男の元へ一気に距離を詰めていった。 後ろでは桜の元へ行かせまいと、蘇枋が重心をずらし相手を転ばせ、楡井は町の人の避難誘導をしながら、向かってくる的をダンゴムシの様に丸まり転ばしていく。
入学した頃とは違い、ずっと頼もしくなった楡井に、笑みがこぼれる。 蘇枋だって、あの頃から強かったがもっとずっと動きにキレが出ている。 あの時から今は二度目の冬。もうすぐ3年生になる桜達は随分と強くなった。あの時よりもずっとだ
蘇枋達がほとんど敵の不良をのしたとに、桜もお得意なアクロバティックな動きで自らの足をリーダー格の男の顎に思いっきりぶつけていた。相手が気絶と同時に倒れ、風鈴側の勝利が決まった。
楡井
蘇枋
桜
楡井達の賞賛に、ほんのり頬を赤く染めながら、首筋をかいていた。 そうしている間、ぞろぞろと商店街の人達が集まっていき、我先にとお礼やお店のものを渡された。
たくさんの人に囲まれ、ワイワイとしている間、桜はちらり、いつのまにやら自分達から1歩離れた場所にいる蘇枋をみた。
蘇枋の様子がいつもとおかしかった。それに気づいたのはきっと桜ただ1人だけ。 風鈴に来てからもうすぐ3年まだ春には遠く、始まったばかりの冬の風がツンと鼻の奥を刺激した。
蘇枋の動き、頭の回転速度、いつもの胡散臭い笑み。全部全部普段と変わらないはずなのに、どこかその様子に桜は違和感を感じていた。
蘇枋を知っているものは、多分それを疑わない。完璧で、隙を見せないのが蘇枋隼飛だからだ。誰も違和感を持たないだろう。桜だって、自分が持っている違和感がおかしいことくらい分かっている。普段と変わらないことがおかしいだなんて、自分でもうまく説明はできなかった。
まるで全て練り上げられていて、全くのほころびも見せず日常を演じているような、そんな気がしたのだ。この2年で、蘇枋の人間らしい面を沢山見てきた。意外と顔に出やすいことも、動揺を隠しきれないばめんも、たくさん。だからここ最近の蘇枋はおかしかった。それらが全くないほど、完璧だったのだ。
だから桜は蘇枋をよく見て気にかけるようにした。それが今自分にできる最大限の寄り添い方だと。踏み込んだってきっと蘇枋は上手く逃げてしまうだろうから。桜はここ2年で蘇枋についてだいぶ理解を深めていた。
蘇枋
桜
先程まで1歩引いたところにいたはずの蘇枋が、気づけば桜のすぐ隣まで来ていた。蘇枋からはほんのり花の香りがした気がした。なにかの紅茶の匂いなのだろうか。
蘇枋
桜
蘇枋
結局見ているのも全て蘇枋にはお見通しのようだが。 逆に桜がからかわれて遊ばれてしまった。
蘇枋
蘇枋
楡井
桜
結局、蘇枋はからかうだけ桜をからかって逃げて言ってしまった。隠し事が下手な桜が蘇枋に勝てるはずがないのだ。きっとなにかに勘づいたのだろう。 それで逃げたってことは、やっぱり蘇枋は何かを隠しているのかもしれない。
そのことに触れていいのか、桜は未だ分からないでいた。人には知られたくないことのひとつや2つある。桜がいちばんよくわかっていた。だから聞けない、踏み込めない。
楡井
桜
楡井
街の修復を手伝ったあと、楡井と1度風鈴に戻り、その場で解散した。その間、桜がずっと浮かない顔をしていたことに、楡井は気づいていた。
わかった。とは言った。言ったが……ついて行かないとは言っていない。桜はあんまり良くは無いと分かっていても蘇枋を追いかけた。このままじゃ一生腹を割って話せないと思ったから。
桜が教室の外へ出た時、蘇枋の姿はもうなかった。なかったが、桜が向かう先はもう決まっていた。
先程鍵がかかっていた扉に指をかけた。 少し立て付けの悪い扉が、ガラリと音を立てて開いた。
あれから数日、蘇枋の様子は今までと何ら変わりなかった。胡散臭い笑顔をして、時折誰かをからかって、1歩引いたところにいる。
桜
蘇枋
桜
桜
蘇枋
真面目な目で言うものだから、嘘だろうと思っていてもだんだん本当かもしれないという気になってくる。
桐生
桜
蘇枋
高らかに声を上げ笑ったあと蘇枋は呼ばれてるから。とフラり教室から消えていった。
桜
桜
楡井
桜
深い赤をした瞳が真剣そのもので、 本当のことだろうかと信じそうになってしまった。自分でもあの話を信じるのは冷静になって考えれば馬鹿だろうと思った
話を聞いていた級友達にもさすがあんな雑な嘘ひっかからないだろうと笑われてしまった。なんだか居た堪れなくて、真冬の中、顔を赤くしながら桜は蘇枋に続き教室を飛び出した。
桜
それもこれも全部蘇枋のせいだ。 毎日の様にあいつについて悩むのも、 クラスの奴らにからかわれるのも、全部。 もうこの際勢いに任せてあいつについての違和感を問いただしてみようか。うじうじと悩むのも自分らしくない。
人には聞かれたくないことの1つや2つある。が、踏み込んでみないと何も変わらないのも事実だ。教室を飛び出したはいいものの、行くあてもないのでフラフラ蘇枋を探すことにした。誰については知らないが、呼ばれたと言っていたから、とりあえず屋上に行ってみることにした。
そう思っていたのに、桜の足は屋上へ進む階段とは別の場所へ向かっていた。 甘い匂いを辿るように。
桜
扉に手をかけたところで、ガチャンという音が鳴った。どうやら鍵かかかっているらしい。
そうこうしているうちに予鈴がなり始め、桜は結局蘇枋と出会えぬまま、教室へ踵を返した。
あのあと、桜が教室に戻ってから少し経った後に蘇枋がフラりと戻ってきた。 いつもどうり胡散臭い笑顔を顔に貼りつけており、特にクラスメイト達も、呼ばれたと言っていた蘇枋が遅れたことに関して気にしてはいなかった。
桜
蘇枋
桜
蘇枋
桜
勇気をだして聞いてみたが、どうやら予定があるらしい。これも嘘かもしれないが。 楡井達も、ちょうど蘇枋を遊びに誘おうとしていた所なので、残念がっていた。
蘇枋
蘇枋
蘇枋
桜
蘇枋が集まりに来ないのは少なくはない。 マッスルパワーへ行こうと言われた時は眉を八の字にしてみるからに嫌そうに断っていた。本当に行けない時は申し訳なさそうにしていた。今のはそれだ。楡井達は残念がってはいたが、特に気にした様子はなく、桜さんはどうですか?と聞いてきた。
桜
桜は出ていった蘇枋を追いかける様に教室を出ていった。
桜
その場には小さな背中があった。床に丸まって、苦しそうに咳き込んで、桜の声すら聞こえていないようだった。
桜からは、赤い髪と、丸まった背中しか見えない。こんな姿、初めて見た 驚いて、しばらく呆気に取られていると、少し落ち着いたのか、赤い瞳がこちらをみた。
桜の姿を視界に捉えた瞬間、そのあかは大きな夕日のように見開いて、驚いた顔をしている。
そのまま、しんと沈黙が流れた。 どちらも1歩も動けずにいた。
桜の視界の端で、何やら色鮮やかなものがうつった。蘇枋のすぐ側にあるそれは甘い匂いがした気がする。
桜
思わず声を出したことで、時が動き出したかの様に、蘇枋は体制を立て直した。
蘇枋
桜
桜
蘇枋
蘇枋は、本当に花粉症なのだろうか。少なくともこの2年一緒に花を眺めたりしていたが、こんなに激しく咳き込んだ様子も、くしゃみをしている素振りもなかった。それとも、今までもこうやって隠していたのだろうか
蘇枋は先程の驚いた様な顔と打って違い、距離を置こうとする様な、胡散臭い笑顔で、淡々と桜の質問に答えて言った。
桜
蘇枋
桜
蘇枋
何を言っても今は全て蘇枋にはぐらかされてしまうだろう。けれど桜はなんだか嫌な予感がしていた。暑くもないのに一筋の汗が首筋を辿った。
桜
蘇枋
蘇枋
桜
蘇枋
蘇枋
桜
まるで早く会話を負わされたいですと言わんばかりに、蘇枋は早口に喋った。それを何とか食い止めようと、桜は蘇枋の肩を掴んだ桜の声は廊下にまで響いているだろう。それほど必死に叫んでいた。
蘇枋に近づくことで、床に落ちていた花びらがよく見えた。楡井の頭の色と同じような色の花に、赤い花、この前桜が見た茶色く枯れてしまった花とは似ても似つかない鮮やかな花びら達。確かにこの季節にこんなに綺麗なたくさんの花が咲いているのは珍しいだろうな、そう思った。
蘇枋は落ちていた花びらを思いっきり踏みしめ、捻り潰す様に靴先でグリグリと潰していた。綺麗な色だったのに勿体ない。
桜
蘇枋
蘇枋
蘇枋と目が合わなかった。最初に驚いて、お互いを見つめあっていた時以外、話をしている間蘇枋とは1度も目が合わなかった。 今だって、自分が踏んだ花びらの方へ視線を落としている。
桜
蘇枋
蘇枋
桜
突然蘇枋が赤い瞳をまん丸にして驚いた顔をした。今日はよくこの顔を見るな、なんて遠い気持ちで思った。暖房のかかっていない空き教室は寒くて、ここに長居したら風邪をひいてしまいそうだった。桜が1つ大きなくしゃみをした後、蘇枋は張り詰めた糸が切れた様に、優しい顔で笑った。
久しぶりに見た、細まった赤い瞳。 その奥には熱いものが揺れていて、こんな真冬でも体温が高くなった。
蘇枋
桜
蘇枋
蘇枋
蘇枋
蘇枋の言うことは、時折よく分からない。 分かりやすく直球に言ってくれればいいのに。蘇枋は、踏み潰していたはなびらから足をどけ、桜の手をゆるくひいて歩き出した。
後ろ髪を引かれる思いで、教室に残った花を振り返る。色鮮やかで、綺麗だっただったはなびらは、蘇枋に踏み潰され、先程までに美しさは消えていた。
蘇枋
蘇枋
桜
蘇枋
桜
桜
蘇枋が苦虫を噛み締めた様に笑いかける。 自分の手が蘇枋の手よりも暖かいのか、蘇枋の手はびっくりする程冷たかった。この真冬の時期だし、そういうものだろうと、特に気を止めなかった。
蘇枋
1歩ずつゆっくりと階段をのぼりながら、蘇枋と思い出話をした。入学したての頃の話、獅子堂蓮とのタイマンの話、国崩大火の話、他にも沢山、階段をのぼりながら思い出を話した。
蘇枋が階段をあがりきったあと、桜があともう少しで1番上に登るというところで、蘇枋が手を離した。こちらを振り向き、いつもよりずっと高い位置にある頭で、桜の顔を覗き込む。
蘇枋
桜
蘇枋
よく分からないことを言ってないで、さっさと手を出して欲しかった。だってあんなにも、冷たくて、体温を少しも感じさせない手だったから。氷の様に冷たい手に、少しでも桜の体温を分けてやりたくて、手を伸ばしてみたが、蘇枋は、腕を後ろに組んでしまった。
蘇枋
桜
最後の階段を上がり切り、屋上との扉を開けた。
びゅうびゅうと、冷たい風が蘇枋と桜の髪を揺らす。あまりの寒さに思わず身震いをした。蘇枋は気にせず屋上を進む。 梅宮が残していった畑や、卓球板、ダーツ、様々なものが残ったままな屋上をぐるりと見渡し、蘇枋はまたこちらを振り返る。
蘇枋
桜
蘇枋
クスクス蘇枋が笑う。それに釣られて桜も笑った。赤いタッセルのピアスが風に吹かれて揺れる。
蘇枋が激しく咳き込み出すと同時に、見てしまったのだ。蘇枋の口から、あの色鮮やかなはなびら達が出てきた所を。
桜
蘇枋
桜
蘇枋
蘇枋
蘇枋はあっけらかんと難しい名前を口にした。聞き覚えのないそれに桜は首を傾げる
蘇枋
桜
桜
病気だと聞いて、いちばん最初に浮かび上がったのは、治るかどうかだった。細かく問い詰めても桜には分からないだろうし、1番知りたいところだった
蘇枋
桜
蘇枋
桜
あまりにも曖昧な返答で、桜は困惑する。少しとはどれくらいなのか。あと数ヶ月か、数日か、...下手をしたらあと何時間かもしれない。そんな桜の困惑を他所に、蘇枋は目を伏せたあと、赤い夕日を見つめる。
桜
蘇枋
蘇枋
桜
夢を見ていた。自分が総代になったとして、四天王にするなら、真っ先に蘇枋が思いついたから。肩を並べて立っていたい相手だったから。そんな淡い夢すら、今ここで砕け散ってしまったのだが。
蘇枋
蘇枋
桜
蘇枋
蘇枋はニッコリ甘く微笑み、桜の言葉を遮った。お前がいい。この続きを、聞くつもりはないのだろう。聞かなくてもわかる、というのが正しいのかもしれない どうしようもなくて、桜は蘇枋の顔が見れなくなってしまって、俯いてしまった
蘇枋
桜
桜
蘇枋
謝られて、やっと実感が湧いた。こいつは、もう長くないんだと、もう一緒には、いてくれないんだと、先程の階段での約束も、もう叶わない事も。
桜
蘇枋
桜
仲間が1人いなくなってしまうと聞いても、桜の目から涙がこぼれることはなかった。泣いても何も変わらない。分かっている、分かっているが、仲間のために涙のひとつも流せない。なんて自分は薄情なやつなのだろう。
蘇枋
最後とかいうなとか、なんで膝枕?とか、恥ずかしいとか、色んな感情が混ざった顔で蘇枋をみた。蘇枋は、わぁ、百面相だぁなんて言いながら楽しそうに笑う。
桜
乗りかかった船だ。どうにでもなれ。ドカッと床にすわり、どうぞと腕を伸ばす。桜が本当にしてくれるとは思わなかったのか、蘇枋は驚いた顔をした後、ありがとうと、そういった。
蘇枋
蘇枋は、あかくそまった空を見上げながら、1年の頃の桜を思い浮かべる。こう思うと、彼も成長したのかな。少し伸びた身長に、大人に近づく顔立ち。結局蘇枋の身長はこされることはなかった。蘇枋の成長はここでとまる。だからきっとこれから越されて行ってしまうのだろう。
冷たい風に吹かれてあかい髪がふわりと揺れる。蘇枋の柔らかくサラサラとした髪をボサボサにしないよう気をつけながら撫でてやる。少し身動ぎしたあと、気持ちよさそうに目を細め、桜の顔を見あげていた。
蘇枋
桜
蘇枋
桜
蘇枋
桜
先に吹き出したのはどちらだったか、 2人だけの静かな屋上に、しんみりとした空気など感じさせない笑い声が響いた。
蘇枋
蘇枋
自分の寿命を少し、などという曖昧な表現をしたにもかかわらず、蘇枋は自分の死のときがいつかわかっている様子だった。 桜は、何も言えなかった。何となく、察してしまったのだ。本当の意味で、あと少ししか蘇枋が生きれないということを。今ここで、命の灯火が消えようとしている蘇枋に、なんて言葉をかけていいのか、わからなかった。
蘇枋
桜の表情を見て察したらしい蘇枋が、困ったように笑ったあと、桜の頬に手を伸ばした。
白くて体温の感じない手は、桜の頬をひとなでしてから、だらりと下がっていく
蘇枋
蘇枋
蘇枋
桜
普通でいたつもりなんだけどなぁ、俺もまだまだだね。なんて蘇枋はひとりごちた。 あの時、もし蘇枋を追わなかったら、今のりずっと後悔していたかもしれない。何もしれずに、何も知ろうとしなかった自分を心底恨んだだろう。桜は、自分の選択は間違っていなかったと、そう思った
蘇枋
ケホケホと、咳き込みながら、蘇枋が花を吐き出した。困った様な笑みは崩れ、苦しそうに眉根が寄った。最近よく嗅ぐようになった甘い香りがした
桜
蘇枋
遮るように名前を呼ばれた。こんな時でも、蘇枋は桜に何もしゃべらせてくれないらしい。伝えたいことが沢山あった。楽しかったとか、やっぱり桜が一緒に見たいとか、級友達と共に三年への進級を喜んだりしたかった。もっと沢山笑いあって肩を並べていたかった。けど、さえぎられてよかったとも思った。伝えてしまえば、もう本当に最後なんだと実感せざるを得ないから。
蘇枋
力なく笑った蘇枋は、ろくに身体も動かないだろうに、最後の力を振り絞って桜の頬にそっと触れた。まるで壊れ物を扱う様にふれるような、恋人に触れるような、そんな触れ方。慈しみを宿したあかい瞳を優しげに細めて、掠れた声で名前を呼ばれた
蘇枋
桜
蘇枋
蘇枋
桜
桜がなにか言おうと、口をパクパク開いたり閉じたりしている。いざとなった時、脳は思った通りに動いてはくれないようで、 蘇枋の名を小さく呼ぶことしか出来なかった。
蘇枋の顔は、よく見た彼お得意の胡散臭い笑顔ではなく、優しげで、どこか満足した笑みだった。
桜
さっきよりずっと、この場所が冷たくなった気がした
楡井
桜
桜に、次の総代にならないかと言われた時からはや数ヶ月クラスメイトと散々騒いだあの日が懐かしく思えた。それから正式に総代になった今日、楡井に改まって、あの屋上で祝いを告げられる。
この屋上では色んなことがあった。 色んな人と過ごした。 初めて自分の過去を明かした。 誰かが消えて、誰かが新しくこの場を支えた。そんな、思い入れが深い場所だった。
新入生の挨拶が終わり、学校もお開きとなった今、この場にいるのは桜と楡井の2人のみだった。
桜
楡井
楡井は、蘇枋についてよくわかっていた。 蘇枋は桜が総代になろうが、何になろうが気にしなかっただろう。ただ、桜がなりたいと言うのなら、桜の隣にいられるならなんだって。そんな、彼の重い本心に気づいたのは、皮肉なことに全てが無くなった後だった。 桜は楡井に苦い顔をしながら笑う。
初めて会ったあの時、正直胡散臭い奴だと思った。自己紹介でしょうもない嘘をつかれて、眼帯には悪霊が封印してあるとか何とか、散々おちょくられて、いけすかないやつだと思った。
桜
桜
楡井
楡井
楡井
桜
いかにも、物分りがいいです。と言わんばかりにいいこちゃんで、人当たりがよさそうな笑顔を浮かべるあいつは、以外にも頑固で、1度決めたら二度とそこから動かないだろう。
楡井
桜
蘇枋については、それとなく楡井や、クラスメイト達に話していた。あの時、蘇枋が居なくなってすぐの記憶は霧がかかったようにぼんやりしていて、どうやって帰ったのか、冷たくなった蘇枋はどうなったのか、何も分からなかった。翌日は、絶対に学校へ行かなければならないと、桜は無理やり鉛のように重たい体をもちあげさせた。副級長も級長もいないんじゃ、クラスメイト達は何が何だかも分からないだろうし、心配とするだろうから。
桜の顔を見た途端別の意味で心配をされてしまったが、何とか蘇枋については話せていたと思う。あの時の教室の雰囲気を今でも鮮明に思い出せた。泣くものや悔しそうに歯を食いしばるもの。自分と辛いはずなのに、何故か桜を心配する声すらあったあの日。
桜
楡井は黙って桜の言葉を聞く。今は何かを言うときではないと分かっていたから。
あの時、確かにあの屋上は、2人だけの空間だった。2人で笑った。2人で話した。2人で、………
桜にとってあのときは、紛れもない蘇枋とのさいごの時間だった。無意識に、彼との2人だけの思い出をひとりじめしたくなってしまった。
桜
桜
本当に気づかなかったのだ。自分の気持ちに。無くなった後に気づいてしまった。 なぜ桐生が、桜の心配をしていたのかも、今になってようやく気がついたのだ。
桜
楡井
桜
だから蘇枋は、優しい嘘をついた。桜だけが何も知らないのをいいことに。 もう自分は治らないのだと。桜が自分のせいで死んでしまったと気に病まないように。 元々、希望がないのだと、全てわかっていて、全部全部、もっていってしまった。 それに気づいたのは、もっとずっとあとに、ふと蘇枋の口から出た病名を調べてからだった。たぶん、これが蘇枋のいちばんの誤算だろう。さらりと言ったあの名前をまさか桜に覚えられてるとと知らずにまんまと本当のことを知られてしまった。
クラスメイト達に、蘇枋の症状を話した時、驚いた顔をしたあと、何かを決心した顔になったのは、きっと優しくて残酷な蘇枋の嘘に加担すると決めたからだろう。あれは治らない病気だと、口々にそう言っていた。
あの時、観念して桜に話したように思えたのも、全部偽りで、自分の思いに唯一気づいていない桜にだけ話したのだ。気づいたくせに、気づけなかった桜に。 もし楡井や、桐生に話していたら、蘇枋は救われたのだろうか。
楡井
楡井
桜
つくづく馬鹿だな、なんて震えた声で出すのが精一杯だった。
桜
頭のいい蘇枋なら、ずっと桜を騙し切ることなどできないと気づいていただろう。遅かれ早かれ、きっといつかは気づかれると、
桜
楡井
桜の傷が、少しでも癒えた頃に、この事実を知って欲しい。知られなかったら知られなかったで、嫌な重りを与えなくえなくて済む。 どちらにせよ桜のことを思ってだった
桜
楡井
病気について調べてからの桜の行動は凄まじかった。クラスメイト達を問い詰めたあと、洗いざらいはかせ、蘇枋が文字どうり墓まで持って行ってしまった秘密を暴いたのだ。
楡井
桜
楡井
桜
楡井と蘇枋について話して、話して、 時折昔話も交えては、馬鹿だバカだとまた話す。
桜
楡井
桜
楡井
桜
いくら後悔したって足りなかった。 もしあの時、だなんて考えては、過去は変えられないと嫌ほどしっていたから。
桜
桜
桜
何も返せなかった。 沢山、沢山貰ったのに返事も何一つ返すことができなかった。 ずっとあの時のことを思い出しては引き摺っていた。もっと沢山知りたかったのに、蘇枋が吐き出した花の名前も、桜にはわからなかった。たった数枚の花弁をみて何の話か当てるなんて桜には出来なかったから。
楡井
楡井
はは、と薄く笑ったあと、桜はそうかもなと返事をする。蘇枋が居なくなってから、蘇枋が残してくれたものを見て、ほんとにどれだけ自分のことが好きなんだよと思ったくらいに。
赤い瞳が細められて、柔らかく笑った顔、眉を八の字に下げ困った様な顔、嬉しそうな顔、思い出す桜といた時の蘇枋の表情は、全てあたたかくて、陽だまりにいるようだった
桜
桜
桜の顔には未だに後悔が残っていた。それでも、彼は前に進む。ずっと止まっては居られないくらい、背負うものが彼には沢山あったから。
楡井
楡井
桜
桜
桜は拳を握りしめる。 冬に一人ぼっちで置いてきてしまったあいつを、どうしようもなく馬鹿野郎で、優しくて性格の悪いあいつを、1発ぶん殴ろうと。 本当はもっと沢山たたいてやりたかったが、惚れた弱みってやつでゆるしてやる。楡井にでも沢山ぶん殴られればいいのだ
冬を置いて春に進み、桜を見る。 いつか会いたいあなたへ。 灰色な世界に桜は眩しいくらいに輝いていた。
すきだよ。 だいすき。 次会った時には絶対に伝えよう。 嫌いだって言われても、お前のせいで死んだと言われても、絶対に伝えたい。 殴り返されたって文句は言わない。 けどあいつなら、困った顔でわらいながら、殴るかわりに桜の頬に手を当てるだろう。
屋上まで飛んできたピンク色の花びらを1枚だけキャッチした。 手のひらに残った桜の花は、風に吹かれするりとどこかへ飛んでしまった。
桜
楡井
誰かとの約束を果たすために。