この作品はいかがでしたか?
410
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戦場では立ち止まることを知らない。
目の前に、違う軍服の人間が居たならば
容赦なく切り捨て、忙しなく瞳を動かし、次へ。次へ。
血を吸ってなお、重くも軽くもならない剣。
中佐
sha
人から命令されるのは好きではなかった。
まるで自分が偉いのだと。そう態度で示しているようで。
出過ぎていた自覚はあったが、ほんの少しの反抗のために
己の行動に見て見ぬ振りをすることは多かった。
だからこそ、目を付けられ続けているのだが。
粗方片付いてきたのか、辺りは血生臭い。
疲れを感じさせぬ顔で第一拠点に戻り
医療班から治療を受け終われば、また数時間後には前線へゆく。
陸軍の中でも、最も消費人数の多い前線隊へ所属していた。
前線を駆け巡り、道を切り開いていくことに対する抵抗は、
もうとうの昔に記憶の底へと飲み干してしまった。
生温くなった水を勢いよく飲み干す。
疲れ切った体に何の効果もなく、ただ水分補給するだけの味。
望むなら、真夏の青空に疎に気泡を浮かべて、
冷たく弾けてくるようなあの味を望む。
生憎、この戦場では青空なんて見える訳もなく、
曇天の空で気持ちもろとも落としてくるようだった。
更に言えば、後ろから空の彼方へと飛ぶ戦闘機に。
雨の憂鬱が顔に出たかのような黒い雲に。
笑顔なんぞ、美しさなんぞ、ある方が不自然だった。
sha
少尉
sha
中佐
吐いたはずの溜息は、被さってきた声にまた溢れ出てきた。
先程帰ってきた道をまた行く。
至る所にある死体に、うぞうぞと群がる死出虫や蟻やら。
思わず顔を背けた時、前の方の列が崩れる音がした。
はっと目を向けるも、前を行く殆どは死亡又は怪我。
敵の遊撃分隊が隠れ潜んでいたようで、
あの中佐が蹲っている様子に、何処となくスッキリする。
そんなことを考えてる間に、次々と目の前が崩れてゆく。
1人、強い奴がいる。
戦場の強いは様々だ。
何を捨てても、何があっても生き残るやつ。
単に武力が強く、生き残るやつ。
作戦でも、指示でも、一人一人の動きが今後を動かす集団戦。
斬りかかってきた敵を斬り捨てながら、
着々とその1人に近づくのを感じる。
前線が崩れた。
あんなに居た人は、今やポツリポツリと虚しく立ち、
守りに必死で生を掴もうとしている。
もう動かない中佐のどでかいトランシーバーを拾って適当にかける。
?
sha
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あの中佐はフェルザリオというのか、と。
詳しく伝えたほうがよかったのか、と。
考える脳の思考を放棄させて、
トランシーバーを投げ捨て、確実に壊してから生きに行く。
敵兵
強い風が吹き、伸びすぎた前髪がかかる。
全く違う軍服を羽織っているその顔には見覚えがあった。
幼少期、仲が良かった友人。
親の理由で隣国へと、違う土地へと引っ越し、
たったそれだけで、敵となった。
踏む土地が違うだけで、生死を決め合う立場になるのかと。
もう、心は死んでいる。
強いやつ。と言うのがそいつだった。
敵兵へと成り果てたのは何方だ。
責任を背負うのは何方だ。
後悔を背に乗せ生きるのは何方だ。
それは、間違いなく。
sha
剣身で鳩尾を思い切り叩いてから、刃で確かに斬った。
上司である中佐が亡くなって、気が晴れたのはどうしてだと。
友人を斬った感覚はどうだと。自分に問いたい。
今、自分がどんな顔をしているか。
致死量をすぐさま上回るほど溢れ出してく赤では見えそうにない。
晴れたのは空ではなかった。
見えるのは青ではなかった。
冷たさは望んでいたものとは違った。
気持ちは弾けるどころか、その真逆だった。
敵兵
敵兵
それは、俺のセリフだと言ってやりたい。
この濁りきった不透明な戦場で、
あの日の青空と幸せを知った君に。
君に斬られたかった。
振り返れば増援に来た味方。
握りしめた剣を振り払って、
増える敵兵を横目に味方へと走る。
立ち止まらずに、振り返らずに。何故なら、
戦場では、立ち止まることを知らないから。
shaさんの軍パロ設定。 毎度友人を死に役にするのはある種の呪いでしょうか、、、。() 因みに前作の時間軸と同時の話であります。 あの時前線の戦況報告を行った通話先は 察している方も居るかもですがtnさんですね。 それがきっかけにもなり、後ほどgr.utと出会います。
コメント
5件
友人の最後の言葉が美しすぎて、、、 戦場では、生きるか死ぬかですもんね… こういう物語かけるの尊敬です😢