届くことのない思い

私は彩奈(りな)です

獣人の家庭で育ち 人間の前では耳を隠してきた

そして今は神社で巫女をしています

ここの神社はあまり知られていないので 来る人が少ないです

私はいいんですけど管理人さんが いつも悲しがってます…笑

大丈夫だよ〜

幸いにも管理人さんが優しいので 良い環境で仕事が出来る

もう耳を隠すのは諦めよう…

久しぶりだね〜

…イケメンだね

彩奈ちゃんも思わない？

私の耳を見ても驚かないなんて 不思議な人だったな…

それからあの参拝者は頻繁に神社に 来るようになった

私はもう耳は隠していない

そして何日かすると名前を知った

名前は翠(すい)と言うらしい

本人は『苦手』と言うけれど 私は好きだ

響きが優しくて暖かくて強いから

私の名前を教えると

と言ってくれた

私は彼と話していくうちに なにか分からない感情を抱いていた

管理人さんに相談すると

それは彩奈ちゃんが 恋をしているからじゃないかな？

私は恋というものが分からない

でももしこれが恋なら 私は気持ちを打ち明けない

なぜなら獣人と人間は 付き合ってはいけないからだ

過去に付き合ったことで 人間に売り飛ばされた人がいるかららしい

それ以降付き合うと人間が処刑される

だから私はこの思いを打ち明けない

今日は珍しく夕方に翠さんがきた

神様 どうか彼を幸せにしてあげてください

彼は優しく強く暖かい人です

同じ時間を過ごしたのは少ないですが 私はそう思いました

なのでどうか幸せにしてあげてください

好きです

届くことのない思い

_𝐞𝐧𝐝_