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4月の風がまだ少し冷たい朝 新学期の始まりに、教室は少しだけざわついていた。 担任が黒板の前に立ち、転校生を紹介する。
担任
教室の空気が一瞬止まったような気がした その中で、彼はにこっと笑って言った。
大翔
颯真は窓際の席から、じっとその様子を見ていた 関西弁。笑顔。自信に満ちた立ち姿。
担任
教室のざわめきが再び広がる 大翔は颯真の隣に座ると、すぐに話しかけてきた。
大翔
少しだけ顔をそむけて、短く答えた。
颯真
国語の授業が始まった 先生の声が淡々と教科書を読み上げる中、 颯真はいつものようにノートに静かにペンを走らせていた。 隣の席から、ひそひそと声が聞こえる。
大翔
大翔が指差したのは「徒然草」の一節 颯真は一瞬だけ横目で見て、ため息をついた。
颯真
大翔
颯真
大翔
その言葉に、颯真はペンを止めた 褒められることに慣れていない彼は、少しだけ耳が赤くなる。
颯真
大翔
その瞬間、先生がこちらを見た。
担任
大翔
教室が笑いに包まれる 颯真は、周囲の視線が自分にも向いたことに少し戸惑いながら、そっとノートに目を戻した。 でも、心の中では思っていた。 (…なんで、あんなに自然に話しかけてくるんだ)
チャイムが鳴って、国語の授業が終わった。 教室の空気が一気に緩み、みんながそれぞれの時間を過ごし始める。 颯真は、静かにノートを開いて授業のまとめを書き始めた 隣では、大翔がパンを食べ終えて、暇そうにしている。
大翔
颯真
大翔
そう言いながら、大翔は颯真のノートに視線を落とす そして、突然ペンを手に取ると、ページの隅に何かを描き始めた。
颯真
颯真が眉をひそめると、大翔はいたずらっぽく笑った。
大翔
そこには、丸くて笑ってるタコの絵。妙に愛嬌がある。
颯真
大翔
颯真
颯真は無言で消しゴムを取り出し、絵を消そうとする でも、少しだけ手が止まる。
颯真
大翔
颯真
颯真はため息をついて、ノートを閉じた その隅には、消しきれなかったタコの足が、少しだけ残っていた。
授業が終わり、教室が少しずつ空になっていく 颯真はいつものように、机に教科書を整えてから静かに立ち上がった。
大翔
隣から声がかかる。大翔はまだ席に座ったまま、スマホをいじっていた。
颯真
大翔
颯真
颯真は少しだけ歩調を緩めて、大翔を待った。 二人並んで昇降口を出ると、春の夕暮れが校舎を淡く染めていた。
大翔
颯真
大翔
颯真
大翔
颯真は言葉を返さず、前を向いたまま歩いた でも、心の中では少しだけ、何かが揺れていた。
大翔
颯真
大翔
颯真は思わず笑いそうになって、慌てて顔をそむけた その笑いを、大翔はちゃんと見ていた。