親友

それは、突然の出来事だった

いつもと変わらない、普通の日々、

そう、思っていた

ｷｷｰｯ

は?

地面に足がつかない、なにこれ

足も手も上手く動かせない

動け、動け、動け

突然、鋭い痛みが走る

痛い、痛い、痛い

手に赤い液体が触れる

だんだん私の意識は遠のいていき、

ﾌﾟﾂｯと、途切れた

Suzu side

意味がわからない

凛が、事故った?

嘘だ

それが本当なら、凛は、

そんなのは、ダメだ

だって凛は、私の救いで、私の唯一の友達

凛がいなくなったら、私は、

私は、どう生きればいい?

耐えられない

みんなが私の方を見ている気がする

お前のせいだ

お前がいるから

そう、訴えているような気がする

私は耐えられなくなって、その場から逃げ出した

Daiki side

教室から1人の生徒が飛び出してきた

静川鈴…折本凛の親友、だったっけな

親友が事故なんて聞いたら、取り乱すのは当たり前

だから静川鈴の行動は、ある意味理に叶っているんだろう

だからといって、放置しておいていいのだろうか

あの状態を続けていたら、最悪の場合…

俺だって生徒の事故を聞いてからというもの、考えが全くまとまらない

冷静な判断ができない

折本凛とはよく話していたし、そのせいもあるだろう

親友なら尚更だ

Suzu side

こんなになるまで走ったのはいつぶりだろう

凛はいつも体が弱い私のことを気にかけてくれた

体が弱いこと、一度も話してないのに

凛は、直感で動く元気な子だ

でも本当は、誰よりも周りのことを考えていた

そんな凛は、私の憧れだった

私の救いだった

それなのにｯ…

なにも、できないのに…

…

ここは…

…病院?

私は…事故って…それで…

…思い出せない

でも死んでないってことは助かったってことか…

起き上がってみる、体は問題なく動くようだった

数分後

嬉しさのあまり、ベッドから思いっきり飛び降りてしまった

ガヤガヤ

鈴がフェンスを跨ぐ

震える手を、ぎゅっと握りしめている

怖いよね

そりゃそうだ

そんなことより…

なんで私は動かない?

車にはねられても無いのに、体が動かない

どうして?

…無力?

私は、鈴を…

救えない…?

そんなの…

…

ダメに、決まってる

やっとのことで私は走り出した

でも、

やっぱり思うように動かない

何故?

迷い?

私は何を迷っている?

鈴が、親友が目の前で死のうとしているのに

何を迷うことがある?

もしかして、

鈴がいなくなれば、少しは楽になるなんて、

そんなアホみたいなことを考えてるわけが無いよね?

鈴は、私の親友だ

邪魔なわけが無い

むしろ、私にとって必要不可欠な存在

迷う必要は無い

だんだんと、加速していく

迷いを振り払うように、

フェンスを飛び越え、

落下寸前の親友の手を、掴んだ

このあと、鈴は無事に引き上げられ、何事もなく終わった

おしまい