たぶん、人並みに恋愛経験はある方だと、自分では思う。
片想いも何回か経験したし、告白されたこともあるし、もちろん付き合ったこともある。
恋多き、とまでは言わないけれど、人並みの経験はしたはずだ。
莉緒
(…これは、さすがに予想外だったかな)
優希
好きです! 大好きです!
優希
私と、付き合ってください!
莉緒
ねぇ
優希
はい、なんでしょう!
莉緒
この手紙……
優希
読んでくれましたか!?
莉緒
まぁ、読まなきゃここには来てないよね……
優希
あ、それもそうですね!
莉緒
……今の反応で大体わかったけど、いちおう聞くね?
莉緒
渡す人、間違ってたりとか……
優希
しません! 先輩宛です!
莉緒
だよねー
優希
はい!
莉緒
いやー、あはは
莉緒
そっかそっか
莉緒
……えーと
莉緒
(どうしよう……)
優希
先輩?
優希
どうかしました?
莉緒
あ、いや……
莉緒
(告白されて困ってますとは言えないし……)
優希
まぁ、なんとなくわかるんですけどね
莉緒
え……
優希
やっぱり、困りますよね
優希
同性からの告白なんて
優希
まぁ、私もそれなりに経験あるので……
優希
ある程度は覚悟、できてますから
優希
いいですよ?
優希
振っちゃってください
優希
そしたら、私もちゃんと諦めますから
優希
お願いします
莉緒
(……)
莉緒
(……なんで)
莉緒
(なんで、笑顔なの?)
莉緒
(こういう時、普通は笑えないよ)
莉緒
……うん
莉緒
わかった
莉緒
ごめんね、私、あなたとは付き合えない
優希
……はい
優希
ありがとうございます、先輩
優希
それじゃあ、さよ……
莉緒
だけど!
優希
……え?
莉緒
私はあなたをほっとけない、と、思う
莉緒
だから、
莉緒
まず、
莉緒
友達から、
莉緒
始めて、みません、か?
莉緒
……って、ちょっと図々しい?
優希
……
優希
……んで
優希
なんで、そんなこと言うんですか……
莉緒
なんで、って言われても……
優希
せっかく、諦めようと思ったのに……
優希
そんなこと言われたら、諦められなくなるじゃないですか……
莉緒
……そうかもね
莉緒
私には同性を好きになる気持ちは分からないし、あなたの気持ちに答えられるかどうかもわからない
優希
だったら!
莉緒
でも、まずはあなたのことを知らなきゃ答えられないから
莉緒
だから、恋人よりも先に
莉緒
友達から、始めよう?
優希
…………
莉緒
……だめ、かな?
優希
……じゃ、ないです
莉緒
え?
優希
ダメじゃない、です……
莉緒
そっか……
莉緒
って、なんで泣いてるの!?
莉緒
そ、そんなにひどい提案だった!?
優希
ち、違います!
優希
その、嬉しくて
優希
今まで、そんなこと言ってくれた人はいなかったので……
莉緒
……そっか
莉緒
じゃあ、私が第一号だ
莉緒
そしたら、まずは自己紹介から始めようか
優希
……自己紹介?
莉緒
うん、だって私、あなたの名前知らないし
莉緒
だから、自己紹介
莉緒
お名前と学年、好きなものをどうぞ
優希
えっあ、はい、えっと
優希
小日向優希、高校一年生です!
優希
好きなものは先輩です!
莉緒
おおう……意外とストレート
莉緒
まぁいいか、次は私だね
莉緒
小鳥遊莉緒、高二
莉緒
好きなものは……えっと、楽しいこと全般、ってとこで
莉緒
これからよろしくね、優希
優希
はい、先輩!
優希
絶対私のことを好きにさせてあげますから、覚悟しててくださいね!
莉緒
あはは……お手柔らかに