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威榴真side
しかし「そのとき」は すぐにやってきた。
ラーメン屋の暖簾をくぐって 外に出た瞬間真剣な口調で 乾に飛び止められたのだ。
乾ないこ
突然の指名に俺はぎょっとし、 夏都はすかさず 「俺も!」と挙手した。
だが乾は申し訳なさそうに 眉根を下げる。
乾ないこ
紫龍いるま
俺の心の声が聞こえたのか 澄絺はふわっと口角をあげて笑う。
春緑すち
こちらの意志などまるっと無視だ。
したら顔の澄絺は まだ話足りなそうにしている夏都の 腕を取り、もう片方の手でひらひらと 手を振って去っていく。
残された俺は何とも言えない疲労感と 共に空を仰いだ。
すっかり陽が傾き 淡い光を放つ月が見える。
紫龍いるま
このイベントを通過しないと EDを迎えられない 仕様なのかもしれない。
冗談とも本気とも つかないことを考えながら 俺は不承不承頷いた。
乾はほっと息をつき 「場所変えよっか」と 言って歩き出す。
どこまで行くのか聞いた方が いいだろうかと思った矢先 少し歩いた、人影のない道で 足が止まった。
紫龍いるま
紫龍いるま
乾ないこ
ほとんど同時に お互いに質問をぶつけていた。
間合いをとった俺に対し 乾はいきなり切り込んできた為 まともに動揺してしまう。
紫龍いるま
戸惑う俺に乾は遠慮なく 更に踏み込んでくる。
乾ないこ
紫龍いるま
何の話だよ、と言いかけて 意味がないと口をつぐんだ。
話が通じないというより自分の ペースに持ち込みたいのだろう。
思わず白鼻みそうになるが 俺は深呼吸ひとつで受け流す。
これまで組手を避けてきた 自覚がある分相手を責める気には ならなかった。
紫龍いるま
紫龍いるま
紫龍いるま
乾ないこ
図星をさされたと慌てるでもなく 乾はにっこりと微笑んだ。
あまりの清々しさに 俺の方がぎょっとする。
紫龍いるま
乾ないこ
ハンコを押したように 全く同じ反応が返ってきた。
もしかしたらこれも挑発の 一種なのかもしれない。
ここで乗らなければ後日また 呼び出しを食らう羽目になるのは 目に見えている。
紫龍いるま
内心毒づきながらも俺はあえて 挑発に乗ることにした。
紫龍いるま
紫龍いるま
俺の問いかけに乾から 笑みが剥がれ落ちた。
だがすぐに元に戻り ますます笑みを深くして言う。
乾ないこ
乾の答えを聞き、 「あぁやっぱりな」と唇を歪める。
わざわざ蘭の前で 挑発したのは俺の気持ちを 白日の下に晒すのが目的だったのだ。
そこまでは予想通りだったが 肝心の理由が分からないままだった。
紫龍いるま
紫龍いるま
乾ないこ
今度こそ乾から笑顔は 消え去っていた。
言葉だけでなく全身から 挑むような気迫を感じる。
どう反応すべきか迷う 俺に乾は更に続けた。
乾ないこ
乾ないこ
紫龍いるま
掠れ切った声は乾に届いただろうか。
誰に聞かせるでもなく 殆ど独り言だった。
紫龍いるま
真実を告げればリングに立てと 迫られなくなるのかもしれない。
そう思うと喉まで声が出かかる。
だが解放されたい一心で 蘭の気持ちを密告するのは 話が違うだろうとも思う。
第一、蘭が誰を好きであっても 乾の態度は変わらない かもしれないのだ。
俺は思考を振り払うように 前髪をかきあげた。
少しだけクリアになった視界で 真っ直ぐに乾を捉える。
紫龍いるま
乾ないこ
紫龍いるま
質問に質問で返された挙げ句 いきなりの話題転換についていけず 俺は目を白黒させる。
しかし当の乾は真面目な 表情で淡々と続けた。
乾ないこ
乾ないこ
紫龍いるま
思わず言い返すと乾は 幸せを噛み締めるように 「うん」と頷いた。
紫龍いるま
乾にとって蘭は自分を変える きっかけをくれた人物だと言う。
それは 「自分を変える勇気をくれた」 だけでなく 「蘭の為に変わりたいと思った」 という意味も含まれていたのだ。