アン
ちょっとタク、今どこにいるの?
タク
アンか。今友達と飲んでる
アン
飲んでるの?ならせめて連絡してよ
アン
もう夕飯作っちゃったし
タク
仕方ねえだろ、男には付き合いってもんがあるんだよ
アン
いや付き合いって、仕事の帰りに誘われたとかなら分かるけど
アン
タク今働いてないじゃない
タク
大学時代の友達に誘われたんだよ……
タク
いちいちうるせえな
アン
飲みにいくのはいいんだけど、せめて連絡してよ
アン
この前も連絡なしに日付変わってから帰ってきたし
アン
夕飯作るこっちの身にもなってよ
タク
うるせえなあ、家事は女の仕事なんだから当たり前だろ
アン
家事が女の仕事っていうならタクも働いてよ
タク
あーもうだるい、今日は帰らねえわ。飯もいらない
アン
ちょっとタク?タク!
1時間後
ミカ
やっほーアン!元気?
アン
ああ、ミカか。どうかしたの?
ミカ
どうかしたのとはご挨拶ね。今日は報告があって
アン
報告?何よ
ミカ
じ・つ・は、久しぶりに彼氏ができました!
アン
へえー、おめでとう
アン
私の知ってる人?
ミカ
うん、アンがよく知ってる人だよー
アン
へえ、誰?
ミカ
あんたの彼氏のタクよ!
アン
は?ミカ酔ってる?
ミカ
酔ってなんかないよ、今あんたの彼氏のタクといるの
アン
は?だって今タクとはさっきまでやり取りしてたんだよ?
アン
大学時代の友達と飲んでるって……
ミカ
それは嘘だよ、今タクは私といるの~
アン
はあ?あんた私の彼氏寝取ったの?
ミカ
私は何もしてないよ~結果的にはそうなるけど
アン
あんたね……ずっと昔から私の彼氏をいつも……
ミカ
仕方ないじゃん、アンの彼氏がたまたま私の事を好きになるんだよ
アン
いつからなの?今日が初めてとは思えないけど
ミカ
あんたがタクを紹介しに地元に戻ってきた時からよ
ミカ
あの時会ったでしょ?
アン
確かにあったけど、あんな短時間に?
ミカ
あんたがトイレに行ってる間に、連絡先交換したの
ミカ
以来連絡を取り合ってたのよん
アン
何でいつもいつも、私の彼氏を奪っていくの?
ミカ
だって、あんたのものはわたしのもの、
ミカ
つまりあなたの彼氏も私のもの!
アン
まるでどこぞのガキ大将みたいな理屈ね……
ミカ
何とでも言って。これで私の方がいい女って証明されたね
アン
待って、あんたの言葉だけじゃ信用できない
アン
タクにも確認する!
ミカ
ご自由にどうぞ~どうせ別れ話だと思うけど
2時間後
アン
ちょっとタク、今いい?
アン
確認したい事があるの
タク
何だよ?今日はもう帰らないぞ
アン
あんた、友達と飲みに行ってるって言ったけど、
アン
ミカと浮気してたの?
タク
あー、もうバレたのか
タク
そうだよ、友達と飲みに行ってるっていうのは嘘
タク
ミカと会ってラブホへ行ってたんだ
アン
何で……何で浮気したの?
アン
喧嘩もしたけどさ……同棲してたじゃん
タク
お前のそういうところだよ。はっきり言って重い
タク
ちょっと帰ってこないだけですぐ束縛するし
アン
それは心配だからだよ!事故に遭ったらと思って……
タク
おまけに仕事とかで、全然普段は相手してくれねえし
アン
それは……働かないあなたの分まで稼がなきゃならなかったし
アン
タクが急に仕事辞めちゃうから
タク
仕方ねえだろ、人間関係が上手くいかなかったんだから
タク
なのにお前は俺の言う事に同意してくれなかったよな
アン
だって双方の話を聞かないと分からないし
タク
そういうところももう無理になったんだ
タク
ミカは俺の話に同意してくれるし、優しい
タク
アンとは大違いだよ
アン
ねえ、同棲してる私より、会ったばかりのミカを信じるの?
タク
だから、そういう重いところが無理って言ってるんだよ
タク
もうお前とは別れるからな。じゃあな
アン
ちょっとタク?タク!
1時間後
ミカ
アン、どうだった?
アン
タクから別れ話をされたよ
ミカ
やっぱり?これで私の言ってる事が本当だって分かったでしょ?
アン
うん、その通りだったよ。
アン
もうあんたとは関わりたくない
ミカ
はいはーい、私もそろそろ結婚しようと考えてるからさ
ミカ
もうあんたと親友でいる理由もないしね
ミカ
じゃあねー
半年後
ミカ
ちょっと、どうなってるのよ?
アン
はあ?いきなり何よ。具体的じゃないと分からないんだけど
ミカ
タクの事よ!あいつどうなってるの?
アン
どうなってるって、何が?
ミカ
あいつ大手企業勤めとかいって、無職じゃないの!
アン
ああ、そうだよ。前は確かに大手だったけど
アン
上司との人間関係で辞めちゃったのよ
アン
以来仕事してなかったから、私が養ってたの
ミカ
はあ?私には大手企業で働いてるって……
アン
あー、あいつすぐ見栄を張る所があるから
ミカ
何で教えてくれなかったのよ!お陰で親から怒られたし!
アン
もしかしてあんた、2人で実家に住んでるの?
ミカ
だって私実家暮らしだし、働いてないし……
アン
そりゃあんたの親も怒るわ。無職が2人に増えるなんて
ミカ
それにあいつ……
ミカ
とんでもない変態だったのよ!
アン
はあ?変態?
ミカ
あいつ私に隠れて私の靴下の臭いを嗅いでたのよ!気持ち悪い!
アン
あー、あいつ臭いフェチなのよ
アン
私はカミングアウトされてたから知ってたけど
アン
同棲してた時、私の靴下やストッキングの臭いを嗅いでたし
ミカ
あんた変態だと知ってて付き合ってたの?
アン
うん、特に気にならなかったし
アン
むしろ臭いが好きって相性がいい証拠と聞いたからね
アン
正直嬉しかった。まああんたとの浮気で吹き飛んだけどね
ミカ
ねえ、あいつあんたに返すわ!返品する!
アン
生憎クーリングオフは受け付けてないんだわ
ミカ
なら私を助けると思って!もうあんな変態無理!
アン
だから、もう私も無理なの。
ミカ
私たち幼馴染でしょ?助けてよ!
アン
その縁はとっくに切ったはずなんだけど。
アン
もうブロックするね、ばいばい
2時間後
タク
アン、久しぶりだな
アン
今度は張本人からか。一体何よ
タク
半年前は済まなかったな。反省してる
アン
反省しなくていいよ、もう許すつもりもないし
タク
そんな冷たくすんなよ。同棲していた仲だろ?
アン
それはあくまで過去の話ね
アン
今はもう何とも思ってないよ
タク
なあ、俺反省したんだ
タク
だから、やり直さないか?
アン
はあ?寝言言ってる?もうお昼なんだけど
タク
冗談な訳ないだろ。本気だよ
アン
その本気、何で付き合ってる時に出さなかったのよ
タク
あの時の俺はどうかしてたんだ、ミカとの浮気も魔が差したんだ
アン
魔が差して同棲していた私を裏切ったんだよね?
タク
本当に悪かったと思ってる。許してくれ
アン
はっきり言うけど、やり直すつもりないから
アン
家事は女の仕事とかいう人無理だわ
アン
同棲していた頃は尽くしてたけど、もう無理
タク
そう言うなよ、一度は愛し合った仲だろ?
アン
その仲をあっさり壊したのはどこの誰?
アン
あんた言ったよね?ミカの方がいいって
タク
ミカは……俺を受け入れてはくれなかった
アン
そりゃそうでしょ
アン
いきなり自分の靴下の臭いを嗅がれてるなんて、普通じゃないよ
アン
何も言わないなんてほぼ全ての女性が拒絶するよ
タク
そう。失って分かったんだ
タク
俺を受け入れてくれるのはアン、お前だけだって
アン
そういう臭いセリフはもういいから。やり直すなんて無理
タク
分かった。やり直せとは言わない
タク
その代わり……
タク
捨てるやつでいいからさ、お前の使用済みの靴下くれ!
アン
はあ、タク、私が知らないと思ってる?
タク
は?何をだよ
アン
私知ってるんだよ。あんたがアパートを出て行く時、
アン
私の仕事用のストッキングと、私服のタイツを盗んだ事
アン
あと財布から現金も数万円盗んだでしょ
タク
は、はあ?何の証拠があって……
アン
証拠ならあるよ。監視カメラにあんたの姿があったし
タク
す、すまん!我慢できなかったんだ
タク
この通り、許してくれ!
アン
ううん、許さない
アン
これは警察に通報させてもらうね。盗んだものも返してもらうから
タク
そ、そんな!アン許してくれよ……
アン
あんたとの縁も完全に切らせてもらうからね
アン
ブロックするから。じゃあね
タク
ま、待ってくれ!せめて最後の思い出として……
タク
お前の靴下をくれ!
アン
誰がやるか!いい加減にしろこの変態!
3日後
ミカ
ちょっとアン!あんたでしょ!
ミカ
家に警察が来て、タクが連れて行かれたんだけど!
アン
ああ、そうだよ。前は確かに大手だったけど
アン
あいつ、私のストッキングとタイツを盗んでたの
ミカ
はあ?あいつどれだけ迷惑をかければ……
アン
迷惑をかけてるのはあんたもでしょ
ミカ
お陰で私、親から実家を追い出されそうなのよ!
アン
そりゃそうでしょうね。ニート2人を養うなんて無理でしょ
ミカ
ねえ、せめてあんたのところにおいてよ!
アン
はあ?嫌よ。何でそんな事しなきゃならないのよ
ミカ
だって、私たち幼馴染……
アン
何度言わせるのよ、私はもう縁は切ったって言ったじゃない
ミカ
そんなこと言わないで!もうアンしか頼れないの!
アン
でも私はあんたを助ける気はないよ
アン
他を当たってね
ミカ
酷い!アンの事言いふらしてやるから!
アン
別にいいよ。あんたの話を信じる人がいればいいけど
ミカ
どういう事よ?
アン
あんたとタクの事、もう友達に広まってるよ
アン
無論タクがした事もね
ミカ
な…
ミカ
ならあんたのアパートへ行くから
ミカ
入れてくれなきゃ騒いでやるから!
アン
なら警察に通報するだけよ。ある意味タクとお似合いじゃない?
アン
警察に通報された者同士で
ミカ
嫌よ!何で?入れてくれれば済むのに!
アン
だから無理だって。何で他人を入れなきゃならないのよ
ミカ
分かった!泊めてくれなくていいから!
ミカ
せめて、お金を貸してくれない?
アン
嫌に決まってるじゃん。なんで貸さなきゃならないのよ
ミカ
だって私お金ないし!働いた事もないから……
アン
あーあ、だからきちんと就職しなって言ったでしょ?
アン
タクもあんたも、本当馬鹿だね
ミカ
酷い、幼馴染に向かって馬鹿だなんて
アン
あのさ、これ言うの何回目か分からないけど、
アン
私とあんたはもう幼馴染じゃないって言ったじゃん
アン
もう縁切ったし。それにさ……
アン
自分より下だと思ってる相手に助けを求めるって、
アン
恥ずかしくないの?あんた自分の方が上って言ってたじゃん
ミカ
だ、だって今はしょうがないじゃん!
ミカ
お金もないし実家は追い出されたし!
アン
はあ、プライドも失っちゃったんだね……
アン
まあ自業自得だし、同情はしないけどさ
ミカ
私だってこんな事したくないわよ!でもしょうがないの!
アン
したくないならしないで。もうブロックするからね
アン
じゃあねー
後日談
アン
その後警察の捜査により、タクの盗んだものは押収されました。
アン
なんとタクは私の現金やストッキングとタイツだけじゃなく、
アン
私のブーツまで盗んでいた事が警察の捜査で分かりました。
アン
当然タクは逮捕され、今は塀の中だそうです。
アン
盗まれたものは戻ってきましたが、私は何か気持ち悪く、
アン
タクに盗られたものは全て捨てる事にしました。
アン
ミカはというと、両親に実家を追い出され、
アン
引っ越しと同時に縁を切られたそうです。
アン
現在ミカはバイトを掛け持ちして独り暮らししているそうです。
アン
しかしバイトをした事もないミカは毎日怒られていると、
アン
共通の友人伝いで聞きました。
アン
私は幼馴染と彼氏を失い、最初悲しかったですが、
アン
今は新しい彼氏ができて幸せに暮らしています