三年前の七月。私が飼っていた 飼い犬の"ゴン"が亡くなった。
元々、ゴンは迷い犬で雨の中寒そうに 凍えていた所を、家へと持ち帰った。
当然、旦那には猛反対されたが、 何とか押し切って、自分が全て 面倒見るという条件の元、 許可が下りた。
まだ子犬で、掌に収まりきる位の サイズだった。 よく、カラスに狙われず… 生き延びていたことに驚いたくらいだ
拾った後、すぐに温めて元気を取り戻してくれた。
自然と、私や旦那にも懐くようになり あれだけ猛反対していた旦那でさえも 可愛がっていた。
いつも、旦那と二人きりで。 子供たちも成人して各々離れていた。
そこに、ゴンが入ってくれたお陰で 家庭も少し温まった様な気がした。
三浦
旦那
そんなある日、 旦那は仕事で私も夕方に家に帰宅。
三浦
駆け寄ってくるゴンを撫でながら、 リビングに向かう途中
インターホンが鳴ったので、 慌てて出た。
そこには、警察官が。
警察官
三浦
何事かと緊張感が走る中、
警察官
三浦
警察官
三浦
警察官
警察官
警察官
三浦
隣に一人暮らしをしている中年の女性の小口さんという人が住んでおり
この町に越してきて来て、初めて挨拶に回った時から無愛想な人ではあった
旦那が仕事かは帰宅して来てから 事情を伝えると
旦那
旦那
三浦
翌日、隣の小口さんの家に お菓子片手に謝罪しに行った。
相変わらず、私を睨むように見てきたが、私は頭を下げた。
三浦
三浦
紙袋に入ったお菓子を渡すと、小口は 紙袋を地面に叩き付けた。
小口
小口
小口
三浦
小口
三浦は家を追い出され、強く扉を閉められた。
ゴンが何をしたっていうの…?
俯きながら家へ戻ると、ゴンが駆け寄ってくる。
三浦
優しく撫でて、何をしたら良いか分からず…旦那の帰りを待っていた。
すると、インターホンが鳴り、 時計を見ると"十七時四十五分"
三浦
嫌な予感で出ると、案の定 警察官だった。
要件も全く同じ内容で
三浦
警察官が帰ったあと、テーブルに肘をついて、両手で頭を抱えてぐしゃぐしゃにした。
そこに旦那が帰宅。
旦那
三浦
その次の日…また次の日と、 毎日警察官が来る。
警察官も呆れていたが、毎日鳴るインターホンに耳を塞いだ。
旦那
三浦
三浦
旦那
三浦
三浦
旦那
三浦
三浦
お互い溜まっていた思いが爆発した。
旦那は黙り込んで背中を向けた。
旦那
三浦
旦那
旦那
旦那
三浦
翌日、庭にゲージを設置し、 その中にゴンを入れた。
外飼いにしなければ保健所行きだと言われた限り…
心苦しかったが、そうするしかなかった。
三浦
ゴン
三浦
三浦
寂しそうに鳴くゴンに頬に涙が伝った
皮肉にも、あれから警察が来ることもなくなり、落ち着いていた。
三浦
旦那
あれ以来、旦那はゴンの話に全く興味を持たなくなった。
何回か提案はしていたが、しかしその都度…言い合いになるばかりで
夫婦間にも亀裂が入っていた。
朝、夜と餌と水を入れ替えていたのだが、最近交換しに行っても残っていることが増えた。
普段、残さず食べ切るのに…。 体調でも悪いのかと見てみたが、 変わった様子もない。
職場で同じく犬を飼っている中野に その話を相談してみた。
中野
中野
三浦
三浦
中野
中野
中野
中野
三浦
三浦
三浦
その日、家に帰宅しいつものようにゲージを開け
三浦
ゴン
そう呼ぶも反応がなく、横たわっていた。
三浦
体が冷えていて、すぐに病院に走らせた。
流石に、旦那も黙ってはおらず 後から駆けつけてきた。
医者が出てくるのを見ては、 私は立ち上がり
三浦
医者は視線を下に向け
医者
三浦
頭の中が真っ白になった。
どうして突然…?
白いタオルで包まれたゴンが台の上に置かれる。
つい昨日まで元気に歩き回っていたゴンが…
明るく鳴いていたゴンが…
目の前のゴンの頭に触れても、冷たかった。
三浦
目の前の光景が夢だと思いたかった
それと同時に涙が止まらなくなった。
旦那
旦那が私の背中を撫でながら問いかける。
医者
医者
その時に私と旦那は目を見開いた。
帰る車内で、旦那が運転する横で タオルに包まれたゴンを抱いた私は口を開いた。
三浦
旦那
三浦
謝罪しに行った際、お菓子を持って言った。
地面にたたきつけられたお菓子。
あれは、旦那と決めて買った
大福だった────
ただ、証拠がない。
私は、その付近の家を訪問し、聞いていくうちに証拠を掴んだ。
隣人
隣人
隣人
防犯カメラを見せてもらうと、 十二日の午前中に紛れもなく、
庭のゲージを開けているのが見えた。
そして、紙袋から出していたのは大福だった。
三浦
隣人
その日の夜、旦那に話して 警察に映像と被害届を提出。
数日後、小口は任意同行を渋々認め、逮捕された。
後から聞いてわかった事は
・三浦家に嫉妬しており、 嫌がらせをしたかった
・その前から餌付けをしていたが、 まさか大福を食べて死ぬとは 想定外だった。
・早く引っ越して欲しいと思っていた
ゴンの遺骨を持ち帰る車内で旦那に
三浦
三浦
三浦
旦那は黙ったままだった。
遺骨を抱えて私は目を閉じた。
家に帰るといつも元気に出迎えてくれたゴン。
寝る時は私の足元で寝ていた。
散歩すると、ちょっと怖がるけど、大好きな公園に連れていくと楽しそうに走り回っていた姿。
色んな思い出が頭の中を駆け巡る。
幸せに出来なくてごめんね────
目を覚ますと、車内におり 外は雨が降っていた。
三浦
案の定、窓の外を見るとそこに濡れた子犬の姿が。
三浦
車から降りて、子犬を抱き上げた。
紛れもなくゴンだった。
三浦
ゆっくり撫でながら、車に乗り… とある友人に連絡をしてすぐに向かった。
友人
ゴンを抱いた私は友人宅へ入り すぐに温めた。
友人
三年前、私が家に引き取る数日前に、友人の愛犬が亡くなった連絡を受けており
私の身内で犬をあげたい人はいないかと聞かれていたが、
三年前の私は連絡を忘れ、家に持って帰ってしまった。
そこから、旦那に反対されて…という流れになった。
正直…過去に戻ってきた今、ゴンを持ち帰ろうか悩んでいた。
でも、きっとまた同じ流れになるのは分かっていたし、また隣人に殺されるのも嫌だ。
だからとはいえ、殺したくなる程隣人は憎いが…更に未練を残しては意味が無い。
それなら、ゴンが幸せに育ってくれるなら…信頼のある友人に幸せになってほしい。それだけだ。
バスタオルで拭いて、乾かしたあと、元気に走り回るゴンの姿に目を細めた
ゆっくり、視線を合わせるように屈んでは
三浦
小声で呼ぶと、手先を舐めてくれた。
思わず目頭が熱くなったが、その後元気になったのを確認し
時計を見ると帰らなくてはならない時間に。
友人はゴンを抱きながら玄関まで見送ってくれた。
三浦
友人
ゴン
突然高い声で鳴くゴンに目を見開いた。
よく、寂しがるときにそう鳴いていた。
私はゴンの頭を撫でて
三浦
三浦
友人は首を傾げた。
三浦
ゴンに視線を向けると瞳をうるうるとさせていたが、私は力強く頷いた。
三浦
ゴン
三浦
友人
三浦
友人
友人
友人
友人の言葉に目を見開いた。
私も、ゴンの名をつけた理由と全く同じだったからだ。
か弱そうに見えるけど…どこか逞しそうで
そんな理由からゴンと名付けた。
旦那には笑われたが…
私の中ではお気に入りの名前だった。
三浦
ゴン
私の言葉に明るく鳴いてくれた。
外に出ると、空は雨も上がり晴れていた。
この方法が正しいのかは分からないけど…
少なくとも安全は保証された。
家に帰宅すると、旦那の姿が。
旦那
三浦
三浦
旦那
旦那
旦那の言葉に大きく目を見開いた。
私は笑顔で
三浦
自然と頬に涙が伝った。
それでも、笑顔のまま涙は澄み切っていた。
その瞬間、周りの視界が白く光った。
目を覚ますと、先程居たホールに戻ってきていた。
三浦
辺りを見渡すと、気持ちよさそうに寝ている山岸の姿が。
三浦
私は窓の外を眺めながら、 先程の事を思い浮かべた。
後悔はなかった。
和也が言っていたように、死んだ事実は変えられない。
ただ、あの時出来なかったことを
悔いが残らないようにもう一度やり直せた。
そこで、"未練"というものから断ち切れた。
私はただ…本当に望んでいたことは
ゴンが幸せになってほしい
本当にそれだけの事だ。
天国でも幸せに生きているのだろうか
私は窓の外を眺めながら目蓋を閉じた
過去とはいえ、もう一度ゴンに出会えて良かった。
三浦
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