森永 朝日
朝だぁ…まだ寝たいけどなぁ。
もう病院の先生達は私が死ぬ
と思って退院させてくれて
自由になった気はするけど…
やっぱり…私は死ぬんだ…
真宮 綾人
はぁっはぁっはぁっ
誰か…誰か居ないのか…!
森永 朝日
ちょっとあなた!
この森の中をずっと走ってない?
どうしたの?
真宮 綾人
君…お願いだ…
森永 朝日
え?お願い?
真宮 綾人
俺を殺してくれ
森永 朝日
え?ちょっ、え?
どういうこと?
真宮 綾人
早く…早く殺してくれ!
お父さんとお兄ちゃんとずっと
一緒に居たいんだ…
森永 朝日
落ち着いて。近くに
私の家があるから入って
真宮 綾人
…はい
森永 朝日
それで?どうしたの?
真宮 綾人
お父さんとお兄ちゃん
が死んだんだ
森永 朝日
え?ちょ~っと待ってね~
話が飛びすぎてて
よくわかんないわ
真宮 綾人
お母さんが死んじゃって
お父さんが俺とお兄ちゃん
をお母さんを1人にさせない
為に殺そうとしてて怖くて
殺しちゃったんだ…
森永 朝日
あー、うん、なるほどね
大体はわかったわ
それなら貴方1人だけでも
生きなさいよ
真宮 綾人
どうして?
森永 朝日
どうしてって言われても
今貴方の家族の中では貴方
しか生きていないんでしょ?
だったら生きてる事に感謝して
堂々と胸張って生きなさいよ
真宮 綾人
…そうか。そうだよな。
お兄ちゃんにも生きろって
言われたんだ。生きるしか
ないよな
森永 朝日
うん!それでいいの!
ってなんで泣いちゃってんの
もう
真宮 綾人
ごめん…
森永 朝日
謝らなくていいから!
…後本当にまだ死にたいと
思うのなら私欲しいわ。
その体
真宮 綾人
え?俺の体が?
森永 朝日
ええ、私病気を持ってて
治らないって言われたんだけど
誰かの臓器があれば手術して
生きられるんだって。
だからもし、もし死にたい
って思うのなら私に臓器を
渡して欲しい
真宮 綾人
わかった。
その時はあげるよ
森永 朝日
ありがとう!
あー、そう言えば自己紹介
してないししましょうか。
まず私から!
私は森永朝日!宜しくね
真宮 綾人
もりなが?
森永 朝日
そう!森永!
真宮 綾人
へぇー
俺は真宮綾人。
宜しく
森永 朝日
綾人ね!
カッコイイ名前だね!
真宮 綾人
そう?
森永 朝日
そう!
森永 朝日
この森は人が誰も来ない
から静かでしょ?
私のお気に入りの場所なの!
真宮 綾人
そんなところに俺が
来ちゃって良かったの?
森永 朝日
うん!いいの!
ほら、こっちに来て!
一緒に遊ぼうよ!
俺らはたくさん遊んだ
何時間も、何日も、何年も
誰も人の来ない森で2人だけで遊んだ
森の中にはいつまでも
子どもの声が残っていた
そして、綾人と朝日は
いつの間にか時は過ぎ、
19歳になっていた
そんな時……
森永 朝日
綾人!おはよう!
あれ?綾人?綾人!?
綾人は部屋にはいなかった
朝日は必死で探し、湖に着いた
森永 朝日
綾人!
どこ、どこにいるの!?
真宮 綾人
朝日、ここにいるよ
森永 朝日
綾人!?なんで
湖の中にいるの?
それにその服…
真宮 綾人
見たことないでしょ?
ちょっと見てろよ
森永 朝日
何これ…嘘でしょう?
朝日が見たのは…
水が浮いて魚の形になった姿だった
真宮 綾人
凄いだろ
朝日に出会う前から、
生まれた時から
こうなってるんだぜ
森永 朝日
え、それじゃぁ
前から不思議に思って
いた私の前で水を
触らないのって…
真宮 綾人
水が浮いてしまうから
森永 朝日
それなら…!
真宮 綾人
昔のことだけど…
覚えてるかな?
もし死にたいと思うなら
臓器を渡してくれって
言ってただろ?
ほら、やるよ
俺にはもう要らないからさ
森永 朝日
え?どういうこと?
綾人は…死にたいの…?
真宮 綾人
…なぁ、前見た本で
早く死んじゃう男の子の
物語あっただろ?
森永 朝日
え、えぇ。女の子に
臓器を渡して
死んじゃったのよね…
……!?
真宮 綾人
あれ作ったの俺
それで俺の家族はみんな
30歳になる前に
死んでるんだよ
森永 朝日
夢ではなくて?
真宮 綾人
夢見たいって
思うかもだけど
俺が産まれる前に生きてた
家族全員。全員だぞ?
全員が30になる前に
死んでるんだ
森永 朝日
嘘…
真宮 綾人
だったら誰かの為に
死ぬ方が良いだろ?
森永 朝日
…ならわかったわ。
でもその前に…
真宮 綾人
なんだ?
森永 朝日
私と結婚して
真宮 綾人
は?
森永 朝日
できるのなら
子供も欲しい
真宮 綾人
は?
えっ、ちょっ、
どういうこと?
森永 朝日
私は綾人が好きなの
だから結婚して
真宮 綾人
なんで俺が好きなわけ
森永 朝日
好きはすきだから
でしょう?
真宮 綾人
何言ってんの?
森永 朝日
綾人こそ
なんで困ってるの?
真宮 綾人
急に告られたからだろ?
森永 朝日
ずっと一緒に居たのよ?
好きにならないのは
おかしいと思うけれど
真宮 綾人
その好きは友達として
の好きだろ?
森永 朝日
どうしてそうなるのよ。
す恋愛的好きに
決まってるでしょ?
真宮 綾人
…………
森永 朝日
あれ?
顔赤くない?熱?
大丈夫?
真宮 綾人
うるせぇな!
森永 朝日
…え
森永 朝日
森永 朝日
ケホケホっ
ねぇちょっと綾人!
何する…綾人?綾人!
どうしたのその傷…!?
血が出てるわ!
早く帰って手当てを…
真宮 綾人
嫌だ…嫌だ…
こっちに来んな…!
森永 朝日
綾人?
真宮 綾人
こっちに来んなよ!
はぁっ……はぁっ……
森永 朝日
綾人!
それから俺は倒れたらしい
ずっとずっと眠ってた気がする
それにしても変な夢を見たな
俺と朝日と子供が一緒に笑ってた
あれはなんだったんだ?
でも…とても心地よくて
ふわふわした気分
何故か違和感がない
これは夢なんだろう
早く夢から覚めなければ…
真宮 綾人
んぅ…
起きると小さな窓からは
気の隙間から差し込む暖かい光と
小鳥の鳴き声が入って来た
とても綺麗だった
ずっとここに居たい
そう思うくらいに
隣には寝ている朝日がいた
…何か、おかしい?
なんだろう?気のせい?
まだ夢の中?
真宮 綾人
おい、朝日起きろ
森永 朝日
…んぇ?綾人?
真宮 綾人
おう
森永 朝日
綾人…!
真宮 綾人
なんで泣いてるんだよ
森永 朝日
良かった…
本当に良かった…!
やっと起きた!
真宮 綾人
やっと起きたって
何言ってんだよ
森永 朝日
え?綾人わからない?
綾人が倒れてからもう5日も
経ったんだよ?
真宮 綾人
そんなに経ってたのか…
真宮 綾人
人間ってそこまで
寝てられるんだな…
森永 朝日
……まぁいいわ
それで起きて早速で
悪いんだけど返事を
貰いたいの
真宮 綾人
え?なんの?
森永 朝日
もちろん結婚に
ついてに決まってるでしょ?
真宮 綾人
まぁいいけど
森永 朝日
何その中途半端な答え!
真宮 綾人
俺は友達的な好きしかないし
恋愛なんてわかんないし
それに死ぬんだぞ?
その前に結婚とかふざけてんだろ
森永 朝日
私はふざけてなんかない
本気よ
真宮 綾人
こっち来い
森永 朝日
…?うん
真宮 綾人
耳貸せ
森永 朝日
うん
真宮 綾人
……俺だって
好きだよばーか
森永 朝日
うん
……!?え!?
真宮 綾人
なに
森永 朝日
いや!
いやいや何でもないよ!
てことは結婚OKってこと!?
やったぁ!やったね咲耶!
真宮 綾人
咲耶?誰だそいつ
この森に誰も来ないのに
なんでその子の
名前知ってんだよ
森永 朝日
あ、いやぁ夢で
見たっていうか…
真宮 綾人
朝日の頭はいつでも
ファンタジーなお花畑
森永 朝日
うるさいなぁもう!
咲耶
うふふ
2人は結びついてくれないと
私が困るのですよ
夢笑
お姉ちゃん、
作戦も順調だし
お菓子食べない?
咲耶
食べ過ぎはダメなのですよ?
夢笑
わかってる
それから
俺は朝日と結婚して
子供も2人生まれて
幸せで
笑顔が溢れる家族だった
けど
最悪な日って言うのは
すぐ傍にあって
突然やってくるもので
真宮 綾人
朝日!おい、朝日!
咲耶
お母さん!
夢笑
お姉ちゃん……
お母さんが……
咲耶
わかってるよ!
お母さん…お母さん…
夢笑
お父さん…
大丈夫…?
あぁ
そうか
そうだよな
あの日の約束を
今
今
今
果たすべきなんだよな
真宮 綾人
2人とも、よく聞いて?
俺らはいつ帰るかわかんない
それでもこの家で
待っていてくれ
夢笑
え……嫌だ!
どこかに行かないで!
咲耶
ゆえ!
甘えてはダメよ!
私達の作戦はもう
終わったでしょ!
夢笑
…行ってらっしゃい
お父さん
帰って来てね
森永 朝日
…ただいま
咲耶
おかえり、お母さん
夢笑
え!?お母さん帰って来たの!?
森永 朝日
ただいま夢笑!
夢笑
おかえりお母さん!
森永 朝日
2人とも髪伸びたわね
とっても可愛いわ!
咲耶
…ねぇお母さん
お父さんは?
森永 朝日
…………
真宮 綾人
……ふふっw
真宮 綾人
ただいま!
夢笑
お父さん!
咲耶、夢笑
おかえりなさい、
大好きなお父さん、お母さん
綾人、朝日
ただいま、
咲耶、夢笑
4人が集まってからは
ずっと
ずっと
子どもの笑い声と
大人の笑い声が
広い森の中に響いていた