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テラーノベル(Teller Novel)
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黒い月が闇を照らす。

ふーっと吐いた息は白く

生と死の混じった嫌な匂いがした。

生きながら腐る。

リアリティーのないフレーズが浮かび

私は打ち消すように頭を振った。

腐るのは死んでいるからだ。

見上げる空はどこまでも深い。

あざ笑う目と同じ形の月は出ない。

足下で

にゃあ

と、死に損ないの猫が鳴いた。

両目を抉られた猫は

生きようともがくのか

夢の中で

死への階段を登っているのか。

短い足が時折

思い出したようにケイレンした。

放り出されたビー玉の目が

私を見つめる。

目だけになってもなお

私を蔑むのか。

深く息を吐く。

透き通った空気が白く濁る。

にゃあと哀れな声を上げる肉塊を踏みつけて

汚れたビー玉を拾い上げた。

黒い月に透かしてみれば

それはもはや意志を持たないガラクタだ。

よかったじゃない。もう汚れた世界を見ることもないのよ。

口をついて出たのは

本心か言い訳か。

黒い月の晩が終われば

私をあざ笑う細い細い月が昇る。

ならばいっそ、先に私が傷つけてやろう。

猫の命を奪ったように。

なあんてね。

屠られた獲物が鳴いた。

朝(あした)なんて、永遠に来なければいいのに。

血脂にまみれた刀身は

黒い月光を浴びても輝かない。

それでも私は

黒い月の照らす夜空に

ナイフを向けた。

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