覚
う"っ...うーん....

ルカス
これは....かなり重症なようだね。
ベリアン、原因に心当たりはないかい?

ベリアン
いえ....主様はお優しい方ですので...。
心配をかけまいと、何も話してはくれないのです。

覚の突然の変わり果てっぷりに、ベリアンとルカスは困惑しているようだった。
ルカス
せめて、主様の世界で何をなさっているのかだけでも教えてくだされば....。

覚
う....ん....?

ルカスの声に気づいたのか、覚はゆっくりと目を開けた。
ルカス
良かった。主様、目をお覚ましになられたのですね。

覚
ル、カス…?

ベリアン
主様....どうかお願いです。
主様の世界で何があったのか、私達に教えて下さいませんか?

覚
え...?

ルカス
主様。主様は今、かなり重症でございます。
その原因は何か知りたいのです。
そうすれば、主様の回復をサポートすることが可能になりますので。

覚は、しばらく黙っていたが、2人の鋭い視線に耐えられず、しぶしぶと話し出した。
覚
分かった。話すから、あまり私を見ないで。

ルカス
では、説明をお願いします。

覚
はい...。

覚
えっと...私、は....その....あっちの世界では、毎日得体の知れない薬を投薬されるが為に生きてる、いわゆるモルモットな訳なんだよね。

ルカス
......!?

ベリアン
モ、モルモット、ですか.....???

覚
そう。モルモット。

ルカス
それは、一体どういう事ですか?

覚
それを今から説明するんじゃない。

覚は呆れたような顔をすると、自分の存在がどのようなものであるのかという事と、施設について知っている限りの事を話した。
ベリアン
.......。

ルカス
.........。

覚
どうして2人して黙ってるわけ?

ベリアン
主様は....苦しいとは、思わないのですか...?

覚
苦しければとっくに悲鳴をあげてるよ。
もう苦しさもよく分からないから。

ベリアン
主様.....。

ルカス
ねぇ、主様。

覚
なに?

ルカス
主様の左目。色が抜けてしまっているように見えるけれど....物の見え方に異常はありますか?

覚
ん、あぁ、これね。うん、色が薄く見える。

ルカス
......!

覚
でも、もういいんだよ。
私は、あとはもう身体の限界を待つのみ。

ベリアン
....!それって...

ルカス
主様。主様は、ご自分があとどのくらい生きられるのか、ご存知のようですね。

覚
自分の身体だよ。
分かって当然。

ルカス
ざっくりでいいので教えて頂けますか。

覚
面倒臭い反応しないなら。

ルカス
約束致します。

覚
ふぅん。

覚
私は多分、余命はあと2年くらい。

ベリアン
......!!!

ルカス
.......。

覚
あと2年も生きられるか正直自信ないけどね

ルカス
それは...つまり...。

覚
ルカスは察しが良いね。
さすがお医者さん。

ルカス
.....。

覚
ルカスはきっと、私の目の病気の事も分かってるんだよね?

ルカス
.....はい。

覚
瞳遷病って、かなり珍しいから知らないかと思ってたけれど

ルカス
....存じております...。
その代償も....。

覚
流石、ルカス。

覚
話が早くて助かってる。

ルカス
......。

覚
そう。瞳遷病は、発症して10年で死に至る。

ベリアン
......!!!

覚
実際、もう10年は経過してる。

ベリアン
えっ...

覚
私が瞳遷病になったの、5歳の時だから。

ベリアン
それって....

覚
ベリアンも察しが良いみたいだね。
そうだよ、その通り。
2年以内に死ぬ確率は、余裕で50%を上回ってるの。

覚
なんなら、明日、明後日に死んでも

ベリアン
.....。

ルカス
........。

覚
私、別に生きたいとは願わないから、サポートとかは必要ないよ。

ルカス
っ...。

覚
強いていえば、貴方達からの頼まれ事を果たせない事だけが未練かも

ベリアン
主様....っ

覚
っと、そろそろ帰らなきゃ。
またね、2人とも。

ベリアン
あっ....主様..!

ルカス
くっ....

煙の様に消えた覚が立っていた場所を、2人は険しい表情で見つめていた。