少しずつ歯車が狂い始めたのは、数日後の事だった
授業が終わり 私は先生からの呼び出しを済ませて急いで教室に戻っていた
涼
(こんな時に…咲良のヒートが近い時に離れるのはまずい…)
ガラガラガラ
涼
さく…
教室の扉を開くと微かに香るフェロモン
咲良
………
教室の隅で蹲り傍には薬が入ったポーチが落ちていた
涼
咲良!!
幸いにも他のαがそばにいなかったからまだ良かった
咲良
涼……ちゃん…っ…
咲良
わ…私…薬…
咲良
ポーチ…あかなくて…
涼
分かった…分かったから
急いでポーチから薬を出して咲良の口元に持っていく
涼
口開けて、咲良
段々とフェロモンで頭が朦朧としてくるのを何とか堪える
咲良
………
いつもならすんなり口を開けてくれる咲良が何故だか今日は全く開けてくれない
涼
咲良?!
咲良
ねぇ、涼ちゃん
咲良
あのね…
涼
話は後で聞くから薬を…!
咲良
首、噛んで欲しいの…
涼
……!?
突然の願いに私の理性が崩壊しそうになった
涼
な…どうして…
そういうと彼女は首を見せるように首を傾げた
咲良
涼ちゃん…
涼
っ……
涼
(ダメだ…ヒートで意識がおかしくなってるんだ…!!)
番になって彼女を勝手に一生縛る事は出来ない
私はポケットからハンカチを取り出し、自身の口に突っ込んだ
涼
ふー……ふーー…
咲良
!……
それを見た彼女は少しショックを受けたような顔で私の事を見た
涼
(なんでそんな顔……!)
涼
ひゃくら…!(咲良)
涼
くひあへろ!!(口開けろ!)
そう言って無理やり彼女の口を開けて薬を飲ませた
咲良
ん〜…!!
しばらくすると彼女のフェロモンは消えて落ち着きを取り戻した
涼
ふー…ふー…
咲良
はぁ……はぁ…
私はフェロモンに充てられた自身の欲が膨れ上がってる事に気づいた
涼
(やばい……トイレ…行かないと…)
ハンカチを口から吐き出しゴミ箱に投げ捨てた
涼
はぁ…はぁっ…
咲良
…涼ちゃん…
咲良
ごめんなさい…
涼
………?
涼
別に…平気…
涼
ちょっとトイレ行ってくる…
涼
帰る準備してて
咲良
………うん…
彼女が教室を出て行くのを見送って荷物を片付ける
咲良
………
咲良
(拒否…された…)
咲良
(そう…だよね……分かってた)
咲良
(きっと涼ちゃんは…私以外の人と番になっちゃうんだ……)
教科書を鞄に詰めながらボロボロと涙が手の甲に落ちていた
無意識に私はその日から、彼女を避けるようになってしまった