蒼瀬 ころん
『"たとえどんな形になっても"さとみくんの誕生日祝う!!!』
百瀬 さとみ
はっ………。まさか………。まさかな……、
震えた手でスマホの画面を触る。『ころん』と表示されたライン画面を。
蒼瀬 ころん
『やっほー!さとみくん!もしかして、これが送られてるってことは、ちゃんと、
ママ、僕が書いたエンディングノートを最後まで読んでメール出してくれたんだ』
蒼瀬 ころん
『さとみくん!!!お誕生日おめでとう!!よい一年になりますよーに!!!
出来ることなら、直接いえれば良かったんだけどね…』
百瀬 さとみ
ははっ。なんちゅー考えだよ。
もう終わりなのかと思ったが、まだ下にあることを知り、
下にスクロールすると
蒼瀬 ころん
『そして、ごめんなさい』
蒼瀬 ころん
『僕が直接、さとみくんに、病気のこと、寿命のこと教えてなくて…。別にさとみくんが頼りないとか、そういうんじゃなくて、さとみくんに言ったらきっと、耐えきれなくなって後追いを考えて、さとみくんが嫌な思いをすると思って言わなかったの』
蒼瀬 ころん
『きっと心が砕けるのが早いと思ったから。まぁ、思いもがけず、知られちゃったけどねぇ』
蒼瀬 ころん
『だから、絶対に僕の後を追わないこと。悲しすぎて、やることなさすぎて、こっち(天国)に来ちゃおうとか、考えてないよね?』
蒼瀬 ころん
『そんなこと思ってたら、あっちであったとき、一言も口を利かないからね。ずっと無視し続けて、嫌な思いさせるんだから!』
百瀬 さとみ
……!!!!
蒼瀬 ころん
『だから、そっちでたくさんの表情を見せてください。僕以外にさとみくんの笑顔
見るとか癪だからあんま言いたくないんだけどねwww』
百瀬 さとみ
ほんっと、お前には頭が上がらねーよ(泣)
蒼瀬 ころん
『…さとみくん、変わったね。付き合う前とかは、僕がさとみ先輩〜って言って、
近寄ったら嫌な顔されて、なに?って言ってくる。それが僕の好きになったさとみくん』
百瀬 さとみ
……………
蒼瀬 ころん
『優しくなったね!さとみくん!!』
蒼瀬 ころん
『さとみくん、莉犬くんのこと、お願いします。あの子はどうせ、泣いてるから〜とか、意味不明な理由で出てったんでしょ?お願い、探してあげて』
蒼瀬 ころん
『そして、またたくさん泣かせてあげて。甘え慣れてないから、人に甘えるっていう思考がない人なの。だから、ちょっとでも気持ちが楽になるように、たくさんそばにいてあげて』
蒼瀬 ころん
『でも、僕から莉犬くんをすきになるのは許さないから!!!そんなことしたら、
一生呪ってやるからな!ま、そんなこと言わなくてもさとみくんは僕一筋か!ww』
百瀬 さとみ
当たり前だろ。お前しか好きになんねーよ
本当に、そのとおりだと思う。俺はこの先、こらん以上に好きな人に出会うことはないと自分自身でも思う。
蒼瀬 ころん
『さとみくん。楽しい2年間を僕にくれてありがとう。本当はね、僕、一年で死ぬ
はずだったんだよ』
蒼瀬 ころん
『でも、一年命を伸ばしたのは、僕が生きたいと願ったからなんだって』
蒼瀬 ころん
『ほんと、なんてお礼をしていいかわからないよ。さとみくんの言葉、表情、愛情があったからこそ、僕がさとみくんの隣に居続けることができたんだと思います』
蒼瀬 ころん
『ありがとう。それでは、ここら辺でおわります。改めて、お誕生日おめでとう!』
百瀬 さとみ
うっ………うっ…うぅぅううう……………!!!!!!
嫌だ………。死なないでくれ………。ころん………本当に俺も…お前の事好きだから………
置いていかないでくれ……………(泣)
俺の口から出た言葉は、『今までありがとう』みたいな、感謝の言葉ではなく、彼の死を拒むような言葉だった…。
狗井 莉犬
ちゃ……んと、話せた………?ニコ
百瀬 さとみ
…………!!!!
ドアの前から現れた莉犬の顔は、目は真っ赤に腫れ、平行二重だった大きな目は、泣きすぎたせいか、一重になっていた。
そして、声もカスカスで、大丈夫か、と心配するほどだったけど、莉犬は
なぜか、微笑んでいた。涙を流しながら。
百瀬 さとみ
うんっ………(泣)
狗井 莉犬
そっか………。良かった…………あの子も……幸せに…………。ニコ
俺はころんからもらったメールがあるスマホを握りしめ、涙を拭き、前を
はっきりと向いた。
蒼瀬 ころん
……だいすき……ニコ