蒼氷
…
目が覚めると、そこは殺風景な白い部屋だった。
藍
…透真くん…?
横を見ると、涙目になった白菊さんがいた。
藍
透真くん、おはよう
藍
体調はどう?
蒼氷
…うん
どうして生きてるんだ?
父さんたちは?
父
…蒼氷
蒼氷
父さん…
父
悪かったな、やっぱり無理だったんだ
父
本当、最後まで駄目な父さんでごめんな
蒼氷
い、いや…
父
母さんも生きてる
父
またやり直そうと思ってるんだ
父
無理して戻って来なくていいからな
父
傷は痛まないか?
蒼氷
うん、大丈夫
父
そうか
父
じゃあな
藍
…透真くん、大丈夫?
蒼氷
うん
藍
そっか…
藍
良かった
藍
でね〜、───!
蒼氷
───?
藍
───!!
あれから数ヶ月。
出会った頃から変わって、白菊さんといると心臓がドクドクと騒がしくなっていた。
もうすぐ春になる。
藍
もうすぐ桜咲くかな〜?
蒼氷
桜好きなの?
藍
うん
藍
桜ってね、2週間しか咲かなくて
藍
すぐに散ってしまう
藍
その散る姿も綺麗で
藍
だから好きかな
蒼氷
…ふ〜ん
藍
訊いて来たくせに反応薄くない!?
蒼氷
え、わ〜そうなんだ〜
藍
あ〜もう知らない!
藍
透真くん、話ってどうしたの?
3月。
透真くんに話があると言って桜の木の下に呼んだ。
もう桜は散り始めていた。
蒼氷
…白菊さん
いつも通りの無表情な透真くんが現れる。
蒼氷
どうしたの、話って
藍
…
蒼氷
白菊さん?
───想いを伝えたら、関係は変わってしまうのかな…
変わるのは怖い。
けれど、透真くんなら何か嫌なことになることはないはず。
自分の気持ちは、声にして伝えなければ
ほんの二文字さえ届かない。
私は学んだはず。
大丈夫。
藍
…透真くん
藍
…透真くん
藍
好きです!
蒼氷
…え?
思わず耳を疑う。
好き?
藍
私、想いは自分で伝えたいんだ
蒼氷
…そっか
蒼氷
こんなに冷たいけどいいの?
藍
それはもう知ってる!
藍
透真くんが氷みたいに冷たいの!
蒼氷
氷…
藍
…どうかな…
返事は決まっている。
蒼氷
…よろしく
藍
本当?
蒼氷
うん
藍
こういうときまで無表情なの!?
蒼氷
ん?前言撤回しようかな〜
藍
うわ、ひどい!
藍
最低!
藍
モテないぞ〜!
蒼氷
でも君は好きになったんだよね
藍
うるさい!